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	<title>となりの佐々木くん &#8211; 揺れる</title>
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	<title>となりの佐々木くん &#8211; 揺れる</title>
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		<title>きみとふたりで</title>
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		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:31:15 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[きっかけは本当に、ただ隣になったからという些細なものだった。 その時ボクは深く考えていなくて、所在なさそうにしていた彼女が気の毒だったから声をかけた。 名前を知っていたのは、クラスメイトの名前は全員覚えるようにしていただ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%8d%e3%81%bf%e3%81%a8%e3%81%b5%e3%81%9f%e3%82%8a%e3%81%a7/" title="続きを読むきみとふたりで">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>きっかけは本当に、ただ隣になったからという些細なものだった。<br />
その時ボクは深く考えていなくて、所在なさそうにしていた彼女が気の毒だったから声をかけた。<br />
名前を知っていたのは、クラスメイトの名前は全員覚えるようにしていただけ。<br />
ボクは他人と深く付き合える性格じゃないから、せめて名前は覚えていようと、酷い言い方をするとそうなる。<br />
確かに彼女は目立つ子じゃなかった。活発というふうでもなかったから、声をかけて迷惑そうだったら素直に引き下がろうと思っていた。というより、きっと迷惑だろうなと思った。<br />
ところが彼女は、話をしてみたい、と言ってくれた。<br />
これが本当に意外で、でも、すごく嬉しかった。<br />
今まで他の誰かにそんなふうに言われたことがなかったものだから、『ボクと』話がしたいと言ってくれた彼女のことが、気になるようになった。<br />
多分その時から、もう惹かれてたんだと思う。我ながら単純というか、ちょろいって思うけど。<br />
だけど、彼女の目が特に気になったんだ。最初に声をかけたときから思っていたことなんだけど、時々、彼女は心を見るような目をした。<br />
見透かすような鋭い感じではなくて、なんといえばいいか、表情や言葉から別の何かを拾い上げるような、そんな感じ。<br />
だから、彼女の前で笑うのは気が引けるところがあった。彼女がボクから拾い上げた別の何か、それは一体どういうものだろうって。<br />
それが気になったから、ボクはもっと彼女に近づこうって思った。彼女のことを、もっと知りたいって。<br />
本の話？あれも偶然だった。ボクも図書室を利用したことがなかったから、あの本が入っていることも知らなかったし、ましてや彼女が読書家だってこともその時初めて知った。<br />
本のことで高揚する彼女を見ていたら、ボクも嬉しくなった。知らなかった彼女の一面を見ることができて、少しは近づけたかなって。本は元々好きだったからね。<br />
彼女のことを強く思うようになったのは、いつかの放課後、二人で図書室に行ったとき。<br />
彼女が転びそうになったのを受け止めたことがあった。彼女は気まずそうにあわてて図書室を出て行ってしまったから、あの後ボクがどんな顔をしてたか知らないはず。もし見ていたなら、きっと気づかれた。<br />
当たり前なんだけど、彼女は女の子で、背だってボクより小さいし、それにとても軽い。一度意識してしまうと頭から離れなくなった。<br />
それで、気がついたら彼女のことで頭がいっぱいになってしまった、というわけ。<br />
まさかりんごちゃんとの会話を聞かれているなんて思わなかったけど、結果オーライ、かな？でも勘違いさせて傷つけちゃったことは、今でも悔やんでる。<br />
彼女が泣いてるところなんて、あと一度だって見たくないよ。まあ、泣いたってことは、彼女のほうにもその気があったってことだから、思い切って言ってしまえたんだけどね。<br />
それがなかったら？そうだなぁ、もう少し先延ばしにしていたかも。だって彼女、全然そんなそぶりなかったから。きっとボクが一方的に思ってるだけだって、そう思ってた。話し始めたのが最近っていうのもあったから、もう少し機を待ってからでもいいかな、って。泣いてる彼女を見たらそんなの全部吹っ飛んでったんだけどね。何度も言うけど、彼女の涙なんてもう見たくない。笑っててほしい。彼女のあの目が細められて笑ったところ、ボク、本当に好きなんだ。<br />
……え？りんごちゃん、なんで笑って――え、未登録名前ちゃん！？いつからそこに？最初から？なんで教えてくれなかったのりんごちゃん！すごい恥ずかし――ってこのタイミングで出て行くの？そんなのずるいよ！<br />
……えっと、うん。まあ、そういうこと、なんだよ。そ、そんなにおかしい？いやまあ、確かに未登録名前ちゃんの笑った顔が好き、って言ったのボクだけどさ。<br />
おかしいんじゃなくて？嬉しいの？そ、そっか。うん、ボクも。<br />
