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	<title>仁王雅治 &#8211; 揺れる</title>
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		<title>あの日の陰よ安らかに</title>
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		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 09:05:42 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[「バカッ」 　1階への階段を降り切ろうというところで女子とすれ違う。その子は片手で顔を覆いながら、ものすごい勢いで駆け上がっていった。後に残されたのは甘い香水の香りと、 「……やっぱ仁王か」 「プリ」 　階段の横、倉庫み...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%ae%e6%97%a5%e3%81%ae%e9%99%b0%e3%82%88%e5%ae%89%e3%82%89%e3%81%8b%e3%81%ab/" title="続きを読むあの日の陰よ安らかに">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「バカッ」</p>
<p>　1階への階段を降り切ろうというところで女子とすれ違う。その子は片手で顔を覆いながら、ものすごい勢いで駆け上がっていった。後に残されたのは甘い香水の香りと、</p>
<p>「……やっぱ仁王か」</p>
<p>「プリ」</p>
<p>　階段の横、倉庫みたいになってるスペースで壁に背を預ける仁王がいた。状況からして、また女の子を振ったに違いない。</p>
<p>「んな長続きしないならやめときゃいいのに。懲りない女子も女子だけど」</p>
<p>「彼氏もおらん未登録名前ちゃんには分からん世界じゃけえの」</p>
<p>「余計なお世話だわ！」</p>
<p>　仁王とは、3年になって初めて同じクラスになった。正直言って詐欺師なんて言われてるヤツと関わりたくはなかったが、話してみるとこれが意外なほど面白く、今では同じテニス部の丸井を交えて軽口を飛ばす間柄である。人は見かけによらないものだ。</p>
<p>「気にしとるんなら、作ればええに。俺とか」</p>
<p>「目の前でポイ捨てする奴が言うセリフか」</p>
<p>「未登録名前ちゃんなら捨てんよ？」</p>
<p>「何度目だ仁王」</p>
<p>　男が小首傾げたってひとっつも可愛くないし何十回同じセリフ言えば気がすむんだ。それに対して私の答えはひとつきりと決まっている。</p>
<p>「私はね、移り気は嫌いなの」</p>
<p>　例えまだ付き合ってないとしても、過去に浮気だのしてるようなヤツは信用出来ない。ポイ捨てなんか以ての外。<br />
　付き合ったら、私だけ見ててほしい。私はきっと欲張りだから、私がそうするように相手にも求めてしまう。自分で分かる。重たい、束縛、我儘だ。<br />
　だから仁王の彼女なんかなれない。自由であるのが仁王だからだ。</p>
<p>「未登録名前子」</p>
<p>　じゃあと立ち去ろうとして、腕を掴まれる。いつもと違う真摯な声に驚いて見上げれば、仁王はじっと私を見つめている。</p>
<p>「俺は、捨てん」</p>
<p>　その瞳には色がない。</p>
<p>「未登録名前なら、絶対に」</p>
<p>　緩まない手。震えているようにも見える唇。その一つ一つを確かめて、詰まりかけた息を大きく吸う。</p>
<p>「……どんどんヘタになるね、その詐欺」</p>
<p>「プピーナ。つまらんのう」</p>
<p>「つまってたまるか、そんなネタが」</p>
<p>「ならどんなネタならいいかの」</p>
<p>「振るな。そもそも振るな」</p>
<p>「未登録名前ちゃんが焦ったところみたーい」</p>
<p>「うぜえ！」</p>
<p>　スパーンと仁王の腕を振り払い、私は小走りで逃げ去る。</p>
<p>「じゃあね！次の彼女は泣かさないでよ！」</p>
<p>　返事を待たず、私は走った。鼓動が早いのは急いでいるからだと言い聞かせ、見えないふりをした。<br />
　次の彼女。自分の言葉が、痛かった。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　ずる、と壁にもたれて座りこむ。触れた手のひらがやけに熱く、逃したくないばかりに顔に当てた。<br />
