バロック

トライアングルゲーム

「それ、Cの4じゃない?」 チェス盤を前に考えていると、隣に座る音と少女の声がした。見なくても分かるが、僕は苦笑して彼女に向く。「考える楽しみを奪わないでくれよ」「ごめん、ごめん。でも、ずいぶん長いことそうしていたから」「まあね」 言いつつ…

拗れて捻れたパラドクス

 白い服。杭が刺さった十字架。大きな羽。金色の髪。 そして、泡。「……なんだ、その目は」 金色の隙間から、鮮やかな赤い色の目がのぞく。チリチリと焼けるような視線を投げるので、私はぱちりとまばたきをした。すると私を包んでいる培養液が揺れて、小…

きっとそう遠くない未来について

 久しぶりに会った幼なじみの金沢キツネは、以前とは少し『違って』いた。「……お前か」 ドアを開けるなり、キツネは僅かに眉をひそめた。「お前で悪かったですねえ」 口を尖らせるとキツネはため息をつく。「なんだいきなり。へそ曲がりは相変わらずか」…

暗闇女の記憶

 いつもわたしのまわりには、人の目と閃光があった。 人の目たちはわたしに、「もっと元気よく」とか、「もっと色っぽく」とか言いながらたくさんの閃光を浴びせた。そうして映し出されたわたしの姿は、また誰とも知らない人の目たちに晒されて、短時間で消…