長編
短編
心因性の神聖
Respawn
たかがゲームで泣くなんて、ばかみたいだと思われるかもしれないけれど、わたしは『時の勇者』がかわいそうで仕方なくて、画面のまえでぼろぼろ泣いてしまった。 今まで頑張ってきた冒険のすべてがなかったことになって、一生懸命助けたゼルダ姫との出会…
時の勇者始まりは些細
「ねえリンク」 「な、なに?」テーブルに頬杖ついて、じいっと僕のことを見つめていたが突然口を開いたものだから、僕は少したじろいだ。彼女の癖なのだが今だに慣れない。というのは、彼女はなんと他の世界(ニホン、っていったかな)からやって来たら…
時の勇者生まれなかったうさぎ
恋人のいない夜
ムーンライト・シング
夜、ふと目を覚ましたら、カーテンの隙間から光が漏れていた。あまりにそれがまぶしいものだったので、こんな夜更けに外でなにかあるのだろうかと不思議に思いながら、カーテンを開けた。そして、息を呑んだ。それは月の光だった。でもただの光じゃない。満月…
仮面夢より現実
めぐる「え、あ、あれ?」わたしはポケットの中を一生懸命探った。けれど期待した、あるはずの手ごたえはない。手さげかばんのほうに入れたのかも、とかばんの中を探したけれど、やっぱり目的のものはなかった。うそ、どこかで落とした?あんな大事なものを?…
時の勇者DEIR PAIDER
じゃあ、お話をしよう。ここじゃない、どこか遠い国のお話。昨日のことだったかもしれないし、はるか昔のことかもしれない。そう、とても曖昧なんだ。まるで夢のなかのようにね。でもそこは重要じゃない。大切なのは、ここからさ。一人の少年がいた。馬を一匹…
仮面わたしが人魚になった日
お化けがこわい!
※会話のみ「ねーちょっと聞いてよ、こないだ怖いことがあったのよ」「なんだよ」「夜に一人でさ……」「待った。やっぱり聞かねえ」「えーなんでよ?あ、もしかして怖い話苦手?お化けとかそういうの」「べっべつに苦手じゃねえし!」「ムキになるあたりが怪…
勇者の影Water Garden
雨に遊ばれて
城下町に買い出しに行こうと思い平原を歩いていたとき、急に雨に降られた。家を出たときは天気がよかったから傘は持っていなかった。仕方ないから、手近な木のしたで雨宿りすることにした。ざああ……雨足はどんどん強くなる。これじゃいつ帰れるか分からない…
光の勇者憧憬する世界
この間から、ここ雲の上と地上とが繋がったらしい。リンクっていう男の子がカケラあわせをしたから、埋れていた秘密の道が開放されたようだ。雲の上でしか暮らしたことなかったから、地上がどんな世界なのか見てみたい。どんな世界なのかな。風の噂でしか聞い…
帽子夜に溶けたふたり
その日は、とてもきれいな夜でした。満天の星は宝石箱をひっくり返したみたいにきらきらきらと輝いて、夜空の、黒いビロードをしいたような闇にぽつぽつぽつと浮かんでいました。風は幾分吹いていて、ハイリア湖の湖面をさらさらなでます。その音がまた、鈴の…
勇者の影FOLLOW YOUR DREAMS
その子と会ったのは、村からほど近い森の中だった。わたしは川に水を汲みにきていて、その子は顔を洗っていた。緑色の帽子と服を着ていて、まるで森の一部のようになじんでいて。木々の間から差し込む太陽の光が、その子の金髪をてらして、きらきら輝いていた…
時の勇者人形たちの永い午睡
うだるような夏の暑さとは裏腹に、その日はしとしとと雨が降っていて、涼しい日だった。仕事もないので、わたしはソファに横になりウトウトしていた。ここのところずっと暑かったから、夜寝付けなかったんだ。今日は久しぶりにゆっくり寝られそう。もうちょっ…
時の勇者ワンルームサバイバル
城下町の家賃というのはとても高い。だからわたしのように、女性ひとりが一つの部屋を借りているというのは珍しい。「だから一緒に暮らそうって言ってるのに」「その話は何度も断ってるはずなんだけど?リンク」わたしは隣のリンクに睨みをきかせる。テルマさ…
光の勇者ふたりのかえりみち
へとへとになるくらい暑かった日中とはうってかわって、午後は涼しい風が吹いていた。空が真っ赤に染まって、雲が紫色にたなびいていてとてもきれい。その中を、わたしとリンクは並んで歩いていた。「涼しくなってよかったな」「そうだね」会話はあまりないけ…
光の勇者うさぎにご用心
「あのさ、闇の世界に行ったリンクは、うさぎになったのよね」「そうだけど、それがどうかした?」「闇の世界は己の心を映した世界なのよね?」「うん」「ということはつまり、リンクは縄張り意識が強くて性欲が強いってことね!」「ブハッ!!なんでそうなる…
神トラ青い空に
青空のような人。それが、最初の印象。その人は城下町を走りまわっていて、いつも忙しそうにしていた。背中に立派な剣と盾を背負っていたから、旅人なんだってすぐ気が付いた。時折立ち止まって、町の人に話を聞いては笑顔を振りまく。端正な顔をしているから…
時の勇者言葉の意味を知るより先に
きみとみたゆめ
「あーくそっ!あといっこ鍵がみつからん!」あたしはゲームボーイから顔をあげて叫んだ。ちくしょー、ここ開ければあとはボスだけなんだけどな。地図にもう宝箱の印がないとこを見ると、うえから降ってくる系なんだろうか。厄介だな……。「うう、今日はもう…
木の実何よりも深く
ダークは私にやさしくない。一応、私たちは想いが通じ合った仲なんだけど、それも私が好きって言っただけで、返事はもらってない。頷いただけ。あれ、それって私が勝手に思い込んでるだけなのかな。本当は別に私のことなんて好きでもなんでもなくて、浮かれて…
勇者の影空からしあわせ
※スカウォまだやってない。ゼルダの口調がわからんので想像。リンクとゼルダとわたしは、幼馴染。子供の頃はよく3人で遊んだりしたけど、今はわたしだけ離れてる。なんでかって?それはとても難しい問題で。わたしはリンクのことが好きなんだけど、でもリン…
空の勇者寂夜
明かりを消す。窓から差し込む月の光だけが、わたしの部屋をてらした。冷たい布団に潜り込み、体をぎゅっと丸める。「おやすみなさい」返ってくる言葉は、ないけれど。今はいない同居人に向けて。彼、リンクは、今どうしてるだろうか。月明かりの下で、眠って…
時の勇者ドジな子
がちゃん。派手な音を立てて、壷が割れてしまった。「はドジだなー」「う、うるさいな」あわてて屈み、破片を拾おうとすると、リンクに制されてしまった。危ないから、とわたしをのけてさっさと破片を拾い集めてしまう。もう、子供みたいな扱いして!「昔から…
時の勇者もっと見せてよ
「……?」「ん、なにリンク?」わたしは料理する手を止めないまま、返事をした。「髪の毛。上げてるから驚いたよ」「ああ、ちょっと邪魔になってきたからね。で、何か用事?ごめん今ちょっと手が離せないんだ」「そっか。じゃあ後でいいよ」……とは言ったも…
時の勇者離れてやらない
「ねーリンク。いい加減離れてよー」「んー……」さっきからこうして、リンクがわたしの背中にひっついたまま離れようとしない。「ね、もうそろそろご飯作らないといけないから」「後でいいだろ」「リンクー……」何を言っても、動く気配がない。わたしは困り…
時の勇者