ソニック

ピンヒールと少女

 長いピンヒールが似合うねと言われた。 足がきれいだからよく映えるだろう、そう言ったのは付き合いたての恋人だった。何かのきっかけでそういう話になって、そしてそのまま近くの靴屋に入った。色とりどり、形もさまざまな靴たち。今まで選ばなかったもの…

かえりみち

 買い物を終えて駐輪場に向かうと、意外な姿を見かけて荷物を落としそうになった。「ソニック……!?」「よっ」 私の自転車の荷台に座って、青いハリネズミがご機嫌に片手を上げた。 夕暮れの下を自転車で走る。雲が出てきて少し風もあり、スピードを出せ…

イージー・ゴーイング

「しまったなあ」 の家に遊びに来ていて、そろそろ帰ろうかと思っていたところにの呟きが溢れる。セリフの割に緊迫感のない口調だったので大したことではなさそうだが、一応尋ねてみた。「どうしたんだよ?」「牛乳切らしてたの忘れてた」 些細も些細だった…

遠い雷

 今日は午後から雨が降るとかで、街の人影はまばらだった。オレも濡れるのは嫌いだけど、街中を思い切り走るには今しかない。そう思い、いつも人でいっぱいのエメラルドコーストに向かって駆け出した。 案の定、灰色の雲を抱える空の下で海岸を散歩している…

ソニックのバースデー

「うわああー終わったああぁぁ……」力なく叫ぶなり、ノートパソコンを閉じた彼女は机の上に倒れこむ。「おいおい、頑張りすぎだって。そんなに期日ギリギリな作業だったのか?」数日前から机にかじりついて、今だって終わったのは日付が変わる直前だ。そんな…

夢のさざめき

 溜まっていた家事を片付け終えると、私はソファに倒れこんだ。ここのところずっと忙しかったけれど、今日はようやく舞い込んだお休み。何もしないで家でゆっくりすると決めていた。 こんないいお天気の日にただぼうっとしているのも、ちょっともったいない…

桜に嵐

 夕闇を幾らか通り過ぎた時間だった。家路についていた私は、足早に道を歩いていた。気が急いていて、だから、すぐに気づかなかったんだと思う。 ひゅうっと強い風が吹き抜けたので、思わず足を止め目をぎゅっと閉じた。再び目を開けた時、なにかが目の前を…

熱のありか

 まぶたの裏に差し込む光を感じて、私は目を覚ました。上半身をゆっくり起こせば、それは窓から溢れた月明かりだと知る。そういえば、昼間カーテンを閉めるのを忘れていた。というより、閉める元気がなかった。 久しぶりに風邪をひいたので、昼はエミーがお…

キスの日

外国の人からすれば、キスなんて日常茶飯事で挨拶代わりのものなのだろうけど。れっきとした日本人であるわたしからすると、いまだに慣れない習慣なのであって。「つまるところ、恥ずかしいんですがソニックさん」「Uhmmm...そんなお前もカワイイけど…

過去も未来も

「ソニックが二人いる……」シャドウと見間違えたとかじゃなくて、ほんとうに、青いからだに赤い靴の針鼠が、二人いるのだ。けれど、一人は見慣れたソニックだけど、一人は背も小さく目の色も黒かった。唖然としていると、見慣れたほうのソニックが言った。「…

はじめまして

「なんだかすごいことが起こってるなあ」わたしはテレビを見ながら独りごちた。他人事のように言っているが、実際他人事なのでその程度の感想しか出てこない。テレビのニュースで大々的に報じられるほど、その出来事が遠いものに感じるものだ。でも、音速で走…