キミと出会えて、嬉しい、よ。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたのとなり</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%ae%e3%81%a8%e3%81%aa%e3%82%8a/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:30:07 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[ふと気がつくと、教室内は薄暗くなっていた。 どうやらいつの間にか眠っていたらしい。起き上がって、ぼんやりする視界を正すために目をこすった。 そして目を疑う。 わたしの席に、佐々木くんが座っている。 「起きた？」 驚きで声...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%ae%e3%81%a8%e3%81%aa%e3%82%8a/" title="続きを読むあなたのとなり">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>ふと気がつくと、教室内は薄暗くなっていた。<br />
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。起き上がって、ぼんやりする視界を正すために目をこすった。<br />
そして目を疑う。<br />
わたしの席に、佐々木くんが座っている。</p>
<p>「起きた？」</p>
<p>驚きで声が出せなかった。<br />
と同時に、肩に慣れない感触があるのに気づいた。見てみると、男子制服の上着がかけられている。<br />
佐々木くんがかけてくれたんだとすぐ分かった。</p>
<p>「今日、部活にこなかったから、どうしたのかと思ったよ★」</p>
<p>ということは部活が終わってからか、その前からか、佐々木くんはわたしが起きるのを待っていてくれたんだ。自分の上着をかけて。<br />
彼は、本当に優しい。<br />
優しすぎて、また、涙が出てきた。</p>
<p>「未登録名前ちゃん？」</p>
<p>佐々木くんの声に、動揺が混じっている。<br />
それは、そうだろう。いきなり目の前で泣かれたら、誰だって。</p>
<p>「わたしに、やさしく、しないで」</p>
<p>肩にかけられた、佐々木くんの制服をつかんで、わたしは言った。<br />
顔なんて見られるわけがないから、床を見つめて。</p>
<p>「やさしくされると、わたし、苦しくなるから。勘違いしちゃうから」</p>
<p>好きじゃないなら、いっそ放っておいてほしかったとさえ思ってしまう。<br />
話をしてみたい、そう言ったのはわたしなのに。<br />
自分勝手さに腹が立って、余計に苦しくなった。<br />
気づかなければよかったのに。<br />
隣になんてならなければよかったのに。<br />
後悔したってもう遅い。わたしは気づいてしまったし、佐々木くんは変わらず隣にいる。</p>
<p>「……もしかして、部室で話してたこと、聞いた？」</p>
<p>少し迷ったけど、いきなりこんな態度をとってしまったことへの罪悪感から、わたしは正直に頷いた。<br />
佐々木くんは、そっかぁ、と、なぜか先ほどより少し明るい調子で言った。</p>
<p>「本当のことを教えよう★」</p>
<p>「え……」</p>
<p>思わず顔を上げる。<br />
佐々木くんは、笑っている。かすむことなくちゃんと見える。</p>
<p>「りんごちゃんは、友達として好きか、という意味で言ったんだよね★だから、ボクはそうじゃないって言った。ボクにとって、未登録名前ちゃんは友達じゃなくって――」</p>
<p>佐々木くんが、制服をにぎりしめるわたしの手に、そっと触れた。</p>
<p>「一人の女の子として、好き、だよ」</p>
<p>いつの間にか涙は止まっていて。<br />
わたしの目は佐々木くんに釘づけになっていて。<br />
佐々木くんの手が、わたしの背中に回って。<br />
その時、わたしたちの距離がゼロになった。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>あれからどういうわけか、わたしと佐々木くんの仲はあっという間に広まったけれど、佐々木くんを好きな女子からいじめられるわけでもなく、平穏に、時々囃されたりしながら、楽しい日々を送っている。<br />
佐々木くんがかすんで見えることもなくなって、あれは一体どういうことだったんだろうと時々思い返すけれど、やっぱり分からないので、不思議なこともあったな、で片をつけることにした。<br />
でもちゃんと見えるようになった佐々木くんは、</p>
<p>「今日、うちにこない？一緒にゲームしようよ★」</p>
<p>「うん、いいよ」</p>
<p>「今日親いないから」</p>
<p>「え！？」</p>
<p>「じょーだん★」</p>
<p>時々、ついていけません。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたへの思い</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%b8%e3%81%ae%e6%80%9d%e3%81%84/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:28:29 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[「最近、佐々木君とよく話してるよね」 お昼、お弁当を食べていたとき。 一緒にいた友達にそう言われ、わたしは箸を落としそうになった。 「え、そ、そうかな」 「そうだよ！なになに、ようやくもその気になったわけ？」 友達はわた...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%b8%e3%81%ae%e6%80%9d%e3%81%84/" title="続きを読むあなたへの思い">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「最近、佐々木君とよく話してるよね」</p>
<p>お昼、お弁当を食べていたとき。<br />
一緒にいた友達にそう言われ、わたしは箸を落としそうになった。</p>
<p>「え、そ、そうかな」</p>
<p>「そうだよ！なになに、ようやく未登録名前もその気になったわけ？」</p>
<p>友達はわたしの反応を楽しんでいるようで、にやにやと笑っている。<br />
