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	<title>笹貫 &#8211; 揺れる</title>
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	<title>笹貫 &#8211; 揺れる</title>
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		<title>つかまった</title>
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		<pubDate>Thu, 28 Dec 2023 14:02:57 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[笹貫と二度目の冬の一コマ]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「寒いの、もう慣れた？」</p>
<p>　庭の雪かきを終えて執務室に戻ると、おかえりの後にそんなことを言われた。<br />
　そういえば、オレが顕現して二度目の冬になる。初めて冬を迎えたあのときは、人の身を得たばかりということもあって驚きの連続だった。身を刺すような冷たさ、という慣用句があるのは知識として知ってはいたが、実際に体験すると読んで字の如くとはこのことかと思わない日はなかった。その様子を見た主にはずいぶんと笑われ、「笹貫はかわいいね」なーんて言葉を頂戴したものだ。</p>
<p>「慣れたよ、残念ながら」</p>
<p>「そう？　じゃあ火鉢はいらない？」</p>
<p>「……それとこれとは話が違うんじゃない？」</p>
<p>「ふふ、冗談。今火を強くするから」</p>
<p>　あと体が温まるお茶も淹れようね、と主はふたり分の湯呑みを用意してくれた。<br />
　なんか、敵わないんだよなぁ。<br />
　火鉢のそばに寄りつつ、てきぱきとお茶を淹れる主を眺めながらぼんやりと思う。主とはこんな軽口をよく言い合うが、オレが勝った覚えはあまりない。数多くの男士を束ねる一国一城の主ともなれば、こうも肝が座るというのか。<br />
　……惚れた弱み、というなら、もうどうしようもないけどさ。</p>
<p>「はい、笹貫」</p>
<p>「ん、ありがと……あっつ」</p>
<p>「大丈夫？　火傷した？」</p>
<p>「へーき。心配し過ぎだって」</p>
<p>「えーだってさ、顕現したばっかりのとき……」</p>
<p>「もう、その話はいいでしょ」</p>
<p>　去年オレが初めての冬を迎えたとき、冷えた手で湯呑みを持って、その熱さに驚いて湯呑みを落として火傷した事件がある。だって知らなかったんだ、冷えきった手で温かいものを触るとあんなに熱く感じるなんて。<br />
　拗ねるオレとは対照に、主はくすくすと笑った。</p>
<p>「笹貫はかわいいねぇ」</p>
<p>「……何回言うの、それ」</p>
<p>　顕現したての頃から言われ続けているそれに、むっと顔をしかめると主はごめんと言いながらも口元を緩めている。<br />
　オレからしちゃ、可愛いのは主のほうでオレじゃないんだけど。そう伝えたこともあるけど、というか何度も言ってみてはいるけど、主はそんなことないよと言ってマトモに取り合ってくれないのだ。<br />
　長船派に口説かれ慣れているのかも、と思うと胸の奥がずくりと疼く。オレはまだまだ新参者で、主からしたら数ある男士のうちの一振りでしかないのだろう。それでも近侍をやらせてくれるのは、オレがただ強請っただけで。<br />
　いつになったら、オレは意識してもらえるのかな。</p>
<p>「……ね、主」</p>
<p>「ん？」</p>
<p>　主が、オレのことを可愛いなんて言うのなら。</p>
<p>「やっぱ、まだ冷えてるみたいだからさ……あっためて？」</p>
<p>　なんて言いながら、主の手を両手で握る。<br />
　我ながらなんてわざとらしいと思ったが、主が思う『笹貫』がそうであれと思うなら、道具のオレはそのとおりになってやろう。<br />
　焦って飛び込まず、はオレの信条だ。</p>
<p>「……仕方ないなぁ」</p>
<p>　やっぱり、主はなんでもないというふうに握った手に自身のそれを重ねて来た。まるで短刀たちにするようなやり取りだな、と思いながらふと顔を上げると。</p>
<p>「……あるじ？」</p>
<p>「なっなに？」</p>
