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	<title>浮幽-Who you?- &#8211; 揺れる</title>
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	<title>浮幽-Who you?- &#8211; 揺れる</title>
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		<title>Section.05</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 07:31:59 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[Section.05 　女性と二人、並んで歩く。 　思った通り彼女の母親だった。これから見舞いに行く途中で、バスもそのために乗っていたのだという。 　娘は1ヶ月ほど前事故に遭い、それきり目覚めないのだという。つい先日まで...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/section-05/" title="続きを読むSection.05">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="huyu-title">Section.05</div>
<p>　女性と二人、並んで歩く。<br />
　思った通り彼女の母親だった。これから見舞いに行く途中で、バスもそのために乗っていたのだという。<br />
　娘は1ヶ月ほど前事故に遭い、それきり目覚めないのだという。つい先日まで救急病棟におり、状態がやや落ち着いたことから今日一般病棟に転室したばかりだったとか。バス停を往復していたのは、荷物を取りに一旦帰ったのが理由らしい。<br />
　オレも調べたことのある病院だったのだが、単にすれ違ってばかりで見つからなかった……ってのは肩透かしだが、真実ってのは案外そんなものか。</p>
<p>「でも、なんでオレを？」</p>
<p>　世辞にも有名人とはいえないし、こうして会ってみても、彼女のことも彼女の母親のことも覚えがない。<br />
　それでも、オレがなにか事情を説明する前に彼女の母親は「一緒に来て欲しい」と頼んできたのだ。<br />
　母親は、遠くを見るように緩やかに微笑んだ。</p>
<p>「以前見かけたんですよ、娘と二人で。今日のように誰かを助けていて」</p>
<p>　――子どもがボールを追いかけて、車にひかれてしまいそうなところを二人で見かけた。娘が声をあげようとしたとき、あなたが咄嗟に子どもを助け出した。娘はそれを見て感動して、それでずっと覚えていたのだ、と。母親は語った。<br />
　だから、彼女はオレを知っていた。今日までずっと、自分のことを忘れてしまってもオレのことは覚えていた。<br />
　覚えて、くれていたんだ。</p>
<p>「娘は、ずっと知りたがっていましたよ」</p>
<p>「なにを、です？」</p>
<p>　声がかすれた。<br />
　やっと届いた、知りたかったはずの真実。それなのに、聞くのが恐ろしいと感じている。<br />
　彼女はオレを覚えている。それなのに、オレは彼女を覚えていない。そんなオレに、彼女のことを聞く資格はあるんだろうか。仮に会ったとして、覚えていないオレを彼女は、許して、くれるんだろうか？<br />
　母親は、そこで初めてオレに顔を向け、にこりと笑った。</p>
<p>「あなたの名前。一体、どこの誰さんなんだろう？って……」</p>
<p>　――ベクターさん！</p>
<p>　その時、確かに思い出した。<br />
　彼女の声を。嬉しそうにオレを呼ぶ彼女の姿を。<br />
　にこやかで、悪戯っぽくて、でも時々、びっくりするくらい儚く笑う。</p>
<p>　そんな彼女を、オレは。</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「……着きましたよ」</p>
<p>　母親に促され、病院の一室にたどり着く。小さいながらも個室である。ゆとりのある家庭なのか、それとも症状の重さ故か。<br />
　いや、と首を振る。<br />
　オレは確認しに来たわけじゃない。彼女を、救うために来たんだ。<br />
　高鳴る心臓を押さえながら、息をつく。そして引き戸に手をかけ、ゆっくりと開けた。<br />
　小さな個室だった。正面に窓があり、右手に小さなテレビ台が、左手には壁に沿ってベッドがある。オレは、そこに横たわる人物の顔をそっと覗き込んだ。<br />
　ああ、間違いない。彼女だ。<br />
