りすくませんぱい

Signal.

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。という、ある小説の一文を思い出した。別にわたくしは、トンネルを抜けたわけでも雪国にやってきたわけでもないが、今の心情を的確に表現するならばそうなった。――果たして此処は、何処だろう。その問いかけに答…

SENPAI

「が、海外で流行っているらしいですよ。りすくま先輩」「ほう?海外には日本でいう先輩後輩という概念はないと聞いていたのだが……どのように使われているのかね」「主にオタクの間で、『大好きなのに気持ちに気づいてもらえない人』を指す言葉だそうです」…

Echos

「時に」声をかけると、それまで窓の外を見ていた彼女が振り返った。「なあに?」「君は、永遠というものを信じるかね?」彼女はきょとんとした表情を見せて、小首を傾げた。「どうしてそんなこと、聞くの?」「質問を質問で返すのは、あまり好ましくないよ」…

瓦解する愛

「愛、それは無限の可能性……まさしく宇宙」このりすくま先輩は愛らしい見た目とは裏腹に男前なテノールボイスを有している不思議な人(?)だ。「そう、宇宙のように広がるわたくしの愛を感じないか」ついでに言ってることもよくわからない。「なんで、回り…

転化する可能性

あれだけ熱烈に愛の告白をしていた彼女が、めっきり姿をみせなくなった。 「先輩、最近を見ませんね」放課後の部室で実験中、りんごくんですら気になったようで、顎に手をやって首を傾げた。「そうだな……」「先輩はその方がいいですか?」はっきり明…

夏バテのせんぱい

「こんにちうわ暑っ!」 部室のドアを開けて、思わず叫んでしまった。今日は特に暑い日だと授業をうけながら思っていたが、物理部は教室とは比べものにならないほど蒸し暑かった。確かにここは日当たりはいいけど、窓の向かいはなにもないから…