<p>　驚いた。<br />
　顔が赤くなっている。</p>
<p>「へえ」</p>
<p>　いたずら心が降って湧く。重ねただけの手をほんの少し動かして、するりするりと主の手の甲を撫でさすった。</p>
<p>「な、なにいきなり」</p>
<p>「んー？　主は可愛いなーって？」</p>
<p>「ちがう、私は別に」</p>
<p>「ま、そうしとこっか。……今のところはね」</p>
<p>　指を絡めるように繋いでみせて、小さく上がった悲鳴に自然と口角が上がったのだった。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>真昼にクリスマス</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e7%9c%9f%e6%98%bc%e3%81%ab%e3%82%af%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%9e%e3%82%b9/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 12 Jan 2023 16:48:10 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[笹貫と初めての現世デート／ぜひあなた様のお気に入りの場所を思い浮かべながら読んでください]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「したいこと？」</p>
<p>　きょとん、という言葉がぴったりくるような顔をして、笹貫は私の言葉を繰り返した。こんな表情は顕現してから初めてかもしれない、そう思うとなんだか微笑ましく思えて、私は小さく笑いながら笹貫に話す。</p>
<p>「うちでは顕現して初めてのクリスマスにその男士の要望を聞くことにしてるんだよ」</p>
<p>　何事も初めてのことは思い出深くなるもの。その経験を私の本丸では大事にしたいと考えている。<br />
　更にクリスマスといえば現世でも一大イベントで、クリスマス商戦に則ってプレゼントもイベントも目白押しだ。その機会を使えば、普段は願いにくいことやものも用意しやすい――というのはこちら側の都合だけれど。</p>
<p>「というわけで、笹貫は何かしたいこととか欲しいものとかない？」</p>
<p>　そう言うと、笹貫は内番着の襟にサングラスを引っ掛けて、私に向き直った。</p>
<p>「……それって、なにか制限ある？」</p>
<p>「え、制限？あんまり高額だとか日にちがかかるものでなければ……」</p>
<p>　今までそんなに大きなお願いをされたことがないので予想しておらず、少しうろたえた。笹貫は一体何を欲しがっているんだろうか。</p>
<p>「オレはね」</p>
<p>「う、うん」</p>
<p>「主とクリスマスデートがしたいな」</p>
<p>「…………ヘァ？？」</p>
<p>　返ってきたのは予想を遥かに超える言葉だった。口をあんぐり開けていると、笹貫は「面白い顔になってる」と笑った。さっきと立場が逆じゃないか。</p>
<p>「ダメ？」</p>
<p>「いや……ダメではないけど」</p>
<p>「んじゃソレで」</p>
<p>「いやちょい待って、クリスマスにデートって意味分かって言ってんの」</p>
<p>「どっちだと思う？」</p>
<p>「聞いてるのはこっちなんですけど！？」</p>
<p>「デートコースはどうしよっかーやっぱ現代がいいよねー光ってるイルミネーション見たいし」</p>
<p>「逸らすな話を！！！」</p>
<p>　おかしい、笹貫ってこんな強引なタイプだったっけ。今まではむしろ私を優先してくれた気がするのに。例えばそう、ちょっとした買い出しにも付き合ってくれたり、よく近侍を務めてくれたりとか……ん、あれ？</p>
<p>「じゃ、当日楽しみにしてるから」</p>
<p>「え、ちょっと！」</p>
<p>「おめかし、してきてよね」</p>
<p>　せっかくのデートなんだからさ、と片目をつむって投げかけられた言葉は、今まで聞いたことがないほど甘かった。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「クリスマスデートって言ったら、夜かと思ったのに」</p>
<p>　笹貫はちょっとふてくされた様子でそう言った。</p>
<p>「仕方ないでしょう、夜は本丸のみんなでパーティって決まってるんだから」</p>