　ずいぶん痩せてしまっているが、確かに彼女が眠っている。<br />
　オレは、彼女の手を優しく握った。その手は温かく、生きていることを実感する。点滴が繋がれていて大きく動かせないのがもどかしかった。</p>
<p>「彼女の名前、は」</p>
<p>　後から続いてきた母親に、背を向けたまま問いかける。</p>
<p>「……未登録名前、と、言います」</p>
<p>　やっと。<br />
　やっと、名前が聞けた。<br />
　それなのに、なんでオレの声は喉の奥でつかえてるんだ。<br />
　開きかけた口の端から息が漏れて音にもならない。ようやく呼べる彼女の名前は空気に消えた。<br />
　ようやく、そう、オレは、ずっと彼女の名前を呼びたかったんだ。名前を呼んで、そうして応えて欲しかった。</p>
<p>　もう一度。<br />
　ベクターさん、と。</p>
<p>　なぁ、お前さんは今どこにいる。<br />
　約束通り見つけたんだぜ。本当の自分は怖い人かもしれないなんて、そんなのウソっぱちだった。もしお前がオレを忘れたんだとしても、お前さんが生きてる限り何度だって会えるんだ。</p>
<p>　お前がどんなに忘れちまっても。<br />
　お前が覚えてくれていたように、オレもお前を忘れたりなんかしない。<br />
　だから、もう一度、初めましてと言わせてくれよ。</p>
<p>「未登録名前」</p>
<p>　そのときだった。<br />
　握っていた手がかすかに動いた。息を呑む。眠る彼女を見つめると、目蓋が震えて、ゆっくりと開いた。<br />
　何度か瞬きをし、それからオレと視線を交わす。</p>
<p>「…………あなたは、」</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　よく晴れた青空だった。細い雲がたなびいて、太陽は木々や人の影をくっきりと映し出す。<br />
　病院の中庭はリハビリ中や見舞いの人で賑わい、子どものはしゃぐ声も聞こえる、穏やかな空間となっていた。<br />
　その中を、オレは一つの車椅子を押して歩いていた。座っているのはもちろん――</p>
<p>「いい天気だなぁ、未登録名前」</p>
<p>　未登録名前は空を仰ぎ見て、</p>
<p>「うん。すごくいい天気」</p>
<p>　深く息を吸って、吐いた。</p>
<p>「こんなふうにまた息が吸えるようになるなんて、思わなかったなぁ」</p>
<p>「やっぱ幽霊ってのは、息もしねぇのか？」</p>
<p>「しない、っていうか、吸ってる感覚なかったね。ぜんぶ夢の中みたいで」</p>
<p>「夢の中、か」</p>
<p>「モヤがかかったみたいで、あんまりはっきり見えてなかったの。感覚だってもちろんないし、声とかも壁越しに聴いてるみたいだった……」</p>
<p>　少しずつ思い出していくように、未登録名前は声のトーンを下げていく。オレが想像していた以上に、幽霊の状態ってのは不安定なものだったらしい。<br />
　それでもこうして未登録名前の記憶が継続しているのは、奇跡ってヤツなのかもしれない。</p>
<p>「ベクターさん」</p>
<p>　未登録名前がこちらを見上げて、名前を呼んだ。</p>
<p>「どうした、未登録名前」</p>
<p>　一度車椅子を止めて、呼び返す。未登録名前は少しだけくすぐったそうに笑い、あのねと切り出した。</p>
<p>「そういえばベクターさんに、まだ報酬を払ってなかったなって」</p>
<p>「ああ」</p>
<p>　幽霊のときに交わした約束。無事に見つけ出すことができたら、未登録名前の一番だと思うものを貰う、そんな内容だった。<br />
　正直なところ、報酬を気にかけている未登録名前への建前という意味でもあったんだが――</p>
<p>「それなら、とっくに貰ってるぜ」</p>
<p>　そう言うと、未登録名前は思い切り目を丸くした。</p>
<p>「私、なにもあげてないよ」</p>
<p>「いいや、貰ったさ」</p>
<p>「うーん覚えてないや……どれだろ？」</p>
<p>「そいつは言えねぇな」</p>
<p>「えー！教えてよ、ベクターさん！」</p>
<p>　未登録名前の呼び声は、確かに空気を震わせて、オレの胸に響いていた。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<title>Section.04</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/section-04/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 07:29:54 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[Section.04 　事務所に戻ったオレは、ドアを閉めるのも忘れ飛び込む勢いで机に向かい、パソコンの電源を入れながら資料の束を引っ張り出す。チャーミーが「どうしたのさ！」と慌ててドアを閉めていたがお構いなしに、隣で未だ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/section-04/" title="続きを読むSection.04">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="huyu-title">Section.04</div>
