ヴィンセント・シンクレア

停滞の帳

 ため息をつく。作業部屋にこもった熱気が汗を走らせ、仮面の内側に伝い落ちた。 どうにも手が進まない。煮詰まったみたいだ。 僕は蝋細工からナイフを離して机に置くと、裏口からこっそり外に出た。こういうときは、気分を少し変えてみよう。 すっかり夜…