言葉の意味を知るより先に

「ちょっとリンク、休むときはわたしの家に泊まってって言ったじゃない。なんでマリンの家行くのよ」

「だって、女の子一人の家に泊まるなんて」

「いいじゃない別に。わたしたち恋人同士なんだし」

「そうだけど……でもなあ」

「でも何よ。なにか問題あるわけ?」

「ない、けど」

「じゃあいいじゃない」

「……あのさ」

「なに?」

「未登録名前は、もし僕が夢だったらどうする?」

「は。どういう意味?」

「僕は、現実には存在しなくて、未登録名前の見てる夢だったらどうする?」

「どうして急にそんなこと聞くの?」

「いいから、答えてほしい」

「えー……そうね。変わらないかな」

「変わらない?」

「わたしが、海より深くタマランチ山より大きく、リンクのこと愛してるってことには変わりない」

「でも、目が覚めたら僕は消えてしまうんだよ?」

「それでも。わたしはずっとリンクのことが好きだし」

「すごいな、未登録名前は」

「そう?」

「僕は……未登録名前を好きになったこと、後悔する。こんなに苦しい思いをするなら、好きにならなければよかったって。でも……」

「でも?」

「未登録名前の言葉を聞いたら、僕も変わらないって思ったよ。僕も未登録名前のこと、愛してることに変わりない」

「や、なんか正面見据えて言われると照れるんだけど」

「自分だって言ってたじゃないか」

「自分で言うのはいいのよ」

「なんだそれ」

「まあとにかく。例えばの話なんだし。そんなに深く考えることもないでしょ」

「……そう、だね」

「夕飯作っちゃうね。もちろん食べてくでしょ?」

「うん」

「今日は何にしようかなー」

「ねえ、ハル」

「なに?」

「愛してる」

(かの夢は目覚めてしまう)