わたしといえば、別になにもやましい気持ちはないはずなのに、視線を合わせられなかった。</p>
<p>「もしかして、もう告白したとか？」</p>
<p>「しし、してないよ！」</p>
<p>あれ、どうしてわたし、こんなに焦っているんだろう。<br />
以前同じようなことを聞かれたときは、全然なんてことなかったのに。<br />
友達の追求が怖いので、話をそらすことにした。</p>
<p>「わたしのことより、そっちのほうが気になるよ。好きな人と近い席になれたんでしょ？」</p>
<p>「あーそうそう！こないだようやく一緒に遊ぶ約束できて！まあ大勢でなんだけどー」</p>
<p>よかった、上手くいったようだ。<br />
でも、嬉しそうに、時折照れくさそうに好きな人の話をする友達を見て、ほんの少し、羨ましさも覚えていた。<br />
好き、かぁ。<br />
わたしは、佐々木くんのこと、ほんとはどう思っているんだろう。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>放課後になり、用事を済ませて職員室から出ると、わたしはお昼に言われたことを思い返していた。<br />
確かに以前より佐々木くんと会話することは増えたし、物理部の活動がある日は毎回お邪魔している。いっそ、帰宅部から物理部になろうかと思うほどに。<br />
けれど、佐々木くんにあまり興味がないわたしの友達でさえ、わたしと佐々木くんが仲良く見えるということは問題だ。<br />
今まで気にも留めなかったが、わたしみたいな地味なのと一緒にいて、佐々木くんに悪い噂が立っていないだろうか。<br />
今日も物理部の活動日。わたしはあれからずっと行こうか否か迷っていた。一緒に行こうという佐々木くんに、用事があるから先に行ってて、とわざわざ用事を作ってしまうほど迷った。<br />
それでも気づけば、わたしの足は部室に向かっているのだった。</p>
<p>（一度、りんごちゃんかりすくま先輩に相談したほうがいいかなぁ）</p>
<p>とりあえず、今日は行こう。先に行ってて、と言った手前もある。<br />
わたしは部室のドアを開けようと――</p>
<p>「それで、未登録名前ちゃんの――」</p>
<p>して、手を止めた。<br />
佐々木くんの声がする。だけじゃなくて、わたしの話をしている。</p>
<p>「――紹介の仕方がすっごく丁寧で分かりやすいから、最近ゲームより読書が多いんだ★」</p>
<p>「なるほど、それでか」</p>
<p>聞いているのは、りんごちゃん一人のようだった。<br />
立ち聞きはよくないから、なにも聞かなかったふりをして入ろう。<br />
でも、ちょっと恥ずかしいから、わたしの話題が終わってからでもいいよね。</p>
<p>「ところでまぐろくん」</p>
<p>「なんだい？」</p>
<p>「最近未登録名前の話ばかりだよね」</p>
<p>「そう、かな★」</p>
<p>「そんなに好き？」</p>
<p>息が詰まる気がした。<br />
さっと顔が赤くなり、一人だというのに気恥ずかしさを覚え、その場から立ち去ろうかとも思った。<br />
けれど、続きを、聞きたくないような聞きたいような、ごちゃまぜな気持ちになって。</p>
<p>後悔した。</p>
<p>「いや、そうじゃない、かな」</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>夕日で真っ赤になった教室には、もう誰も残っていなかった。<br />
いたとしても、今のわたしはお構いなしだったと思う。<br />
ふらふらと自分の席に向かい、座ろうとして、隣の席に座った。<br />
佐々木くんの席。そこから見る景色は、ひとつ席が違うだけだというのに、目新しいもののように感じた。<br />
窓側を向けばわたしの席がある。佐々木くんはこんなふうにわたしを見ていたんだと思うと、ずきりと胸が痛んだ。<br />
同時に流れる一筋の涙が、雫になって机に落ちる。<br />
その瞬間にわたしは、ようやく、気がつくことができた。</p>
<p>わたし、こんなに、佐々木くんのこと、好きになってたんだって。</p>
<p>だけど、それはもう叶うことはない。<br />
佐々木くんの「そうじゃない」という声が脳裏に蘇り、耐えられなくなったわたしは机に伏して、さんざん、泣いた。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたと友達</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e5%8f%8b%e9%81%94/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:27:34 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[次の日の学校は、とても緊張した。 佐々木くんはそういうことを気にする人じゃない、というのはこれまでの会話から分かっていることだけど、わたし自身がどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。 あの後逃げるように立ち去ったこ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e5%8f%8b%e9%81%94/" title="続きを読むあなたと友達">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>次の日の学校は、とても緊張した。<br />
佐々木くんはそういうことを気にする人じゃない、というのはこれまでの会話から分かっていることだけど、わたし自身がどんな顔をして会えばいいのか分からなかった。<br />
あの後逃げるように立ち去ったことも災いしている。気にしてはいないながら、変だなと思ったのは間違いないだろう。<br />
自分の行動が悔やまれるが、あそこで何事もなかったように振舞うのもわたしにはできなかった。<br />
意を決して教室に入り、自分の席に向かう。やはり佐々木くんが先にいた。</p>
