仁王雅治

あの日の陰よ安らかに

「バカッ」 1階への階段を降り切ろうというところで女子とすれ違う。その子は片手で顔を覆いながら、ものすごい勢いで駆け上がっていった。後に残されたのは甘い香水の香りと、「……やっぱ仁王か」「プリ」 階段の横、倉庫みたいになってるスペースで壁に…

アブソリュートゼロ

「仁王君、あのさ」帰り道、不意に立ち止まった。その瞬間に俺は、ああまたかと思った。長くて三ヶ月、短くて一日。そのいずれも、今まで付き合ってきた女はこんな風に立ち止まって別れ話を切り出してきた。付き合ってなお女遊びをやめず、ろくに構いもしない…