<p>　事務所に戻ったオレは、ドアを閉めるのも忘れ飛び込む勢いで机に向かい、パソコンの電源を入れながら資料の束を引っ張り出す。チャーミーが「どうしたのさ！」と慌ててドアを閉めていたがお構いなしに、隣で未だ困惑している彼女に向けて質問をする。</p>
<p>「どんな人だった？性別は？」</p>
<p>「え、と」</p>
<p>　チャーミーとエスピオが顔を見合わせて何か言いたそうにしたが、すぐに察したらしく様子を見守っていた。</p>
<p>「女の人、だった。けっこう年上」</p>
<p>「格好は？」</p>
<p>「上は……紺色のカーディガン。下はロングスカート、かな」</p>
<p>「何か持ってたか？」</p>
<p>「買い物かご……ううん、紙袋？どこかのお店の帰り、かな」</p>
<p>「他に誰か一緒にいたか？」</p>
<p>「い、いなかった。一人」</p>
<p>　彼女から発せられる言葉一つ一つを、手近なメモ帳に書き記していく。解釈違いのないように出来るだけ彼女の表現をそのまま写した。<br />
　そして、これが最大の手掛かり。</p>
<p>「顔はどんなふうだった？」</p>
<p>　彼女はなぜか俯きがちに、</p>
<p>「一瞬で、よくわからなかった……バスに乗るところだったし……」</p>
<p>「いや、十分だ」</p>
<p>　彼女から聞いた情報をメモにまとめ、資料の束から近隣のバスの路線図を取り出した。<br />
　あまり洒落っ気のない格好で買い物帰りであるなら、観光や遊びの線は薄い。なおかつ1人でバスに乗るところというならば、おそらくは日用品の買い出し。とすると、その路線でもさほど遠くない場所に住んでいると推定できる。かかっても、せいぜい15、20分程度だろう。<br />
　これで、だいぶ絞り込める。あとはその人物に彼女のことを聞き出せれば――</p>
<p>「ベクターさん」</p>
<p>　それは、今まで聞いたことがないほど、弱々しい声だった。</p>
<p>「私、やっぱりこのままでいいよ……」</p>
<p>　机の端から、紙が落ちる。</p>
<p>「幽霊のままでいい。本当のこと、知らないでいいよ」<br />
　<br />
「何言ってんだ！あとちょっと、あとちょっとでお前さんのことが分かるんだぜ！」</p>
<p>　このままでいいなんて、そんな訳がない。生きてるか死んでるも分からない、仮に生きてるのだとしても危険な状態に違いないはずだというのに、放っておくには危険過ぎる。<br />
　それでも彼女は、俯いて首を振った。</p>
<p>「でも、私、怖いんだよ。自分のこと知るの。もし酷い人間だったら？もしとっくに死んでたら？今このときの記憶だって、どうなるか分からないんだよ」</p>
<p>「そんなの、調べてみなきゃ分からねぇ。まだ希望は」</p>
<p>「分かったら、きっとベクターさんは私のこと嫌いになるし、私だってベクターさんのこと分からなくなるかもしれない。それなら……」</p>
<p>「ばか言え！決まったワケじゃねえんだ、可能性は最後まで考えねぇと……！」</p>
<p>「……どうせ……」</p>
<p>　俯いていた彼女がキッと顔を上げ、</p>
<p>「どうせ！私の気持ちなんてわかんないよ！！」</p>
<p>　彼女の渾身の叫び声が辺りにこだました。しんと静まり返り、オレも思わず言葉を失う。<br />
　気持ち。彼女の気持ち。<br />
　そうか、オレは真実を追うばかりで、コイツの心を考えてやれなかった。幽霊になって、記憶もなくして、声も届かないで。<br />
　一番不安なのは、彼女自身だというのに。</p>
<p>「……いま、」</p>
<p>　その静寂を破ったのは、チャーミーだった。</p>
<p>「おんなのこの、こえが」</p>
<p>　瞬間、オレはやっと気づいた。<br />
　一体『何が』こだましたのかを。</p>
<p>「私、」</p>
<p>　短い声にはっとする。しかし、彼女は視線を合わせる間も無くどこかへ飛び去ってしまった。</p>
<p>「待っ――」</p>
<p>　追いかけようと一歩踏み出した。なのに、足はそれ以上動かなかった。爪先がドアに向かったまま、氷のように張り付いている。<br />
