瓦解する愛

「愛、それは無限の可能性……まさしく宇宙」

このりすくま先輩は愛らしい見た目とは裏腹に男前なテノールボイスを有している不思議な人(?)だ。

「そう、宇宙のように広がるわたくしの愛を感じないか」

ついでに言ってることもよくわからない。

「なんで、回りくどい言い方するんですか。はっきり言えばいいじゃないですか」

わたしというと、難しい話は苦手だし理解できる自信もない。
だからまだるっこしいことは嫌いだ。

「はっきり言ったら、あなたは応えてくれるのかね」

先輩は表情がわかりづらいけど、声音で大体判別できる。
そのくらいの時間は、一緒に過ごしているということだ。
だからといって、

「答えは単純至極、ノーです」

「ふむ。まぐろくん風に言うなら、キビシーい、というやつか」

後輩の名前を出しておどけたように言う先輩だけど、その声音は、やはり淋しげだった。