平行線と境界線

たまたま封印を解いたのがクルークだったからって。
これはあんまりだと思うんだ。

「どうした?」

私の眼前で嫌らしい笑みを浮かべるクルーク……じゃなく、クルークを乗っ取った別のなにか。

「女というのは、こうされるのが好きなんだろう?」

私はいわゆる壁ドンというのをされている。
確かに好きかもしれないけれど、それは意中の人から限定であって、好きでもないどころか嫌いな相手にされても不愉快極まりないだけである。

「クルークだったらときめいてたよ」

「私もクルークだぞ?」

「魂レベルで別人のくせに何言ってんの」

まあ、顔立ちはほぼそのままだから、ときめかないといえば嘘になる。
でも中身が違うし、何よりコイツを喜ばせたくはないから、私は冷静を保っていられる。

「はやく返してよ。クルークを」

「強情な女だ」

ああだからその顔で笑わないで。
せっかく保った平静が崩れるよ。
……崩れたら、どうなる?
ちょっとだけ興味が湧いてしまった自分をひっぱたきたくなった。