　オレに彼女を追いかける理由があるのだろうか。真実にばかり気を取られ、本当に大事なことを蔑ろにしたオレに。それに、これは彼女から頼まれたことだ。その彼女がいいと言うのなら、もうオレにはなんの関わりもないんじゃないか。<br />
　ここで終わりにしても、誰も、何も、知りようがないことだ。</p>
<p>「……少なくとも、」</p>
<p>　背中に投げかけられたのはエスピオの声。</p>
<p>「自分が知るベクターは、何かを途中で投げ出したりしない」</p>
<p>　氷が溶けるのは一瞬だった。<br />
　振り返りもせずに事務所のドアを開けて足を動かした。彼女の行き先にアテがある訳ではなかったが、探す手立ては一つある。<br />
　彼女自身を探し当てることだ。<br />
　先程見た路線を思い出しながらバス停へ向かう。時刻は午後3時過ぎ。本数が減り出す前に、あの人物を探し出さなければ。<br />
　おそらく、彼女にもう時間はない。声まで聞こえるようになってしまった。</p>
<p>「……！！」</p>
<p>　バス停にたどり着くと丁度バスが止まっており、そこに彼女が言っていた特徴の人物が降りて来ていた。<br />
　なんてタイミングだ、これを逃したら次はない。</p>
<p>「あっ！」</p>
<p>　突然、背後で音がした。ちらと振り返ると、老婆が地面に座り込み、おろおろと杖を探している。通行人は忙しそうに通り過ぎていくだけで、手を貸す人はいそうにない。<br />
　バスが動き出す。例の人物が人混みに紛れる。辛うじて横顔がまだ見える、今追いかければ、まだ。</p>
<p>「……おい、ばあさん大丈夫か？」</p>
<p>　しゃがみこんで杖を差し出し、老婆を立ち上がらせる。</p>
<p>「ありがとう、ごめんなさいね。杖が引っかかってしまって……」</p>
<p>「気をつけろよ。ここの通りは人も多いからな」</p>
<p>「ええ、本当にありがとう」</p>
<p>　老婆が歩き出したのを見届けてから、オレはバス停に視線を向ける。とっくにバスは行ってしまい、あの人物の姿もない。<br />
　……これでよかったんだ。人はまた探せばいい。目の前で困っている人を放っておくのも気がかりだ。<br />
　今からでも追いかけてみれば、まだ間に合うかもしれない。そう思ったオレは再び歩き出そうと――</p>
<p>「あの」</p>
<p>　ぱっと振り返り、ぎょっとした。年配の女性。紺色のカーディガン。ロングスカート。それに何より……その顔は。</p>
<p>「お優しいのですね」</p>
<p>「あ、いや、」</p>
<p>「急にごめんなさい、少し、お話しをさせてくれませんか？」</p>
<p>　女性は柔らかく、どこか寂しそうに微笑んでいた。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>Section.03</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/section-03/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 07:29:30 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[Section.03 　この事件の要点は大きく分けて二つある。 　一つは、「今のところオレにしか見えない」という点。これによりオレと縁のある人物だから見えるという仮説が立てられるが、オレ側に見覚えがない点を省みると、女が...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/section-03/" title="続きを読むSection.03">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="huyu-title">Section.03</div>
<p>　この事件の要点は大きく分けて二つある。<br />
　一つは、「今のところオレにしか見えない」という点。これによりオレと縁のある人物だから見えるという仮説が立てられるが、オレ側に見覚えがない点を省みると、女が一方的にオレを知っているパターンが有力だ。その場合、オレとの関連性は女が思い出さない限りは不明。この点はもう少し情報を得るまでは保留にする。<br />
　もう一つは、「生きてはいるが死に近づきつつある」点。エスピオが最近になって幽霊の気配を感じるようになったところから推察した情報だが、オレが思うに今のところ一番核心に近い気がする。まぁ根拠は薄いが、ゼロから捜索するよりかはマシだろう。</p>