　こんなにも心から欲しいと思える女に出会うとは誰が予想できただろう。胸の奥が焦げ付いて、喉がヒリヒリと焼けそうだ。だが覆水は返らない。自分で掘った穴だ。それなのに俺の心臓は早鐘を打つばかりで、見て見ぬ振りも出来ないほど、痛みを増していくだけだった。</p>
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		<title>アブソリュートゼロ</title>
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		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 08:34:14 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[「仁王君、あのさ」 帰り道、不意に立ち止まった。その瞬間に俺は、ああまたかと思った。長くて三ヶ月、短くて一日。そのいずれも、今まで付き合ってきた女はこんな風に立ち止まって別れ話を切り出してきた。付き合ってなお女遊びをやめ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%82%a2%e3%83%96%e3%82%bd%e3%83%aa%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%83%88%e3%82%bc%e3%83%ad/" title="続きを読むアブソリュートゼロ">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「仁王君、あのさ」</p>
<p>帰り道、不意に立ち止まった未登録名前。その瞬間に俺は、ああまたかと思った。長くて三ヶ月、短くて一日。そのいずれも、今まで付き合ってきた女はこんな風に立ち止まって別れ話を切り出してきた。付き合ってなお女遊びをやめず、ろくに構いもしない俺に嫌気が差すらしい。俺としては彼女ヅラして逐一連絡をせがむほうがよほど鬱陶しい。<br />
しかし、この未登録苗字未登録名前という女は、良くも悪くも空気のような女だった。俺がどれだけ遊んでいても文句は言わず、何度約束をすっぽかしても「そんなこともあるよね」と返す。学校でさえ会話することがあまりなく、会っても無言で隣にいる。俺の方がなぜ告白してきたんだと言いたくなるくらいに、未登録名前は空気のように振る舞った。<br />
正直に言えばその空気感がとても楽で、だからこそ三ヶ月ももったのだと思う。だがそれももう終わりだ。まあいい加減飽きてきたところだし、次は誰に声をかけてやろうか。わざわざ声をかけずとも、勝手に寄ってくる奴は大勢いるが。だから、こいつに切られたとしても、何とも思わない。ああ、何とも。</p>
<p>「仁王君ってさ」</p>
<p>別れ話だと思い込んでいたせいか、続く言葉に目を見開く。まだ背中を向けたままでよかった。</p>
<p>「薄氷だよね」</p>
<p>「……何の話じゃ」</p>
<p>苛立ちを隠さない声にも、未登録名前は全く怯む様子がない。</p>
<p>「うすーい氷で出来てるよね。唇合わせても体重ねても、氷一枚分くらいの距離を感じるよ」</p>
<p>「そこはガラスじゃないんか」</p>
<p>「モース硬度でいえばガラスは5で氷は6なんだよ。ガラスよりもっと手強そうだもの」</p>
<p>「……氷のそれは-70℃のときじゃ。0℃で1.5程度にしかならん」</p>
<p>なぜこんな話をしているのか。未登録名前は理科に強かったか？と思い返したところで、そんな基本的なことさえ知らないほどに未登録名前との関わりが薄かったことに気づいた。<br />
俺は、彼女のことを何も知らない。</p>
<p>「ならそれで正解だよ。仁王自身も薄氷で出来てる。絶対零度だよね。何ものにも揺さぶられないから。付き合って確信できた。そういう人もいるんだね」</p>
<p>「俺は、」</p>
<p>「じゃあ、さよなら」</p>
<p>「っ――！！」</p>
<p>振り返っても、未登録名前と視線は合わない。未登録名前はすでにこちらに背を向けていた。<br />
いつからだ。女遊びをやめたのは。いつからだ。約束を守るようになったのは。学校ではあいつを探して、無言でいる居心地の良さを感じるようになったのは。<br />
いつからか俺は、彼女を名前で呼ぶようになっていた。</p>
<p>（彼女がいう薄氷の意味が、恐ろしいほど理解出来た）</p>
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