<p>　それに恋人同士でもないのに夜までデートしてるのは……という言葉はぐっと飲み込んだ。なんだか既にややこしい事態になりつつある予感がするのに、これ以上藪蛇をつつきたくはない。<br />
　とはいえ本丸でパーティがあるからというのもあながち嘘ではなく、これは例年の決まりごとだ。なので必然的に笹貫とふたりきりで過ごせる時間はかなり限られる。具体的には準備に本腰入れる前のお昼から夕方ちょい前くらいだ。</p>
<p>「まぁまぁ、お昼のクリスマスも悪くないと思うよ。どこのお店も混み出すのはやっぱ夕方からだし」</p>
<p>「イルミネーション見たかったなあ……」</p>
<p>「それは……まぁ、またの機会にしてもらって」</p>
<p>「機会があればいいってこと？」</p>
<p>　それまで隣を歩いていた笹貫が、ぐっと顔を近づけた。さっきまでのふてくされ具合はどこ吹く風、いつもの底が見えないような笑顔で私を見つめている。</p>
<p>「……あれば、ね」</p>
<p>　なぜか居心地が悪くなり、その青い瞳から目を逸らしながら答えるが、笹貫は「ん、分かった」といやに物わかり良く返事をし、また並んで歩き出す。<br />
　笹貫が希望したのは現代――つまり私が生まれた現世への外出である。光ってるイルミネーションは見られそうにないが、せめて雰囲気だけでもと街を歩いていた。私はいつも現世に行くときに着る服だが、笹貫はハイネックのセーターとモッズコート、それにスキニージーンズとブーツという現世に馴染むどころかどこのモデルですかという出立ちである。正直隣歩くの緊張するんだが。<br />
　クリスマスの飾り付けで彩られた街は既に人で溢れており、家族連れや恋人同士もみんな笑顔で行き交っている。私たちは側から見たらどんなふうに見えるだろう……と想像しかけたがすぐに切って捨てた。</p>
<p>「笹貫はイルミネーション以外で行きたいとこある？」</p>
<p>「主、――じゃないな。キミと一緒ならどこでも良かったんだよね。実は」</p>
<p>「……へあ」</p>
<p>「だからさ、キミが好きな場所、教えてよ。それがオレの行きたいトコ」</p>
<p>「……なんか、こないだっから笹貫、変じゃない？」</p>
<p>「どこが？」</p>
<p>「どこって、……その、なんか妙に近いというか」</p>
<p>「近いって、なんのこと？」</p>
<p>「ウワアア顔を近づけるなそういうとこだぞ！！」</p>
<p>「顔真っ赤にしちゃってかーわいー」</p>
<p>「人で遊ぶな！！……もう、さっさと行くよ！！」</p>
<p>「お。どこに行くの？」</p>
<p>「それは――」</p>
<p>　私は頭の中で、一番好きな場所を思い浮かべながら笹貫の手を取った。<br />
　笹貫は、まさか手を繋ぐとは思っていなかったようでびっくりしたように目を見開いている。なかなかにレアな表情だ。<br />
　妙に近いこととか、弄ぶようなことをするとか。聞きたい理由はたくさんある。でもそれ以上に、笹貫のそんな行動が嫌じゃない自分がいるってことは、これから伝えてしまおうか。そうしたらもっとレアな表情を見せてくれることだろう。それは私にとって一番の――いや、今後一生のプレゼントになるに違いない。</p>
<p>「着いてからの、お楽しみ！」</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>『おはよう』</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%80%8e%e3%81%8a%e3%81%af%e3%82%88%e3%81%86%e3%80%8f/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 12 Jan 2023 16:45:13 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[凍てついた海の上の男　／流行りに乗って元カレネタを私が書くとこうなるよ！っていうだけのやつ]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>　人の心が海だと云うなら、きっとこの男の海は凍てついている。</p>