<p>　そういうわけで、オレは女を連れて街の病院を訪ね歩いた。死が近い……とあれば集中治療室に入っている患者が怪しいが、何の接点もない人物がいきなり訪ねて面会できる訳がないので仕方なしに一般病棟を周るが、大きな総合病院ならまだしも規模が小さければどうしても行動が目立つため深追いができない。</p>
<p>　まあつまり、詳しく調べることができなかったオレたちは、結局女の手掛かりを得ることができなかったというわけだ。</p>
<div style="height:80px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「……まさか、一日歩き通してコレとはなぁ」</p>
<p>　ビル街の隙間にあった公園のベンチで、ぐったりと首を落とした。その隣で、女が申し訳なさそうに縮こまっているのが伺える。</p>
<p>「……ごめんね。私が自分の顔、分かればよかったんだけど」</p>
<p>　初めて会った時から言われていたことだが、こいつは自分の顔を覚えていないらしい。もちろんのこと鏡にだって映らないので、オレが直に見るしか探す手立てがない。<br />
　確かに、幽霊であるこいつが壁抜けなりなんなりして自分の体を探せれば手っ取り早い話だった。それができりゃぁそもそも頼む必要だってない。<br />
　そんな言葉に、オレが返せるのはコレしかない。</p>
<p>「……さて、ノド乾いたな。なんか飲むか？」</p>
<p>　女を見ると、話しかけられていると思っていなかったらしく、しばしの沈黙のちオレを見た。</p>
<p>「……え、え？私飲めないよ」</p>
<p>「いいって、こういうのは雰囲気だ」</p>
<p>　笑いかけてやると、女は照れくさそうに視線を外して「……いちごミルク」と言った。<br />
　そこらのジューススタンドでコーラといちごミルクを買って戻り、女の隣に置く。女がためらいがちにそれを眺めるので、オレは苦笑してコーラを飲んだ。</p>
<p>「どっかの国の風習だそうだ。長旅に出たヤツが飢えないための祈りなんだとよ。陰膳……とか言ったか」</p>
<p>「色んなこと、知ってるね」</p>
<p>「まーな。知識は持ってた方が探偵としちゃ得だぜ。今みたいに役立つこともある」</p>
<p>　女は目を丸くし、それから照れたように破顔した。</p>
<p>「私が見えるのが、ベクターさんでよかったなぁ」</p>
<p>　そう呟くと、女は置かれていたジュースカップを両手で包む。大事そうに、慈しむように、細い指先が輪郭をなぞった。<br />
　その光景は、なぜか、胸の奥をくすぐられるような感覚を誘った。</p>
<p>「……あ、」</p>
<p>　不意に女が顔を上げる。はっとしてオレも視線をなぞると、女はぱっと駆け出していってしまった。</p>
<p>「お、おい！どこ行く気だ！？」</p>
<p>　慌てて女の後を追うと、女は公園を出たところで立ち止まってキョロキョロと周囲を見渡していた。まるで息切れを起こしているかのように、目を見開いて眉根を寄せている。</p>
<p>「いま、いま、」</p>
<p>　その時、オレは予感した。女が次に何を言うのか、確信に満ちた予感。</p>
<div style="height:80px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「……見覚えある、ひとがいた」</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>Section.02</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/section-02/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 07:28:49 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[Section.02 「ねえべくたー。ゆうれいって、ほんとにいるのー？」 　依頼のないある日のこと。……誰だいつものことって言ったヤツは。とにかくある日だ。ソファに座ってテレビを見ていたチャーミーが不意にオレのほうを振り...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/section-02/" title="続きを読むSection.02">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="huyu-title">Section.02</div>
<p>「ねえべくたー。ゆうれいって、ほんとにいるのー？」</p>
<p>　依頼のないある日のこと。……誰だいつものことって言ったヤツは。とにかくある日だ。ソファに座ってテレビを見ていたチャーミーが不意にオレのほうを振り返り首を傾げた。その横で、話の女幽霊がチャーミーの頭を叩いているのが見えるんだが……並んでテレビ見てたってのに気づかねえのか？だから幽霊なんだろうけどよ。<br />
