その他ジャンル

  • トライアングルゲーム

    「それ、Cの4じゃない?」 チェス盤を前に考えていると、隣に座る音と少女の声がした。見なくても分かるが、僕は苦笑して彼女に向く。「考える楽しみを奪わないでくれよ」「ごめん、ごめん。でも、ずいぶん長いことそうしていたから」「まあね」 言いつつ…

  • 拗れて捻れたパラドクス

     白い服。杭が刺さった十字架。大きな羽。金色の髪。 そして、泡。「……なんだ、その目は」 金色の隙間から、鮮やかな赤い色の目がのぞく。チリチリと焼けるような視線を投げるので、私はぱちりとまばたきをした。すると私を包んでいる培養液が揺れて、小…

  • きっとそう遠くない未来について

     久しぶりに会った幼なじみの金沢キツネは、以前とは少し『違って』いた。「……お前か」 ドアを開けるなり、キツネは僅かに眉をひそめた。「お前で悪かったですねえ」 口を尖らせるとキツネはため息をつく。「なんだいきなり。へそ曲がりは相変わらずか」…

  • Architype Engine

    「ですから、何度も申し上げますが僕はアンドロイドで」「そうだね」「……警官を補佐する立場でもあり」「うんうん」「重要な任務を遂行中です」「そっかぁ。そいつは大変だ」「……あなたは、どう説明すれば納得していただけるのですか」「説明?そんなのい…

  • 可視化の海で

     その雑踏の中で、彼女は妙に目立った。しかし特別に美しいという容姿でもなければ奇抜な行為をしていたというわけでもない。花壇の縁に腰をかけてオーディオプレーヤーを操作しているだけだ。 だが、たまたま周囲をスキャンした時彼女の持つプレーヤーが相…

  • 暗闇女の記憶

     いつもわたしのまわりには、人の目と閃光があった。 人の目たちはわたしに、「もっと元気よく」とか、「もっと色っぽく」とか言いながらたくさんの閃光を浴びせた。そうして映し出されたわたしの姿は、また誰とも知らない人の目たちに晒されて、短時間で消…

  • ひかりの手のひら

     デスティニーアイランドは、私にとって不変の象徴だった。同じような毎日を同じように過ごして、なんとなく毎日を生きるような、そんな場所だった。 私はそれが好きだった。変化することは疲れることで、慣れないものに触れるのはたまらなく恐ろしい。波だ…

  • ルーク・ハントは緑の目

     参考書から顔を上げて、はぁー……と長いため息をついた。もうすぐ苦手な科目の小テストがあるので放課後に図書館で勉強をしていたのだが、これがちっとも進まない。我が寮ポムフィオーレの目指す美は外見だけではなく内面も磨くことにある、と掲げられてお…

  • ルーク・ハントは兎に逃げられる

    「ボンジュール、マドモアゼル!今日も美しいね!」「先輩ってやっぱおかしいですよね」 あえてどことは言わないが、ジト目でルーク先輩を見つめた。しかし先輩は本当に不思議だというように「なぜそう思うんだい?」と小首を傾げている。 容姿端麗にして頭…

  • 我妻善逸は女の子が好き

     柔らかくて、甘くて、可愛いものが好きだ。 だから女の子は好きだ。 というのを包み隠さず表現してたらいつの間にか「遊び人」の称号が与えられていた。何故だ。「サイッテー!!」 バチンという音とともに木枯らしが吹き去った。もうすっかり冬だ。足元…

  • 新緑の森

     その日は朝から最悪だった。仕事をミスって首になる夢を見て目覚め、ベッドから降りたら足をひっかけて転んだ。電車は遅延していたし、仕事のミスはなかったものの残業を頼まれて只今午後9時を回ったところである。 はぁ、と深々ため息をついても誰も聞い…

  • 柔らかい温度

    もし違うところで会えたなら(企画提出作品)

  • 透明な標

    あの標に向かうなら(企画提出作品)