醜いわたし

「サタン様。今日も大敗ですね」

頭にでっかいたんこぶをこしらえて城に戻ってきた涙目のサタン様に向かって、私は言う。
サタン様はハンカチで涙を拭いながら(まるでその仕草は女子)喚き散らした。

「なぜ!なぜアルルは私に振り向いてくれないのだ!こんなに……こんなにかっこよくて優しくて知的でスマートなのに!」

後半のセリフはどこかで聞いた覚えがあるが、面倒くさいのでツッコミはいれなかった。
どうせいつもどおり、この状態では話聞いてないだろうし。
ため息をひとつこぼした私はでっかいたんこぶの手当をしようと救急箱を取りに行く。こんなサタン様でも従者である私は従うよりほかないのだ。

「おい、なまえ……」

不意に呼び止められた。

「私には、何が足りないと思う?」

真剣な面差し。
でも、見ているのは私ではない。

「……とりあえず」

私はサタン様から視線を逸らした。

「そのどうしようもなく鈍い感性をどうにかしたほうが宜しいかと」

「鈍いだと!?この私がか!?言っておくがアルルとカーバンクルちゃんの些細な変化にも気づけるのだぞ私は!」

「はいはいそうですねー」

私の精一杯の牽制も、サタン様には通用したためしがないのであった。

Title:ユリ柩