レイス

悲哀の鐘は鳴り止まぬ

 ぐちゃ、と錆びた鉄が体を突き抜ける。痛みに顔を歪める暇もなく、振り下ろされた蜘蛛の脚に必死に抵抗する。どうやら私が最後の生存者だったらしく、目の前のローブ姿の男はもがき続ける私をじっと見つめていた。 何回目かすら忘れるほどに過ごした霧の森…

ガラス玉の昨日

 ゲートが閉じる。最後の1人の背中を見送っていると、にわかに周囲から霧が引いていった。 まるで、用済みだと、言われている気がした。 ひと気のなくなったガス・ヘヴンに、再び静けさが戻る。あれほどいたカラスもいつの間にか姿を消して、音といえば僅…

よみがえるゆうれい

「これで12回めなんだよ」 エンティティの足が振り下ろされる瞬間に、は僕に笑いかけた。そのときは、僕にはが何を指しているのか分からなかった。 上司を殺して、エンティティに言われるがまま霧の森の殺人鬼になって、僕はやっと安心できた。ほどよく殺…