<p>「おはよう、未登録名前ちゃん★」</p>
<p>「お、おはよう」</p>
<p>佐々木くんがいつもどおり挨拶してくれたので、わたしもなんとか平常心を保つことができた。</p>
<p>「あ、そうそう★ボク、未登録名前ちゃんにお礼がしたくて★」</p>
<p>「お礼？」</p>
<p>「面白そうな本、いっぱい教えてくれたお礼★」</p>
<p>昨日の出来事が不意に蘇り、また顔が熱くなる気がした。<br />
でも彼が何も言わないなら触れないほうがいいだろう。<br />
わたしは気持ちを落ち着けるために、小さく息をついてから答える。</p>
<p>「そんな、いいよ。わたしが好きでやったことだから」</p>
<p>「でも、してもらってばっかりなのは、なんとなーくイヤだから★」</p>
<p>佐々木くんって頑固なところあるんだ。<br />
その頑固も、彼の優しさからくるものだと思うと納得もいった。</p>
<p>「分かった。そこまで言うなら」</p>
<p>「よかった★じゃあ、放課後楽しみにしてて★」</p>
<p>そんな佐々木くんからのお礼と聞いて、ちょっとだけ期待もふくらんだ。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>放課後になると、佐々木くんに連れられてある場所へとやってきた。</p>
<p>（物理部……？）</p>
<p>教室の入り口に貼ってある、手書きで書かれた張り紙を心の中で読み上げる。<br />
そういう部があるのは知っていたが、部室を見るのは初めてだった。<br />
授業では物理学をやっていないので、好んで部を設立するぐらい頭の良いひとたちがいるんだ、と思っていたが、まさかそれに佐々木くんも関わっているとは。</p>
<p>「こんにちは★」</p>
<p>佐々木くんがドアを開けて挨拶すると、中から返事があった。</p>
<p>「やあまぐろくん。こんにちは」</p>
<p>「こんにちは！」</p>
<p>そこにいたのは白衣を着た、りす？くま？のような外見の人と、赤い髪を二つに結った女の子。<br />
二人は真ん中に置かれた実験台を囲んでいる。上にフラスコやら試験管があることから、なにかの実験をしていたらしい。</p>
<p>「おや、そちらのお嬢さんは？」</p>
<p>りすのようなくまのような人に視線を向けられ、緊張のあまり萎縮する。<br />
この人、大変かわいい見た目をしているけど、声は低くて男前なので不思議な感覚だ。<br />
戸惑っていると、佐々木くんが代わりに紹介した。</p>
<p>「こちら、未登録名前ちゃんです★今日はいつものお礼に、物理部を体験してもらおうと思いまして★」</p>
<p>「ほう。君がそうなのか」</p>
<p>そう、ってなんだろう。<br />
疑問符を浮かべていると、赤い髪の子がこちらに走り寄ってきた。</p>
<p>「初めまして、安藤りんごと申します！あっちはりすくま先輩。あなたのことはまぐろくんから聞いてますよ」</p>
<p>「聞いてる、って、なにをですか？」</p>
<p>「最近話の合う女子ができて楽しいと」</p>
<p>「えっ」</p>
<p>「りんごちゃん★」</p>
<p>佐々木くんが焦ったように安藤さんの名前を呼ぶ。<br />
安藤さんは本当のことでしょ、と笑っているけれど、わたしは笑えなかった。悪い意味じゃなくて、突然の嬉しい出来事に、逆になにも考えられなくなったのだ。</p>
<p>「恥ずかしがることはないよ。別に悪いこと言ってるわけじゃないんだし」</p>
<p>「そういうことは、自分から言いたかった、から★」</p>
<p>「なんだね。言っていなかったのか」</p>
<p>「ダメだよまぐろくん。そういうことはちゃんと伝えなきゃ」</p>
<p>「そうだけどー……★」</p>
<p>そのやり取りを見ていたわたしは、思わず噴出していた。</p>
<p>「未登録名前ちゃん？」</p>
<p>「あ、ごめんね。佐々木くんがいじられてるのって新鮮で」</p>
<p>また佐々木くんの新たな一面を覗けた気がして、なんだか嬉しかった。<br />
すると安藤さんが、</p>
<p>「よかった。緊張がとけたみたいですね！」</p>
<p>やっぱり悟っていたようで、わたしににこりと微笑みかけてくれた。<br />
照れくさかったけど、わたしも笑顔を返すことができた。</p>
<p>「では、改めて！」</p>
<p>「ようこそ物理部へ」</p>
<p>「歓迎する、よ★」</p>
<p>「はい。よろしくお願いします！」</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>楽しい時間はあっという間で、最終下校時刻をすぎてしまった。<br />
今日は安藤さん……いや、りんごちゃんが部室の鍵を返す当番だというのでりすくま先輩がついていって、佐々木くんがわたしを送ってくれることになった。<br />
もちろん、最初は申し訳ないから断ったんだけど、三人の猛烈な心配によりわたしが折れたのだった。</p>
<p>「今日は、どうだった？」</p>
<p>「すごく楽しかったよ。本当にありがとう」</p>
<p>以前なら佐々木くんと並んだだけで、恥ずかしくてまともに顔も見られなかったのに、自然に会話ができる今が、とても不思議で、心地よい。</p>
<p>「それはよかった★ちょっと強引だったかな、って心配もしてたんだ★」</p>
<p>「そうなの？全然そんなふうに思わなかった」</p>
<p>「ならありがたい★」</p>
<p>佐々木くんが安心したような声で笑った。<br />
――わたしは、また一つ気づくことがあった。<br />
佐々木くんが見えなくなるとき、それは彼が笑っているときだと思ったが、物理部にいたときの佐々木くんは、終始きちんと見えていた。<br />
そればかりか、わたしと話していてもかすむことがなくなった。<br />
一体いつからだろう。謎はますます深まるけれど、見えるということはきっと良いほうに転じているんだろう、と考えることにした。</p>
<p>「よかったら、またおいでよ★未登録名前ちゃんならいつでも歓迎、だよ★」</p>
<p>「ありがとう。わたしもまた行きたいって思ってた」</p>
