シャドウ

真夏の驟雨も悪くない

 お店から外に出ると雲行きがあやしく、今にも降り出しそうな気配をみせていた。急いで帰ろうと走り出したところでぽつりぽつりと降り出してしまったので、仕方なく近くの軒先を借りることにした。シャッターが閉まっていたので少し申し訳ない気持ちになりな…

寂しがりの応酬

 暇だ。暇すぎる。暇が売れたら大儲けできるくらい暇だ。「シャドウー。ねーシャドウー」「うるさい、気が散る」 さっきから何度も呼びかけているが、シャドウはローテーブルの上に広げたノートパソコンから目を離さずに同じ返事しかしてくれない。観念した…

静寂に眠る

 耳のそばで、かたりと音がした。「……あ、起こしちゃった?ごめんね」 顔を上げれば、困った顔をしながら窓を閉めるがいた。いつの間にか日はすっかり落ちて、薄暗い部屋の中は冷たい夜風が満ちている。どうやらソファで眠ってしまっていたらしい。 とは…

きみとの一杯

このジトジトした天気が大嫌い。お洗濯はできないし、食材もすぐ腐るしで、いいことない。一番嫌なのは、もっと別のことだけど。「どうした、さっきから窓の外ばかり見ているが」「んー……」本当なら、今頃ステーションスクエアで遊んでるはずだったのに。シ…

セレスティアルフラワー

「……なんだこれは」仕事が早くに終わったので、久々にの家を訪ねたら、庭が真っ赤になっていた。詳細を述べるなら、見たことのない真っ赤な花が一面に咲いていた。「知らない?彼岸花っていうの」花に隠れて見えなかったが、かがんでいたが顔を出した。「い…

君にしか言わない

わたしは2杯目の紅茶を飲み終えて、はあ、とため息をついた。カフェの客もすでに少なくなっていて、テラスにいるのはもうわたしだけ。シャドウとの待ち合わせの時間は、1時間ほど前になる。もしかしたら仕事が長引くかもしれない、と聞いてはいた。その時は…

告白の日

彼女の家を訪ねたが、呼び鈴を鳴らしても出てこなかった。出かけてしまったのだろうか。しかし、今日は呼ばれてここにきた。約束を忘れるような彼女ではないことを知っている。なにか急な用事か、それとも。僕は念のため、ドアノブに手をかけた。すると、なん…