<p>　そう思ったのは三回目くらいに肌を合わせた時だった。男は恐ろしいほど美しく、女にやさしく、一度味わってしまえば引き返せないような底なしの魅力を持っていた。だけど私は見てしまった。行為のさなか、私を見る彼の目には誰も映っていない。打ち付ける熱とは裏腹に、どこまでも冷たい海のような目でどこか遠くを見つめている。魅力溢れるはずのこの男が、誰それに振られたとよく聞くのはこういったことが理由なのだろう、と、薄い意識の中でぼんやりと考えた。<br />
　それでも私が男を振らなかったのは、その、凍てついた海の上で立ち尽くすような男の行く末を見てみたかったからだった。情愛よりも、あるのは好奇心と少しの憐憫。私は、男を――笹貫をもっと知りたかった。</p>
<p>「ごめん。別れよ」</p>
<p>　音を上げたのは、笹貫のほうだった。いつものようにアパートに行って、いつものように形だけの愛を浮かべて、そうして彼は絞り出すようにそう言った。初めて聞く声だった。</p>
<p>「わかった」</p>
<p>　笹貫はずっと顔を伏せていた。私が身支度を整えて、合鍵を置いて、「さよなら」を言ってドアを閉めるその時まで、ずっと、あの冷たい海が私を見ることはなかった。</p>
<p>　笹貫から誰それを振る、のは、私が初めてだった。</p>
<p>　というのは、別れて暫くしてから人づてに知った。知ったところでもうどうにもなりはしないけれど、あの凍てついた海に漂う男の何かしらの初めてに自分がなったというのは、なんとも言えず不思議な心地がした。<br />
　笹貫に関する記憶は、そこで止まっていた。</p>
<p>　はずだった。</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「……」</p>
<p>　私は、目の前に現れた男に対しぽかんと口を開くことしかできないでいた。<br />
　これから冬に差し掛かろうという、午後の海。面した公園から手すりにもたれて、ぼんやりとそれを眺めていた。理由があったわけじゃない。たまたま通りががって、たまたま時間があったから、何とはなしに立ち寄った。それだけなのに。</p>
<p>「忘れちゃった？」</p>
<p>　男が事もなげに言う。<br />
　まるで昨日会った友人に、分かりきった冗談を飛ばすような軽快さで。</p>
<p>「笹貫」</p>
<p>　その名を呼ぶと、笹貫は嬉しそうに目元を緩めた。さらりと流れた横髪から、見覚えのある緑のメッシュが覗いている。<br />
　笹貫は、別れた時と何も変わっていなかった。</p>
<p>「久しぶり、元気してた？」</p>
<p>「まぁ……それなりに」</p>
<p>「たはは、警戒心丸出しってカンジ」</p>
<p>　それは、そうだ。あれから何年も経ってはいるが、私たちは円満な別れ方をしたわけじゃない。もっと言うと付き合っていた時でさえ、私達は空虚なやり取りしかしていない。薄っぺらで、中身がなくて、そんなどうでもいい会話と行為を繰り返しているだけの日々。楽しいとも、悲しいとも思わないような関係だった。</p>
<p>「オレはね、もう一度会いたかった」</p>
<p>　不意に、笹貫が言った。私は驚いて目を見開く。この、凍てついた海にいる男から、こんな感情のこもった言葉が出てくることが信じられなかった。</p>
<p>「……会って、どうするの。どうしたいの」</p>
<p>　笹貫はちらりと視線を逸らした。視線の先は、手すりをつかんだ私の左手。<br />
　銀色の指輪が嵌った薬指。</p>
<p>「会いたかっただけ……って言ったら、信じてくれる？」</p>
<p>「ムリかも」</p>
<p>「たっはは、キミのそういうさっぱりしたとこ、変わってないんだ」</p>
<p>「そういう笹貫は、……変わった」</p>
<p>「そ？どんなとこ？」</p>
<p>　記憶を辿る。過去の記憶の笹貫は、もっと、</p>
<p>「あんまり笑わなかった」</p>
<p>「ふうん？オレ、けっこう人当たりいいねって言われるほうなんだけど」</p>
<p>「表面だけだったでしょう」</p>
<p>「……へえ？」</p>
<p>「怒った？」</p>
<p>「いや」</p>
<p>　笹貫は私と同じように、手すりにもたれかかった。</p>
<p>「そういうトコが、好きだったんだなーって」</p>
<p>　波の音がする。<br />
　一定のリズムを、繰り返し、ゆったりと刻みながら、冷たい冬の風を乗せて二人の間を通り抜けていく。<br />
　そうやって身を任せているうちに、ふと思い出す。</p>
<p>「告白したのって、どっちだっけ」</p>
<p>「ええ？それも忘れちゃったの。オレだよ」</p>
<p>「そうだっけ。笹貫って、自分から告白するタイプだった？」</p>
