ぷよぷよ短編

万象流域

万象流転物事には、万事一つの流れが存在する。朝がくれば夜に向かうように、流れに沿って物事は進んでゆき、決して逆らうことはない。我々もその流れの一つであるがゆえ、抗うことなどできはしない。「難しいこと言ってるけど」机に頬杖をついて、はさも退屈…

呼吸を忘れる魚

かなかなかな。 蜩が鳴き始める夕暮れ、夏特有の分厚い雲が流れて、薄紫色の空があらわになる。かなかなかな。ボクらは二人で立っていた。その、こわいくらいきれいな薄紫色の空を見上げながら、学校から少し離れたバス停にいた。ボクらの他に待ち人はいな…

夏バテのせんぱい

「こんにちうわ暑っ!」 部室のドアを開けて、思わず叫んでしまった。今日は特に暑い日だと授業をうけながら思っていたが、物理部は教室とは比べものにならないほど蒸し暑かった。確かにここは日当たりはいいけど、窓の向かいはなにもないから…

勉強家のクルーク

「クルークって、ほんと勉強好きだね」 テスト前でもないのに、居残って勉強するのはクルークくらいだろう。ちなみに私はいままでアコール先生の手伝いをしており、やっと終わったので教室に荷物を取りに戻ってきたところである。クルークは、読んでい…

クリア

「あのさ、****」 「なんだ」「どこかの国の、昔話を思い出したんだ」「……」「その国ではね、死んだら魂が――」「どうでもいい」「よくないんだよ。ちゃんと聞いて。……魂がね、生まれ変わるんだって」「馬鹿な」「そうかもしれない。でも、信…

キミにおける熱量

じわじわと照りつける日差し。 彩度の高い青空。アスファルトに発生する逃げ水。ついに耐えられなくなった私は、電柱に手をついて足を止めてしまう。「大ッ嫌いだおまえなんか……!」「えっ」「え?」盛大な独り言のはずが後ろから返事があった。驚い…

雨に唄う花

「アヤさん!」 いきなりやってきたは、ずいと私の前に花を突きつけた。こやつにしてみれば差し出したつもりなのだろうが、花についた雫が私に飛ぶくらい勢いがよすぎた。「……なんだ、それは」顔についた雫を払いながら尋ねると、は顔を輝かせて言った。…

キスの日

「ぬわあ~疲れた~」 今日一日の授業を終え、私は机のうえに倒れこんだ。ようやく期末テストが終わったので、疲労感がどっと押し寄せる。「おつかれさま、ちゃん★」顔を横に向けて見上げれば、まぐろくんが立っていた。さして疲れたふうでもなく、いつも…

だいきらい

「ぐっもーにんちゃん★」 「ああうん素晴らしい朝だね天気はいいし鳥は囀るし風は爽やかだしね佐々木さえいなければの話だけど」「一呼吸でそれだけ言えるなんて、ちゃんってやっぱりすごーい★」「嫌味言ってるんだよ私はァ!」知ってるよ?と返されて、…

大好きです

「やっほークルーク!」 「うわっ!!……ぎゃふん!」私はクルークをぶん殴って気絶させた。仮にも級友にこんなことをするのはとーっても忍びないのだけれど、こうでもしないとあの方に会えないから仕方がない。ないったらない。「……お前は!毎度毎度…

ねむねむ

眠たい。非常に眠たい。 やはりお昼ご飯をお腹いっぱい食べたからだろうか。それともこの暖かい陽気のせいか。どちらでもいいがこの眠気を抱えたまま部活なんてする気がおきないので、私は物理部部室に唯一設置されているソファに沈みこんでい…

追いかけっこ哀歌

ボクの前で、とうとうとあいつのことを語るは嫌いだ。「いやあ、まぐろくんってほんっとすごい人だよねえ。何でもできて性格もよし。完璧とはまさにこの事だね」最初は他愛ない会話だった。教室に戻るとが残って勉強していたから、なんとなく話しかけてみた。…