ふたつめ

誰も、いない……?
おかしいな、レナードさんがどこかに出かけているにしても、誰かしらは教会にいるはずなのに。
それに、今気づいたけど。
村の中を歩いている人が一人もいなかった。
どういうことなの……?

「あーあ、やっぱりな」

後ろにいたミドナが中を覗き込んで言った。
リンクが中に入り、辺りを見回すようなしぐさをする。

「やっぱりって、どういうこと?」

「この世界は今、ちょっと普通じゃないのさ」

ミドナは説明を始める。
この世界(一部分)は今、トワイライトというものに変わってしまっていて、影の魔物が蔓延り人間は魂だけの存在になっているという。
それを正すには「影の蟲」に捕らえられた光の精霊の力「光の雫」を集める必要があるとのこと。
……正直、そんなこと言われても訳が分からなかった。
いきなりのことで理解が追いつかない。
しかし戸惑うわたしに、ミドナは更に続ける。

「これは重大なヒミツだぜ。それをアンタに話すってことは、わかるな?」

それは、理解できた。

「協力しろ、ってこと?」

「そういうことだ。ククッ」

光の雫を集めれば、世界が元に戻るというなら。
……やるしか、ないのかな。
レナードさんたちがいない今、動けるわたしが、村をどうにかしないと。
お世話になった人たちに恩返しができると思えば、大丈夫。
わたし、やれる。

「わかった。やる」

「ワウ……」

リンクが心配そうな目をして、わたしを見ている。
わたしはかがんで頭をなでてあげた。

「大丈夫だよ。いざってときは逃げるから」

「ガウ!」

「なんだ、威勢のいいことだな」

「リンクはなんて言ってるの?」

ミドナには、リンクの言ってることがわかるみたいだった。

「俺が守るから安心しろだとよ。かっこつけやがって」

「そうなんだ、ありがとねリンク!」

わしゃわしゃと撫でる。
ちょっと悲しい気持ちになってたけど、リンクを撫でてたら元気がでた。
不思議な子だなあ。この子といると、なんでも出来るような気がしてくる。
勇気を分けてもらってるみたいだ。

「じゃ、行こう!村のどこかにいる蟲を探せばいいんだよね?」

「待て待て、そう焦るな。蟲は、普通の人間には見えない」

え、じゃあどうすればいいの?

「探すのはコイツがやる。お前は物を動かしたりドアを開けたりしてくれりゃあいい」

なるほど。狼じゃそういうことはできないからね。
って、

「ミドナはやらないの」

「面倒くさい」

一蹴されてしまった……。
ともかく、こうしてわたしたちの雫探しが始まったわけだ。