<p>みんなに会いたいというのもあるけれど、佐々木くんがきちんと見える場所にいたい、とも思っていた。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたとの違い</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:24:29 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[学校に向かうのが楽しみになっていることに気づいた。 それまで楽しくなかったわけでないけど、今にして思うと、どこかなんとなくで過ごしていたような気がする。 佐々木くんと話すようになって、そのなんとなく過ごしていた日常が色づ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84/" title="続きを読むあなたとの違い">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>学校に向かうのが楽しみになっていることに気づいた。<br />
それまで楽しくなかったわけでないけど、今にして思うと、どこかなんとなくで過ごしていたような気がする。<br />
佐々木くんと話すようになって、そのなんとなく過ごしていた日常が色づき始めた。<br />
――相変わらず、佐々木くんがかすむことはあるけれど。<br />
今は、佐々木くんのことがもっと知りたい。そう、思うようになっていた。</p>
<div style="height:80px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「佐々木くん、おはよう」</p>
<p>今日は自分から声をかけてみた。<br />
佐々木くんは一人でけん玉をやっていたが、わたしの声でこちらを向いて、おはよう未登録名前ちゃん、と笑いかけてくれた。</p>
<p>「あ、そうそう★」</p>
<p>「なに？」</p>
<p>「この間教えてもらった本、すっごく面白かったよ★すっかりはまっちゃって、読み終えてしまった★」</p>
<p>「すごい、早いね」</p>
<p>佐々木くんに本を教えたのが二日前。<br />
文庫本サイズで長くないとはいえ、速読もできるなんてやっぱり佐々木くんは多才な人だ。</p>
<p>「それで気づいたんだけど、このお話って『消えない音色』とリンクしてるよね？」</p>
<p>それに気づくためには、しっかり内容を把握していないといけない。<br />
ということは、佐々木くんはそこまで読み込んでいるということだ。<br />
わたしは嬉しくなって大きく頷く。</p>
<p>「そうなんだよ！前作の『消えない音色』と、今回の『Calling』って、舞台が同じで、時系列でいうと今回のほうが前に来るお話なんだって」</p>
<p>「なるほど、どおりで★」</p>
<p>「わたし、前作の世界観すごく好きだったから、それに気づいたときすごく嬉しかったんだ。あらすじにも書いてないし、雑誌の紹介とかもないから――」</p>
<p>そこで、わたしは言葉をとめた。<br />
しまった。いくら嬉しいからって、一人で盛り上がって鬱陶しいって思われたかもしれない。</p>
<p>「あ、ご、ごめんね……いきなりまくし立てて」</p>
<p>でも、佐々木くんはにこっと笑った。</p>
<p>「気にしない、よ★好きなものの話って、誰でもそうなるしね★もちろん、ボクも」</p>
<p>――佐々木くんがかすむことはなかった。</p>
<p>「ありがとう」</p>
<p>わたしは、あることに気がついていた。<br />
佐々木くんがかすむとき、それは彼が笑ったときに起こるものだと。<br />
けど、今笑っていても、ちゃんと見える。<br />
分かりかけたようで、やっぱり分からない。<br />
それでも佐々木くんと話しているのが楽しいから、わたしは微笑み返していた。</p>
<p>「ねえ★今日も図書室、行くのかい？」</p>
<p>「うん。わたしも読み終わったから、返して新しいのを借りに」</p>
<p>「そっか★じゃあ、ボクもついていっていいかな。あの本をもう一回読んだら、次のを借りたくて。よかったらまた教えてほしいんだ★」</p>
<p>「いいよ。行こう」</p>
<p>そんなに気に入ってくれると、わたしも勧めたかいがある。<br />
佐々木くんとの距離も埋まっていく感じがした。<br />
だって、放課後になって教室を出るときの視線も、あまり気にならなくなっていたから。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>図書室には相変わらず人がいない。そのぶん静かでじっくり本を選ぶことができるけれど、もう少し人が増えてほしいなとも思う。<br />
今日は受付カウンターに司書さんがいたので、先に本を返却してわたしたちは棚に向かった。<br />
佐々木くんにいくつか本の紹介をすると、彼はどれも興味深そうに聞いてくれた。</p>
<p>「ところで未登録名前ちゃんは、次はどんな本を借りるの？」</p>
<p>一通り紹介を終えると、佐々木くんが尋ねた。<br />
そうだった、楽しくて忘れかけていたが、今日はわたしが借りにきたんだった。</p>
<p>「もう目星はつけてあるんだよね」</p>
<p>「そうなんだ★」</p>
<p>話しながら、借りたい本のある棚に移動する。<br />
ジャンルでいうと、前回と同じくファンタジーもの。高いところにあったので、思い切り腕を伸ばした。</p>
<p>「これが面白そうだなって気になって、て……わ！」</p>
<p>思ったより高くて手が届かず、よろめいてしまった。<br />
転ぶと思い目をつぶったが、わたしの体はなにかに支えられた。</p>
<p>「大丈夫？」</p>
<p>佐々木くんの声が耳元で聞こえた。<br />
目を開けて、彼が受け止めてくれたんだと理解すると、音がするんじゃないかってくらいの勢いで顔が熱くなった。<br />
佐々木くんは男の子で、わたしよりも体つきがしっかりしているし背だって高い。現にわたしの体はすっぽり収まってしまっている。そんなの、当たり前の、ことなのに。</p>
