余裕がない
「りすくま先輩って、難しいこと考えてるよね。愛についてとか、すごく高尚でかっこいいなあ」「……うん★」「それにいい声してるよね。低くて落ち着いてて、聞いてて安心するよ」「あっあのさ★」「どうしたの佐々木」「ボクも先輩ほどじゃないけど勉強でき…
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ホワイト・アウト
「佐々木くんってさあ、」同じ委員会の女の子と、二人で教室に残って仕事をしていたときだった。「なんだい?」その子とはあまり話したことがないから、ずいぶん唐突だなと思った。「佐々木くん、いつも楽しそうにしてるけど、それって本当?」……ずいぶん、…
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魅惑の視線
恋をするって空から魔法が降ってくるようだ、と誰かが言ってたけれど。「本当にその通りなんだなあ……」誰もいない教室で、窓の外を頬杖ついて眺めながら独りごちた。外は夕方に差し掛かるころ、男子サッカー部が活動している。もうすぐ終わるのだろう、グラ…
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雨がくれた距離
私はカーテンの裾を握りしめながら、無慈悲に振りしきる雨を睨みつけていた。二階の窓から見える景色は、灰色に濁った雲と勢いよく地面を打つ雨で、陰鬱な気分をさらに落としこんでいく。 今日この日をどれほど待ちわびたと思っているのか。昨日は早起きす…
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冬の陽
薄赤い太陽が、その姿を街並み際に寄せて沈みつつある冬空。 私は白い息をつきながら、コンビニに向かっていた。特に何か理由があったわけじゃないが、下校中、このまま家に帰るのはなんとなく勿体無い気がしたので、思いつきでただ寄ってみた。横断歩道を…
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記憶の夢
「くっそーまた負けた!」「勝っちゃった★」「一体いつになったら、私はまぐろくんに勝てるようになるんだろ……」「いやいや、ちゃんどんどん強くなってるから、ボクも必死、なんだよ★」「嘘だぁ全然勝てないのに」「そ?んなことないよ★さっきだって、反…
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傷
「いてっ」その声で振り返ると、指先を見つめて顔をしかめるちゃん。ボクには彼女がなにをしているのかがすぐ分かった。「ダメだよ、ささくれ引っ張っちゃ★」とがめるように、ボクはちゃんの手を取った。親指の爪の付け根が、血で痛々しいことになっている。…
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ボクの私の勝負事情
強者だけが登ることを許された塔が、ここプワープアイランドに存在する。……というか、ほほうどりが勝手に作ったとかなんだとか。 そんなことはどうでもいい。今重要なのは、目の前の敵を倒して、さらなる高みを目指す。それだけだ。「さすがに、今のはこた…
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呼吸を忘れる魚
かなかなかな。 蜩が鳴き始める夕暮れ、夏特有の分厚い雲が流れて、薄紫色の空があらわになる。かなかなかな。ボクらは二人で立っていた。その、こわいくらいきれいな薄紫色の空を見上げながら、学校から少し離れたバス停にいた。ボクらの他に待ち人はいな…
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キミにおける熱量
じわじわと照りつける日差し。 彩度の高い青空。アスファルトに発生する逃げ水。ついに耐えられなくなった私は、電柱に手をついて足を止めてしまう。「大ッ嫌いだおまえなんか……!」「えっ」「え?」盛大な独り言のはずが後ろから返事があった。驚い…
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キスの日
「ぬわあ~疲れた~」 今日一日の授業を終え、私は机のうえに倒れこんだ。ようやく期末テストが終わったので、疲労感がどっと押し寄せる。「おつかれさま、ちゃん★」顔を横に向けて見上げれば、まぐろくんが立っていた。さして疲れたふうでもなく、いつも…
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だいきらい
「ぐっもーにんちゃん★」 「ああうん素晴らしい朝だね天気はいいし鳥は囀るし風は爽やかだしね佐々木さえいなければの話だけど」「一呼吸でそれだけ言えるなんて、ちゃんってやっぱりすごーい★」「嫌味言ってるんだよ私はァ!」知ってるよ?と返されて、…
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