　女は見ないようにして、オレはチャーミーをジロリと睨む。</p>
<p>「んだよチャーミー。オレを疑ってんのか」</p>
<p>「うーん……やっぱみえないからさー」</p>
<p>「仮に嘘だとしたら、空間に向かって話しかけるやべぇヤツ認定してるってことでいいのか？ああ？」</p>
<p>「うわぁそこまでいってないじゃーん！えすぴおもさ、へんだっておもうよね？」</p>
<p>　チャーミーは、壁を背に精神統一しているエスピオに向かって飛んでいく。エスピオは目を閉じていたが会話は聞いていたらしく、瞼を持ちあげるとふむと唸った。</p>
<p>「まあ……確かに妙ではある」</p>
<p>「エスピオまで疑うのかよ！」</p>
<p>「そうではない。ここ最近何かの気配を感じるのだ。姿形は見えぬ故、それがベクターの言う幽霊なのかは断言できんが」</p>
<p>「「えっ」」</p>
<p>　まさか、エスピオがコイツの気配を察知してるとは。これには女も目を丸くし、チャーミーと同時に感嘆した。気ィ合うなお前ら。<br />
　しかし忍者であるエスピオなら見えない相手の気配を探ることくらい容易だろう。むしろ今まで感じなかったのが不思議な――まてよ。</p>
<p>「エスピオ。最近ってのは、いつからか分かるか？」</p>
<p>「む？そうだな……一週間くらい前から、だろうか」</p>
<p>「そうかありがとよオレ様はちょっくら出てくるぜ」</p>
<p>「べくたー？どうしたのさ！」</p>
<p>　チャーミーをスルーし、オレは事務所のドアを開ける。その一瞬肩ごしに女に目配せして着いてくるよう促すと、女は少し躊躇した後ふわりとオレの背中にくっついた。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「本当に、ベクターさんどうしたの？」</p>
<p>　やってきたのは事務所のあるビルの屋上。人目を気にせずコイツと話せるのはここくらいだろう。<br />
　フェンスを覗き込めば、陰った日差しの中に立ち並ぶビル群が望めた。その隙間を多くの人、車が行き交う。何も変わらない、当たり前の日常風景。その中から、こいつは溢れ落ちたんだ。<br />
　本人のあずかり知らないうちに。</p>
<p>「おかしいと思わねえか」</p>
<p>「なにが？」</p>
<p>「お前さんが事務所に居着くようになって大体一ヶ月。エスピオがお前さんの気配を感じるようになったのが一週間前。エスピオの能力は知ってんだろ？それを以って気配が分かるようになるまで、こんなにタイムラグがあるのがおかしいってんだよ」</p>
<p>　むしろいの一番にエスピオが見ていてもおかしくはない。それなのに見えるのはオレだけで、最近になって気配が……そうだな、強くなったと考えると合点がいく。幽霊として気配が強くなる、ということは、つまり、だ。</p>
<p>「お前さん、朗報だぜ」</p>
<p>「え？」</p>
<p>「オレ様の推理が正しけりゃ、お前さんはまだ生きてる」</p>
<p>　幽霊、即ち、死に近付いていると考えればこれまでの辻褄が合う。だが同時に危険な状態でもあると言える。何らかの事故か病気かを抱えていて、何かの拍子に魂みたいなもんが抜けちまい、肉体の状態が悪化したのだとしたら。<br />
　ま、オカルトにゃ詳しくねえから単なる憶測だが、今のところ否と言い切るだけの材料もない。それなら急ぐしかないな。<br />
　考えを纏めていると、「ちょ、ちょっと待って」と女が手をあげた。</p>
<p>「あの、私全然ついてけてないんだけど、どういうこと？」</p>
<p>「あー要するにだ。生きてるかもしれねえお前さんを探してやるっつってんだよ」</p>
<p>　すると女はあんぐり口を開け、</p>
<p>「い、いいの？お金にならないかもしれないのに」</p>
<p>「人ひとり見殺しにするほうが寝覚めが悪ぃんだよ文句あっか」</p>
<p>「ない、けど」</p>
<p>「だああまだるっこしい！じゃあこうしろ。お前さんの目が覚めたら、お前さんが一番だと思うお宝を寄越しな。宝石でもいいし、美味い飯でもいい。有形無形は問わねえ。それなりの理由がなけりゃ受け付けねえけどな」</p>
<p>「ベクターさん」</p>
<p>「そうと決まりゃ調査開始だ！忙しくなるぜ、お前さんにも手伝ってもらうからな！」</p>
<p>　事務所に戻ろうとすると、するりと腕が伸ばされた。女の腕が、オレの腰に回されていた。直接触れているわけでもないのに、何故か、その場から動けなくなった。</p>
<p>「ありがとう、ベクターさん。やっぱりあなたにお願いしてよかった」</p>
<p>「……おう」</p>