<p>「あ、ご、ごめん！」</p>
<p>はっと我に返り、慌てて佐々木くんから離れる。</p>
<p>「気にしないで★」</p>
<p>朗らかに言う佐々木くんとは対照的に、わたしは恥ずかしさで顔も上げられない。<br />
佐々木くんは、いつの間にかわたしが取りたかった本をとっていてくれて、これかい？と差し出していた。<br />
お礼を言って、わたしは佐々木くんを見ないようにして受付で手続きを済ませると、</p>
<p>「あ、ありがとうね！それじゃ、また！」</p>
<p>返事も待たずに、わたしは図書室を出て行った。<br />
顔はまだ熱いし、心臓が口から出てきそう。<br />
はずみとはいえ、男の子に抱きしめられるなんて初めてのことで。<br />
わたしは家に帰るまで、さっきの出来事が頭から離れなかった。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたと本</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e6%9c%ac/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:22:23 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[朝、学校について自分の席に向かうと、すでに佐々木くんがいて、さっそくおはようと声をかけてくれた。まだ緊張はするけど、わたしもおはようと返事をした。 「そうそう、一時間目は自習だって★だから朝礼もナシ」 「そうなんだ。教え...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e6%9c%ac/" title="続きを読むあなたと本">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>朝、学校について自分の席に向かうと、すでに佐々木くんがいて、さっそくおはようと声をかけてくれた。まだ緊張はするけど、わたしもおはようと返事をした。</p>
<p>「そうそう、一時間目は自習だって★だから朝礼もナシ」</p>
<p>「そうなんだ。教えてくれてありがとう」</p>
<p>「いーや、構わんよ★」</p>
<p>通りで教室がいつも以上に騒がしいわけだ。<br />
わたしは教卓に置かれた自習プリントを取って、席に戻る。ふと見れば、佐々木くんは既にプリントを片付けてしまったらしく、机の上に畳んで置いてあった。<br />
さすがだなと思いながら、わたしも手早く終わらせ、後の時間は読書をしようと本を出した。本当は友達の席に行こうとしたのだけど、友達は片思い中の男子と近くになったと喜んでいたので、邪魔をしてはいけないと思った。</p>
<p>「あ、その本★」</p>
<p>顔をあげると、佐々木くんが少しこちらに身を乗り出していた。</p>
<p>「ボクも、その本好きなんだよね★」</p>
<p>「え、そうなの？」</p>
<p>なんだか意外だった。<br />
佐々木くんだって本くらい読むだろうけど、ゲームが好きという印象が強いせいか、わたしには新鮮に感じられた。<br />
佐々木くんは嬉しそうに言う。</p>
<p>「そのお話ね、ボクの好きなゲームのなかに出てくる昔話を書籍化したものなんだよ★」</p>
<p>「そうだったんだ。図書室にあったのを借りたから、そこまで知らなかったよ」</p>
<p>「未登録名前ちゃん、よく図書室行くの？」</p>
<p>「うん。でも、この学校の人はあんまり利用しないみたいだね」</p>
<p>そう言ってわたしは、本の奥付に貼られた貸し出し日付表を佐々木くんに見せた。<br />
最後に借りられた日は、わたしが借りた日を除くと四年前になっている。<br />
佐々木くんも、ホントだ、と少し残念そうに言った。</p>
<p>「未登録名前ちゃんは、その話面白いと思う？」</p>
<p>好きな本、それも好きなゲームのものとなれば、当然感想も気になるところだろう。</p>
<p>「うん、とっても。まだ半分くらいだけど、引き込まれるよ」</p>
<p>「そっかぁ★」</p>
<p>佐々木くんは嬉しそうだった。<br />
わたしも好きな本の話ができて嬉しかった。</p>
<p>「未登録名前ちゃんって、本が好きなんだね★」</p>
<p>「うん。趣味、っていえるほどじゃないかもしれないけど、好きだよ」</p>
<p>「じゃあ、放課後、一緒に図書室行こうよ★オススメの本、教えてほしい、な★」</p>
<p>もちろんわたしは驚いた。<br />
学校の人気者である佐々木くんが、地味で目立たないわたしを誘ったことに。</p>
<p>「ダメ？」</p>
<p>「う、ううん！わたしでよければ」</p>
<p>「さんきゅー★」</p>
<p>驚いたけど、好きな本の話ができるのは嬉しかったし、なにより佐々木くんの新たな一面を垣間見ることができたのは大きな進歩だと思った。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>教室を出るとき、隣に佐々木くんがいるせいかクラス中の視線がこちらに集まっていた。<br />
こんなに注目されることなんて今までなかったから、わたしは恥ずかしくて足早になる。佐々木くんはそれに気づいているのかいないのか、未登録名前ちゃんって足はやいね、などと暢気なことを言っていた。<br />
図書室に着くと、やはり利用者はいなかった。受付カウンターにいるはずの司書さんの姿も見えない。あまりに人がこないので、奥の部屋にいるのだろう。</p>
<p>「佐々木くんって、どんな本を読むの？」</p>
<p>「うーん、面白いと思ったら、なんでも読むよ★純文学からライトノベルまで」</p>
<p>「そ、それはすごいね」</p>
<p>わたしも本は好きだけど、そこまで色んなジャンルの本を読むことはできない。やっぱり佐々木くんは何でもできるから、そういうものにも造詣が深いんだろう。</p>
<p>「未登録名前ちゃんは、どんなのが好き？」</p>
<p>「わたし？ライトノベルはあんまり読まないけど、純文学は結構好きかな。後は、ファンタジーとか恋愛とか……あ」</p>
