ソニック短編

夢のさざめき

 溜まっていた家事を片付け終えると、私はソファに倒れこんだ。ここのところずっと忙しかったけれど、今日はようやく舞い込んだお休み。何もしないで家でゆっくりすると決めていた。 こんないいお天気の日にただぼうっとしているのも、ちょっともったいない…

淡いと恋とそのあいだ

「お腹へったなあ」「それ、人の家に来て言うセリフ?」 ボクは呆れながら肩越しに振り返って、後ろに座っているに言う。は悪びれる様子もなく、「だってテイルスはそんなことじゃ怒らないでしょ」とあっけらかんと笑ってみせた。いやま、そうなんだけど………

桜に嵐

 夕闇を幾らか通り過ぎた時間だった。家路についていた私は、足早に道を歩いていた。気が急いていて、だから、すぐに気づかなかったんだと思う。 ひゅうっと強い風が吹き抜けたので、思わず足を止め目をぎゅっと閉じた。再び目を開けた時、なにかが目の前を…

熱のありか

 まぶたの裏に差し込む光を感じて、私は目を覚ました。上半身をゆっくり起こせば、それは窓から溢れた月明かりだと知る。そういえば、昼間カーテンを閉めるのを忘れていた。というより、閉める元気がなかった。 久しぶりに風邪をひいたので、昼はエミーがお…

静寂に眠る

 耳のそばで、かたりと音がした。「……あ、起こしちゃった?ごめんね」 顔を上げれば、困った顔をしながら窓を閉めるがいた。いつの間にか日はすっかり落ちて、薄暗い部屋の中は冷たい夜風が満ちている。どうやらソファで眠ってしまっていたらしい。 とは…

ハートネス・ライアー

“ごめん!彼氏と仲直りしたから今日行けないや!” 約束の時間を30分過ぎたあたりで、なんとなくこうなるとは思ってた。思ってたけど、いざこの文字を目の当たりにすると、深い溜め息もでてしまう。友達が彼氏と喧嘩したのは一昨日じゃなかったか?それで…

キスの日

外国の人からすれば、キスなんて日常茶飯事で挨拶代わりのものなのだろうけど。れっきとした日本人であるわたしからすると、いまだに慣れない習慣なのであって。「つまるところ、恥ずかしいんですがソニックさん」「Uhmmm...そんなお前もカワイイけど…

過去も未来も

「ソニックが二人いる……」シャドウと見間違えたとかじゃなくて、ほんとうに、青いからだに赤い靴の針鼠が、二人いるのだ。けれど、一人は見慣れたソニックだけど、一人は背も小さく目の色も黒かった。唖然としていると、見慣れたほうのソニックが言った。「…

はじめまして

「なんだかすごいことが起こってるなあ」わたしはテレビを見ながら独りごちた。他人事のように言っているが、実際他人事なのでその程度の感想しか出てこない。テレビのニュースで大々的に報じられるほど、その出来事が遠いものに感じるものだ。でも、音速で走…

天使たちの罪

辺りが赤に染まっていた。比喩ではなく、真っ赤な炎が景色を埋めていた。人がたくさん倒れていた。ぴくりとも動かなかった。その奥で、一人の女の子が泣いていた。「どうして、どうして、」と繰り返していた。ここはどこ、と思った瞬間に、見覚えがあることに…

フェザー

--夢主幼女ある日の昼下がり、俺は久々にステーションスクエアに降りていた。日用品の買出しや最近のニュースなんかは、さすがにエンジェルアイランドでは手に入らないからな。しかし長くマスターエメラルドから離れているわけにもいかないので、さっさと用…

逆チョコ

珍しく街でナックルズを見かけたと思ったら、急にこちらに歩み寄ってきて。「ほらよ」ぽいっと渡されたなにか。「なにこれ?」「……チョコ」「なんで?」「……バレンタイン」え?チョコ?ナックルズが?わたしに?バレンタインだから?「どういう風の吹き回…