「アヤさんこんにちは」
図書館に行くと、いつも通りアヤさんが座って読書していた。
でもいつもと違うところが一つ。
声をかけても返事がないということ。
「アヤさん?どうしたの?」
「……」
アヤさんはいつも険しい顔をしているけど、今日はより一層険しい顔をしている気がする。
「なにかあった?」
「……昨日はバレンタインだったそうだな」
「うん。……あ」
そういえばわたし。友達みんなにチョコを配ったつもりでいたけど、アヤさんにだけ渡していない。
「アヤさんもほしかった?チョコ」
「な、そういうわけではっ……!」
その動揺ぶりを見るに、図星ってところだろうけど。
忘れていたわたしも悪いから、黙っておこおう。
「そっか。じゃあ、わたしの気がすまないから、今からでもアヤさんにチョコをあげるよ」
「……もらえるものはもらってやる」
「うん、ありがとう」