青い空に

青空のような人。
それが、最初の印象。

その人は城下町を走りまわっていて、いつも忙しそうにしていた。
背中に立派な剣と盾を背負っていたから、旅人なんだってすぐ気が付いた。
時折立ち止まって、町の人に話を聞いては笑顔を振りまく。
端正な顔をしているから、見る度ドキッとするんだ。
そうしていつの間にか、彼を目で追うようになって。
気が付いたら、恋してた。

「こんにちは、未登録名前」

「こんにちはリンク」

会話といえば、この位。
最近やっと名前を聞けて、こうして口にするのは数えるほど。
もっと彼のことが知りたい、でも勇気が出ない。
彼女、いるかもしれないし。
いや、彼くらいいい男だったらいてもおかしくない。
だってかっこいいもん。贔屓目じゃなく。

「今日はいい天気だね」

「そうね、抜けるような青空だわ」

まるであなたみたいな。
そんなことは言えないけど。

ああ、あなたが目の前にいるのに。
嬉しくて、でも寂しいよ。
近いようで遠い存在。
だから、そう。
青空みたいだって思ったの。

「あの、未登録名前」

その時、いつもなら挨拶を交わして去るだけの彼が。

「もし良かったら、お茶でもどうかな」

「え?」

「あ、で、できたらでいいんだ!」

やや顔を赤らめる彼の言葉はぎこちないもので。
そんなふうに言われたら、期待してしまうよ?

「わたしでよければ」

「ほんと?ありがとう!」

彼は空色の双眸を細めて笑った。