<p>「んー。キミが初めて、かも」</p>
<p>「知らなかった」</p>
<p>「言わなかったからね」</p>
<p>「笹貫から振るのも、初めてなんだって？」</p>
<p>「えー、それは知ってるんだ。でもそう、そのとおり」</p>
<p>「なんで振ったの？」</p>
<p>「それ、聞いちゃう？」</p>
<p>「昔の話でしょ」</p>
<p>「まぁ、ね。……そうだなぁ」</p>
<p>　笹貫は、もたれた手すりに肘をかけ、顎を乗せた。</p>
<p>「怖くなったから、かな」</p>
<p>「……何が？」</p>
<p>「キミが」</p>
<p>「どうして」</p>
<p>「好きだから」</p>
<p>　海が見つめている。</p>
<p>「キミが、好きで、好きで、たまらなくなって、怖くなった。だから、だったら自分から……」</p>
<p>　その瞬間、凍てついた海が融け出したのを確かに感じた。</p>
<p>「……知らなかった」</p>
<p>「言わなかったから」</p>
<p>　私は、ずっとずっと知りたかった。<br />
　笹貫という男のことを知りたかった。<br />
　その術を、どうして知ろうとしなかったんだろう。<br />
　あれだけ交わしたはずの会話も。あれだけ重ねたはずの体も。今やなんの意味も持たない。それよりも、長い時間をかけて隔てられたこの距離から見る笹貫のほうが、ずっとずっとよく見えた。<br />
　良く、見えた。</p>
<p>「オレ、もう行かなきゃ」</p>
<p>「どこへ？」</p>
<p>「遠いとこ」</p>
<p>「もう会えない？」</p>
<p>「会わないほうがいいでしょ。キミは」</p>
<p>　視線の先に光る銀色。</p>
<p>「けど」</p>
<p>「終わったんだよ、オレたちは」</p>
<p>　どこまでも優しく、冷たい言葉だった。</p>
<p>「……ごめん」</p>
<p>　自分でも、何に対する言葉なのか分からなかった。だけど、今、言わなければ一生後悔してしまうような、そんな気がした。<br />
　俯く私に笹貫はからりと笑った。</p>
<p>「なーんで謝るの。むしろ悪いのはオレなのにさ」</p>
<p>「ちが、笹貫は」</p>
<p>「いいんだよ。キミはそのままで」</p>
<p>　そう言うと、笹貫は手すりから離れて私に背を向けた。</p>
<p>「さよなら」</p>
<p>　肩越しに一度だけ振り返り、それきり、笹貫が私を見ることはなかった。</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「……終わったか」</p>
<p>　波の音も聞こえないほど離れた路地に差し掛かると、顔を隠したスーツの男が立ちふさがる。オレは両手を上げて頷いた。</p>
<p>「終わったよ。コレでぜーんぶ」</p>
<p>「そうか」</p>
<p>　短く言うと、男はジャケットの内側に手を入れ、それを取り出した。<br />
　サプレッサー付き拳銃。<br />
　その銃口を淀みなくオレの額に押し付け、撃鉄を起こす。</p>
<p>　こんな稼業をやっていれば、命なんていつなくなってもいいと思っていた。<br />
　けど、最後にひとつだけ何かをしていいと言われ、ふっと思い出したのがあの子の顔だった。<br />
　生まれて始めてオレから告白して、生まれて初めてオレから振った。<br />
　その子が最初で最後だった。<br />
　だから、もう一度だけ会いたくなった。一度だけで良かった、はず、なのに。</p>
<p>　どうして最期になって、こんな思いが溢れたりするんだろう。</p>
<p>「次会うときは、『おはよう』って言いたいなぁ」</p>
<p>　男が引き金に指をかける。<br />
　オレは、大きく息を吸って目を閉じた――</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　――ん、笹貫……？</p>
<p>　――起きた？</p>
<p>　――あれ、私……？</p>
<p>　――どうしたの？</p>
<p>　――変な夢、みた気がする</p>
<p>　――へえ、どんな？</p>
<p>　――笹貫が元カレの夢</p>
<p>　――たはは、なにそれ。あ、そういえば</p>