<p>　いつもの、オレ様の頭脳にかかれば、なんて軽口は、喉の奥に引っかかって出てこなかった。</p>
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		<title>Section.01</title>
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		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 07:28:20 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[Section.01 「こないだの収入がこれで……電気代と水道代とガス代がこんだけで……」 「ベクターさんベクターさん」 「かあーっ！今月も食費切り詰めねえと厳しいな……」 「ベクターさーん」 「あーあ、たまには肉のある...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/section-01/" title="続きを読むSection.01">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="huyu-title">Section.01</div>
<p>「こないだの収入がこれで……電気代と水道代とガス代がこんだけで……」</p>
<p>「ベクターさんベクターさん」</p>
<p>「かあーっ！今月も食費切り詰めねえと厳しいな……」</p>
<p>「ベクターさーん」</p>
<p>「あーあ、たまには肉のある青椒肉絲が食いてえよなァ……っつか最後に肉食ったのいつだったか……」</p>
<p>「ベクターさんってばー」</p>
<p>「だああうるせえ！！！オレ様は今忙しいんだよ！！」</p>
<p>　帳簿から顔をあげると、ロコツにつまらなさそうにしている女と目が合う。女は口を尖らせると、机の上で頬杖をついた。……ついた、ってのは、間違いかもしれねえ。</p>
<p>「だって、この間っから全然構ってくれないんだもん。さみしーじゃん」</p>
<p>女は頬杖をついたまま、空中に寝そべって足をばたつかせた。その体は半透明に透けている。</p>
<p>「お前さんに構ってるヒマなんざねーよ。一昨日来やがれ」</p>
<p>「え！！一昨日来たら構ってくれるの！？」</p>
<p>「例えだアホ！」</p>
<p>　思わずゲンコツを一発お見舞いするが、その拳は当然のごとく体をすり抜ける。女はわざとらしく……実際わざとだが、痛い痛いと転げ回った。<br />
　この女が探偵事務所に住み着いたのは、ついひと月ほど前になる。名前も住所もこうなる過程で全て忘れてしまったらしく、どうしてこうなったのかも覚えていないという。しかしどうしても自分のことが知りたいってんで、街を適当にうろついて見つけたこの探偵事務所に入り込んできたワケらしいんだが……さすがにこのオレ様の天才的頭脳をもってしても、それだけの情報じゃ絞り込むのは無理がある。それに、こりゃ一番重要だが、死んだヤツから取れる報酬なんかあるわけねえ。そう考えりゃ、諦めるまで放置ってのが妥当だぜ。</p>
<p>「まったく……面倒なことばっかでちっとも金になりゃしねえ」</p>
<p>「お金大好きだねえベクターさん」</p>
<p>「あったりまえよ。この世は金が全てだからな」</p>
<p>「ふーん、そういうものかー」</p>
<p>「つかお前さんの方こそ、なんでオレにこだわってんだよ。探偵なんか他にもいるだろ」</p>
<p>　まあ、この事務所でコイツが見えるのがオレだけってあたり、他に頼りようがないのかもしれないが……こんだけあしらわれてメゲないってのも引っかかるしな。オレじゃなきゃいけないっつう理由があるとしても、その理由が思い浮かばない。<br />
　すると女は急に背を向け、</p>
<p>「……ばーかばーか」</p>
<p>「ハァ！？んだよいきなり！」</p>
<p>「ベクターさんって鈍いよねー！」</p>
<p>「な、んだとおお！？このオレ様の頭脳に向かってなんっつーことを！！」</p>
<p>「ふーんっだ、掴みかかったって私には触れないもんねー！」</p>
<p>「てめ、待ちやがれこんちきしょう！！」</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「たっだいまー……って、べくたーまたやってるよー」</p>
<p>「また件の女幽霊だろうか……」</p>
<p>「べくたーもこりないねえ」</p>
<p>　二人に全く気づかないベクターは、幽霊（？）に向かって尚も声を張り上げていた。</p>
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