どうやら始まらない
「ハロー、ホラー映画は好きかい?」 深夜0時を過ぎたころ、鳴った電話を取れば開口一番謎の質問を投げられた。この声は男性のものだろうか、機械でも使っているのかしゃがれたようなノイズが走って判別つかないが、どちらにせよ完全にイタズラ電話だ。これ…
恐怖映画短編ゴーストフェイス
ラッピングはしなくていいか
「……は?」 私が放った言葉を受けて、ゴスフェは血がついたままのナイフを床に落とした。誰が掃除すると思ってんだ、血は処理が面倒だからうちには持ち込むなっていつも言ってるのに。眉間にシワを寄せていると、ゴスフェはつかつかと歩み寄った。「ちょっ…
恐怖映画短編ゴーストフェイス
咀嚼
ババちゃんの大きな体に包まれていると、まるで頭から丸呑みされるような錯覚を覚えて、いつも少しだけむずむずした。 でもババちゃんはわたしを、特に後ろからぎゅっとするのが好きみたいで、暇があればこうして抱きつくのだった。そのとき、すんすんと鼻…
恐怖映画短編ババ
ちいさなばけもの
生きたいと、思ったことはなかった。 かといって死にたいとも思わなかった。ぼくは生きているけど死んでいるし、どちらでもおんなじことだから、頭のなかのママの声を守れればなんだってよかった。 だから、あいつらが口にする言葉の意味なんか、ちっとも…
恐怖映画短編ジェイソン
知らぬ存ぜぬ虚無の味
強く、揺さぶられる。その瞬間わたしの喉から短い悲鳴があがり、それを見たフレディさんは嬉しそうに目を細めた。 わたしの体のあちこちは、フレディさんが与えてくれた熱ですっかりぐずぐずになってしまっていて、彼とわたしの境目なんかとっくになくなっ…
恐怖映画短編フレディ
焼け付いた瞳
思えば、マイケル・マイヤーズという男の声を、私は一度も聞いたことがなかった。 マイヤーズ家とは隣近所だったことから、彼の姿を見かけることは多かった。だが彼は、同い年の子どもたちが遊んでいても決して輪に入らず、また声を出しているところも見た…
恐怖映画短編マイケル
水を切る岸辺
13日の金曜日。 それはジェイソンが、最もママの声が聞こえる日なんだという。 だから、ジェイソンはこの日が来ると、朝から一人でどこかへ行ってしまう。普段は自分から出かけるなんてほとんどなくて、いつも、このお家でわたしと一緒にご飯を食べたり…
恐怖映画短編ジェイソン,フレディ
できれば夢なんかじゃなくて
ぼた、ぼた。 吐いた血が床に滴り落ちる。それでも私は、足を引きずり壁を伝いながら必死に歩いた。 ボイラー室は、薄暗かった。煙こそ漂っているが機械が動いている様子はなく、むせ返るような暑さも目を焼く炎も全く感じられない。音もなく、自分の足音…
恐怖映画短編フレディ
ファンタジック・シネマ
女の子が笑っている。サテンのリボンを付けた白いワンピースの女の子が、くるくる踊っては楽しげに笑っている。まだ小さな女の子は時々つかえて、そのたび照れくさそうにはにかんでいた。不意に女の子が振り返ると、こちらに向かって駆け出した。画面が切り…
恐怖映画短編フレディ
停滞の帳
ため息をつく。作業部屋にこもった熱気が汗を走らせ、仮面の内側に伝い落ちた。 どうにも手が進まない。煮詰まったみたいだ。 僕は蝋細工からナイフを離して机に置くと、裏口からこっそり外に出た。こういうときは、気分を少し変えてみよう。 すっかり夜…
恐怖映画短編ヴィンセント・シンクレア
万象の奇夜
自らの命を試し、そして死ななかったことは私の価値観を変えるに充分な事象であった。そして深く理解した。命はこの世で最も強く、そしてこの世で最も尊ぶべきものでなければならないと。 それらを簡単に捨ててしまう愚かな人間は、今一度学び、そして知る…
恐怖映画短編ジグソウ