<p>「どうしたの？」</p>
<p>何とはなしに図書室を歩いていたが、新しく入荷した本のコーナーで足を止めた。</p>
<p>「森野ひびきの新刊だ！入ってたんだ」</p>
<p>わたしは思わずその文庫本を手に取った。<br />
この作家さんの本は全部持っているくらい大好きで、もちろんこの新刊も家においてある。<br />
利用者があまりいないながら図書室が本を入荷してくれて、なおかつわたしの好きな作家さんの本が入ったということは、とても嬉しかった。</p>
<p>「その作家さん、知ってる★」</p>
<p>「え！？」</p>
<p>わたしは驚いて佐々木くんを見た。<br />
彼は本を覗き込んで、</p>
<p>「この本は読んだことないけど、ちょっと前に出た『消えない音色』っていう小説を読んだよ★」</p>
<p>この作家さんは主に恋愛小説を書いていて、この本と『消えない音色』も同じく恋愛小説だ。<br />
だから佐々木くんのような男の子が読んでいることにわたしは驚きを隠せなかった。</p>
<p>「意外、かな★」</p>
<p>その表情を読み取ってか、佐々木くんが肩をすくめた。<br />
口元や、声音は笑っている。けど。</p>
<p>佐々木くんがかすんでいる。</p>
<p>「――うん、意外だった」</p>
<p>わたしは正直に言う。</p>
<p>「でも、とっても嬉しいんだ。この作家さんってあんまり知られてないから、知ってる人に会えてすごく嬉しい」</p>
<p>「分かるな、その気持ち★」</p>
<p>すると、かすんでいた佐々木くんが、また見えるようになった。<br />
佐々木くんの様子は先ほどとなにも変わらないのに。どうしてだろう。<br />
彼のこと分かりかけてきた気がするのに、やっぱりまだ、遠い。</p>
<p>「未登録名前ちゃん？」</p>
<p>呼ばれて、はっとした。</p>
<p>「あ、ごめんね。なんでもない。それより、もしこの作家さんの本が好きだったら、この新刊オススメするよ」</p>
<p>「本当？じゃあ、借りていこうかな★」</p>
<p>わたしは佐々木くんに本を渡して、受付に向かう彼の背中を追う。</p>
<p>今は、佐々木くんがかすむ理由は考えないでおこう。<br />
それよりも先に、佐々木くんのひととなりを知りたい。<br />
そうすれば、いつか理由も明白になってくる。そんな気がした。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたのとなり</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e3%81%a8%e3%81%aa%e3%82%8a/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:21:36 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[黒板に机と同じ数のマス目がかかれ、その中へランダムに数字を入れる。 その数字と、ひとりずつ引いたくじの番号と同じところが新しい席、ということになっていた。 わたしのクラスは男女の割合がほぼ半々なので、先生の「お前ら青春し...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%a8%e3%81%a8%e3%81%aa%e3%82%8a/" title="続きを読むあなたのとなり">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>黒板に机と同じ数のマス目がかかれ、その中へランダムに数字を入れる。<br />
その数字と、ひとりずつ引いたくじの番号と同じところが新しい席、ということになっていた。<br />
わたしのクラスは男女の割合がほぼ半々なので、先生の「お前ら青春しろよ！」という妙な計らいで男女が隣り合う席順になっている。<br />
そのおかげで大変なことになってしまった。<br />
わたしはちらっと隣を見る。<br />
佐々木くん。<br />
わたしは佐々木くんの隣になってしまったのだ。<br />
場所でいえば、わたしが窓側の前から三番目、佐々木くんがその隣。<br />
他の子たちが、親しい仲同士、あるいは意中の相手と近くになれたことで喜び合っているなか、わたしはとても気まずい思いをしていた。<br />
しかも先生が「残りの時間で親睦を深めろ」などとこれまた珍妙な計らいをするものだから、近くに特別親しい友達がいないわたしは、殊更どうしていいのか分からなかった。<br />
佐々木くんのことが嫌いなわけじゃない。ただ、そういった特異な出来事が関わっているせいで、どう声をかけていいのか見当が付かない。佐々木くんから話しかけられることもなかったし。<br />
いっそ本でも読んで、完全無視を決め込んでしまおうか。いや、でも、これからしばらくの間隣同士なのにそれは失礼というか、感じが悪いだろう。<br />
かといってなにか話題を持っているわけでもないし、</p>
<p>「ねえ★」</p>
<p>おそらくわたしの肩はぎくっと跳ね上がっただろう。<br />
ゆっくり隣を見ると、佐々木くんがにかっと笑っていた。</p>
<p>「未登録名前ちゃん、っていうんだよね？」</p>
<p>「え、う、うん」</p>
<p>いきなり下の名前を呼ばれたことにも驚いたけど、佐々木くんがわたしの名前を知っていることにも驚いた。</p>
<p>「これからよろしくね、未登録名前ちゃん★」</p>
<p>語尾を不思議に跳ね上げて、佐々木くんは言った。<br />
そういえば、佐々木くんの声をちゃんと聞くのは初めてだった。<br />
話しているのを見てはいるけど、声までは休み時間の喧騒にまぎれてこちらまで届かない。</p>
<p>「うん、よろしくね。佐々木くん」</p>
<p>楽しそうな喋り方をする佐々木くんに、わたしは少し気を緩めることができた。</p>
<p>「もしかして、周りに親しい人、いないのかな★」</p>
<p>さっきまで緊張した顔してたよ、と指摘され、わたしは言葉を詰まらせた。<br />
