誰も、いない……?
おかしいな、レナードさんがどこかに出かけているにしても、誰かしらは教会にいるはずなのに。
それに、今気づいたけど。
村の中を歩いている人が一人もいなかった。
どういうことなの……?
「あーあ、やっぱりな」
後ろにいたミドナが中を覗き込んで言った。
リンクが中に入り、辺りを見回すようなしぐさをする。
「やっぱりって、どういうこと?」
「この世界は今、ちょっと普通じゃないのさ」
ミドナは説明を始める。
この世界(一部分)は今、トワイライトというものに変わってしまっていて、影の魔物が蔓延り人間は魂だけの存在になっているという。
それを正すには「影の蟲」に捕らえられた光の精霊の力「光の雫」を集める必要があるとのこと。
……正直、そんなこと言われても訳が分からなかった。
いきなりのことで理解が追いつかない。
しかし戸惑うわたしに、ミドナは更に続ける。
「これは重大なヒミツだぜ。それをアンタに話すってことは、わかるな?」
それは、理解できた。
「協力しろ、ってこと?」
「そういうことだ。ククッ」
光の雫を集めれば、世界が元に戻るというなら。
……やるしか、ないのかな。
レナードさんたちがいない今、動けるわたしが、村をどうにかしないと。
お世話になった人たちに恩返しができると思えば、大丈夫。
わたし、やれる。
「わかった。やる」
「ワウ……」
リンクが心配そうな目をして、わたしを見ている。
わたしはかがんで頭をなでてあげた。
「大丈夫だよ。いざってときは逃げるから」
「ガウ!」
「なんだ、威勢のいいことだな」
「リンクはなんて言ってるの?」
ミドナには、リンクの言ってることがわかるみたいだった。
「俺が守るから安心しろだとよ。かっこつけやがって」
「そうなんだ、ありがとねリンク!」
わしゃわしゃと撫でる。
ちょっと悲しい気持ちになってたけど、リンクを撫でてたら元気がでた。
不思議な子だなあ。この子といると、なんでも出来るような気がしてくる。
勇気を分けてもらってるみたいだ。
「じゃ、行こう!村のどこかにいる蟲を探せばいいんだよね?」
「待て待て、そう焦るな。蟲は、普通の人間には見えない」
え、じゃあどうすればいいの?
「探すのはコイツがやる。お前は物を動かしたりドアを開けたりしてくれりゃあいい」
なるほど。狼じゃそういうことはできないからね。
って、
「ミドナはやらないの」
「面倒くさい」
一蹴されてしまった……。
ともかく、こうしてわたしたちの雫探しが始まったわけだ。