<div style="height:50px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「おはよう。主」</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>笹貫が分からない</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e7%ac%b9%e8%b2%ab%e3%81%8c%e5%88%86%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%aa%e3%81%84/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 12 Jan 2023 16:44:05 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[結局おたがいさま]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>　よく分からない刀が顕現したものだ、としみじみ思う。<br />
　最近になって励起された笹貫という刀のことだ。来歴や逸話、何より現存しているという事で素性こそはっきりしているが、刀剣男士として人の形を得たことによる人物像――つまり、性格がよく分からないのである。「これ、ホント」「なんてジョーダン」といった口癖から察せられるように、まるで寄せては返す波のように掴みどころがない。良く言えばマイペースで温厚、悪く言えば軟派でチャラい。そんな底の見えない性格をした彼のことが、私はものすごく苦手であった。<br />
　苦手なんだけど。</p>
<p>「……あの、笹貫サン？」</p>
<p>「ん？どうかした？」</p>
<p>「近いんですけど」</p>
<p>「そりゃ、くっついてるからねえ」</p>
<p>「違うそうじゃない」</p>
<p>　弊本丸では、新入りは一定期間近侍をさせることになっている。この制度を決めたのは私だが、今だけは当時の自分を恨みたい。<br />
　当の笹貫は文机で書類を仕事をする私の肩に自身のそれをぴたりとくっつけている。そりゃーもうぴったりと。</p>
<p>「離れてって言ってんの私は」</p>
<p>「えー」</p>
<p>「えーじゃない。子どもか」</p>
<p>「子どもみたいなもんじゃない？なにせ顕現してまだ一年も経ってないし？」</p>
<p>「自分で言うなとにかく離れろ」</p>
<p>「冷たいなぁ〜〜」</p>
<p>「だああ頭まで押し付けるな離れろ！！」</p>
<p>　笹貫は顕現してからずっとこの調子である。こいつのパーソナルスペースどうなってんだ。</p>
<p>「てか、なんで私に構うわけ」</p>
<p>「え〜？そんなの主が好きだからに決まってるじゃん」</p>
<p>「ウソでしょ」</p>
<p>「ホント、ホント。こんなウソつかないって」</p>
<p>「……どうだか」</p>
<p>　笹貫は重大な勘違いをしている。顕現してから日が浅く、身近な異性が私しかいないから、主への敬愛と愛情を間違えているのだ。<br />
　そうでなければ、こんな何の取り柄もない面白味もない、『冷たい』人間に好きだなんだと言えるはずがないだろう。</p>
<p>「あ、難しい顔してる。そういう顔もかわいーよね」</p>
<p>「……とち狂ってるんじゃないの」</p>
<p>「たはは、手厳しいなぁ。で・も、そういう方がキミらしくって良いよね」</p>
<p>「何なの、ほんとに」</p>
<p>　文机の上で、拳を握る。</p>
<p>「人肌恋しいだけなら私じゃなくたって良いでしょ」</p>
<p>　しん、と静まり返る。<br />
　ほらみたことか。図星を突かれてさぞ驚いたことだろう。こっちは、とっくに気づいてるんだから。<br />
　笹貫が、ただ寂しくてこうしているだけだってことくらい。</p>
<p>「そういうトコ、なんだよねぇ」</p>
<p>　たっぷりの沈黙の後、返ってきたのはなぜか弾んだ声だった。</p>
<p>「…………は？」</p>
<p>「うん。オレもね、色々試したワケ。出陣先の子と仲良くなってみたりとか、遊廓とか出会い茶屋とか行ってみたり。……でもね、ダメだった」</p>
<p>　ふっと、それまでずっとくっついていた肩が離れた。見れば笹貫からいつもの余裕ぶった笑顔が消えている。</p>
<p>「キミじゃなきゃ、こんなふうにくっついたり、好きだなんて言えなかった。……オレが、寂しいってことに気づいてくれるのはキミだけだった」</p>
<p>　海の底みたいな色の瞳が揺れている。<br />
　どこまでも深く、遠く、どれだけ手を伸ばしても届かないくらいの海の底。<br />