それもあるけれど、一番の理由が佐々木くんの隣になったから、とは口が裂けても言えない。<br />
わたしは二番目の理由を口にする。</p>
<p>「うん、実はそうなんだ。だからどうしようかなって思ってて」</p>
<p>「そっかあ★」</p>
<p>すると佐々木くんはこんなことを言い出した。</p>
<p>「じゃあ、これからはボクが話しかけにいくから、ヨロシク★」</p>
<p>「えっ」</p>
<p>戸惑いが声に出てしまった。<br />
すぐに改めようとしたが、佐々木くんは特に気分を害されたというふうでもなく、手を広げてまた笑った。</p>
<p>「まあ、今まで話したことってないしね★」</p>
<p>その時、わたしはまた、佐々木くんが見えなくなった。<br />
目の前にいるはずなのに。</p>
<p>「ごめんね、ちょっとびっくりしちゃって。でも、わたしも佐々木くんと話をしてみたいよ」</p>
<p>彼を前にして、こんなにすらすらと言葉が出てくる自分に驚くよりも。<br />
佐々木くんが見えなくなるのを、なんとかしたかった。<br />
初めて強く思った。</p>
<p>「じゃあ改めて、これからヨロシクね★未登録名前ちゃん★」</p>
<p>「うん。こちらこそ」</p>
<p>自然と、わたしは微笑んでいた。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>あなたが見えない</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%8c%e8%a6%8b%e3%81%88%e3%81%aa%e3%81%84/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:18:35 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[最初は、不思議なことがあるな、としか、思わなかった。 個性的な生徒が集まるこのすずらん中学校のなかで、わたしはあまり目立たないほうだった。 別に目立ちたいとも思わないし、友人にも恵まれているので、さほど気にしてはいなかっ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%81%82%e3%81%aa%e3%81%9f%e3%81%8c%e8%a6%8b%e3%81%88%e3%81%aa%e3%81%84/" title="続きを読むあなたが見えない">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>最初は、不思議なことがあるな、としか、思わなかった。</p>
<div style="height:80px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>個性的な生徒が集まるこのすずらん中学校のなかで、わたしはあまり目立たないほうだった。<br />
別に目立ちたいとも思わないし、友人にも恵まれているので、さほど気にしてはいなかった。<br />
それよりも気になることがあったから、かもしれない。<br />
同じクラスに佐々木まぐろくんという男子がいる。前髪で目を覆い隠し常にけん玉を首からさげているという、この学校の例にもれず個性的な外見をしている彼について、不思議に感じることがひとつある。<br />
佐々木くんを見ていると、時々、彼が見えなくなった。<br />
比喩表現ではなくて、本当にかすんでしまったように視界から消えてなくなるのだ。<br />
わたしの目が悪くなったのかと思ったが、彼が誰かと話している時も、相手のことは見えるのに佐々木くんだけかすむところを見ると、そういうわけでもなさそうだった。佐々木くんと同じクラスになってから、ずっと。<br />
本当に不思議なことがあるものだ、と、佐々木くんを見るたびにわたしは思った。</p>
<p>「未登録名前。また佐々木君みてるの？」</p>
<p>友達の声で我にかえる。知らず、わたしは佐々木くんを見つめていたらしい。</p>
<p>「まあ、気持ちは分かるけどね。佐々木君人気だし」</p>
<p>「あ、あはは……」</p>
<p>友達は、わたしが佐々木くんに恋してると思いこんでいる。いくら否定しても信じてくれないから、いつしか訂正そのものをやめた。<br />
確かに佐々木くんは性別問わず人気がある。<br />
勉強も運動もできて、なんでもそつなくこなしてしまうのに、それをはなにかけたりせず、誰にでも優しく接する。<br />
現に今も、佐々木くんの周りには人が集まっていて、楽しそうに談笑していた。<br />
――あ、まただ。<br />
また、佐々木くんだけ見えない。</p>
<p>「そんなに好きなら、告白しちゃえばいいのに」</p>
<p>友達はからかうように言った。<br />
告白。<br />
わたしが佐々木くんに告白することといえば。<br />
「時々佐々木くんが見えなくなります」<br />
……そんな話をしたところで迷惑にしかならないし、わたしだけのこの感覚を理解してもらえるとも思えない。<br />
そう。佐々木くんが見えなくなるのは、どうやらわたしだけのようだった。<br />
以前別の友達に、ちらっと「特定の誰かが見えなくなることってある？」と尋ねたら、そんなことあるわけないよ、と笑われたのだった。</p>
<p>それから予鈴が鳴り、生徒が各々の席につくころに先生がやってきた。<br />
今日の最後の授業、総合学習の時間を使って席替えをすると言っていたっけ。<br />
なかなか気に入っている席だから、あまり移動したくはないけれど。<br />
先生が説明をしている間、こっそり佐々木くんのほうを見た。<br />
今度はちゃんと彼が見える。ここからでは後姿しか見えないけど、顔が見えるはずの位置から見えなかったことを考えると、やっぱり不思議なことだとわたしは思った。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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