　だけど私は手を伸ばす。指先が頬に触れると、笹貫は驚いたように目を見張った。<br />
　そのまま、形をなぞるように、輪郭を辿るように指を滑らせる。<br />
　この指先から伝われば良いと思った。</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「仕事中にンなとこ行くバカがいるかァ！！！！！！！！」</p>
<p>　思いっきり頬をつねったが、なんか嬉しそうだった。やっぱりバカなのかもしれない。</p>
<p>　それは、まあ、私もなのだけど。</p>
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		<title>笹の寄る辺は</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Thu, 12 Jan 2023 16:43:15 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[海の底とは限らない]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>　水に潜るのが好きだ、と知った。</p>
<p>　人の身体を得て、さまざまなことを経験した。二本の足で立って歩く。声を出して会話をする。食事をして睡眠をとって、そしてまた朝を迎えて起き上がり、仲間たちに「おはよう」と言う。<br />
　その中でもとりわけ、水の中に潜ったり、泳いだりするのが好きらしい。<br />
　元の逸話を考えるなら忌避してもおかしくない行動のはずなのに、皮膚を通して得る水の感触や温度、ごぼごぼと鳴る泡の音を掻き分けて水中の奥深くへ、何より自分の手足で進んでいけるのが心地良いと感じた。<br />
　しかしそう、長く潜ってはいられない。人には呼吸というものがあって、息をしないと死んでしまう。オレは刀剣だから死ぬことはないけど、苦しいことに変わりない。限界を感じて泳ぐのをやめ、体の力を全部抜いて勝手に浮き上がるのをじっと待つ。潜るのは好きだけれど、この時間だけはどうも好きになれない。多分、それこそ、ただの刀だったころのことを思い出すからだろう。手足はなく、息はしなくていいけど波に流されるまま、何処へとも知らない海を漂うあの頃のことを。<br />
　ざば、と水面から顔を出す。思ったより時間が経っていたらしく、辺りは濃い紫色を湛えた空模様になっていた。太陽はどこかへ隠れたばかりで、もうすぐ夜がやってくる。海の色も黒く暗い。身震いしたのは、きっと夜の海の冷たさだ。</p>
<p>「おーぅい」</p>
<p>　平泳ぎしながら浜に戻ると、小さな人影が手を振っているのが見えた。近づくにつれ、それはオレを顕現した審神者だと知る。そばに護衛の刀はいない。もしや一人でここへ来たのだろうか。</p>
<p>「ダメじゃないか、夜に一人で出歩いちゃ」</p>
<p>「それはこっちのセリフですよ！こんな時間まで一人で泳ぐなんて、何かあったらどうするんですか！」</p>
<p>　審神者は腰に手を当てて頬を膨らませていたが、あっと声を上げたかと思うとオレの頭に布を被せようとした。ふかふかのバスタオル。でも彼女の身長じゃ全然届かなくて、それでも一生懸命オレの頭に被せようとするものだから、堪えきれずに吹き出してしまう。</p>
<p>「なに笑ってるんですか、こっちは笹貫さんが風邪をひいてしまわないか真剣なんです」</p>
<p>「うん、分かってる。……分かってるよ」</p>
<p>　そう言いながら腰を屈めると、彼女は満足したようにバスタオルでオレの頭を撫で回す。水分がみるみる吸い取られ、下がりつつあった体温が浮上していくのを感じる。</p>
<p>　捨てられて。<br />
　もう一度、捨てられて。<br />
　だから今度は自分の力だけで戻ってこられるようになろうと思った。<br />
　それで、潜った。<br />
　どれだけ深く深く潜っても戻って来られるようになりたかった。<br />
　だけど、水の底は暗くて、冷たくて、</p>
<p>　さみしい。</p>
<p>「早く帰りましょう。みんなが待ってます」</p>
<p>　彼女が手を差し出す。オレは、一瞬迷ったけど、自分よりもずっと小さくて細くて、それでとても温かい手を取った。</p>
<p>「おかえりなさい、笹貫さん」</p>
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