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	<title>白色絵本 &#8211; 揺れる</title>
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	<title>白色絵本 &#8211; 揺れる</title>
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		<title>白色絵本</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:16:50 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[あるところに、とても仲のいい女の子と男の子がいました。 二人はいつも一緒で、遊ぶときも一緒でした。 ずっと、二人は一緒にいると思っていました。 けれどある日、女の子が引っ越すことになってしまいました。 男の子はたくさん泣...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e7%99%bd%e8%89%b2%e7%b5%b5%e6%9c%ac/" title="続きを読む白色絵本">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>あるところに、とても仲のいい女の子と男の子がいました。<br />
二人はいつも一緒で、遊ぶときも一緒でした。<br />
ずっと、二人は一緒にいると思っていました。<br />
けれどある日、女の子が引っ越すことになってしまいました。<br />
男の子はたくさん泣いていました。女の子は、一生懸命男の子を泣き止ませようとしましたので、泣きませんでした。<br />
でも、本当は女の子も、たくさん泣きたい気持ちでした。<br />
そうして、お別れの朝、男の子は泣きながら、一冊の本を女の子に渡しました。<br />
それは、魔法の絵本でした。<br />
表紙も裏表紙も、中身もなにも書かれていない絵本ですが、その絵本になにをどれだけかいても、ページをめくれば新しいページができるので、なくなることはなかったのです。<br />
男の子と女の子は、その絵本でよく遊んでいました。<br />
男の子は言います。<br />
「一人になっても大丈夫なように、これをあげる」<br />
女の子は絵本を受け取って男の子にお礼をいうと、町を去りました。</p>
<p>引っ越した先の町で、女の子はとても寂しい気持ちでいました。<br />
男の子のことが忘れられず、女の子は毎日、その絵本で遊びました。<br />
たくさんたくさん、かきました。<br />
ある日学校に持っていって遊んでいると、同じクラスの子が話しかけてきました。<br />
その子は絵本を見て、すごいものをもってるんだね、と褒めてくれました。<br />
女の子は、男の子のことを褒められた気がして、とっても嬉しくなりました。<br />
それから、その子と仲良くなり、その子の友達、また友達と、次第に女の子は友達が増えていきました。<br />
そうして、いつしか、魔法の絵本のことは、忘れてしまいました。</p>
<p>女の子は、大人になりました。<br />
大人になったので、ひとりで暮らすことにしました。<br />
そう思ったとき、ふと、男の子のことを思い出しました。<br />
あれからどうしているだろう、とても気になった女の子は、ひとりで暮らす場所を、あの町にすることにしました。<br />
町に戻ってくると、男の子はすっかり大きくなっていました。<br />
けれど女の子のことは覚えていて、また会えたことを喜んでくれました。<br />
そのとき、女の子は気がつきました。<br />
あの絵本はどうしただろう。男の子にもらった、あの魔法の絵本は。<br />
女の子は引っ越した先の家で、たくさんたくさん探しました。<br />
すると、荷物にまぎれて、古びた一冊の絵本がでてきました。<br />
魔法の絵本でした。<br />
女の子は、男の子との思い出をさがそうと、絵本をひらきました。<br />
しかし、いくらページをめくっても、男の子とかいた絵やお話は、でてきませんでした。<br />
絵本は、かいたうえから、古いページが消えていくのでした。<br />
女の子は、泣きました。男の子との思い出が、ぜんぶ、なくなってしまったと思いました。<br />
それを見ていた男の子は言いました。<br />
「裏表紙に、おわり、ってかいてみてごらん」<br />
女の子は言われたとおり、裏表紙に「おわり」とかきました。<br />
すると、絵本がぱっと弾け、今までかいたものが全部、出てきました。<br />
たくさんの紙のたばの中から、女の子は見つけました。<br />
男の子といっしょにかいたものです。<br />
「いつまでも一緒にいられますように」<br />
女の子は、涙をぬぐって笑いました。<br />
男の子も、笑っていました。<br />
ふたりは抱きしめあって、こう言いました。<br />
「いつまでも一緒にいよう」</p>
<p>お話は、これでおしまいです。<br />
あとの白いページはみなさんの自由に、たくさんのことをかいてください。<br />
でも、この絵本は普通の絵本ですから、いつかページがなくなります。</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>この本を、一番大好きな君へ贈ります。<br />
抱きしめてくれて、ありがとう。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>「　」</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e3%80%8c%e3%80%80%e3%80%8d/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:15:57 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[「私、待ってたのかもしれないなあ」 お姉さんに、新刊が出版されたから、と呼ばれて部屋に行くと、そんなことを言われた。 「待ってた、って、何をです？」 「いやさ、私が参ってたとき。鍵開けっ放しだったでしょ」 「そういえばそ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e3%80%8c%e3%80%80%e3%80%8d/" title="続きを読む「　」">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「私、待ってたのかもしれないなあ」</p>
<p>お姉さんに、新刊が出版されたから、と呼ばれて部屋に行くと、そんなことを言われた。</p>
<p>「待ってた、って、何をです？」</p>
<p>「いやさ、私が参ってたとき。鍵開けっ放しだったでしょ」</p>
<p>「そういえばそうですね★」</p>
<p>「誰かが来るの、心のどこかで待ってたんかな～って、今になって思ったのね。そしてできれば、その誰かが――」</p>
<p>「ボクだったらいい、と？」</p>
<p>勇気を出して言ってみると、お姉さんは声を上げて笑った。</p>
<p>「君も言うようになったじゃないか～。いいことだ」</p>
<p>「はぐらかしてませんか★」</p>
<p>「ばれたか」</p>
<p>今度は照れくさそうに笑う。<br />
やっぱり、お姉さんには笑顔が似合う。</p>
<p>「うん、まあ、その通りだったんだけどね。でも私、あの時点では、まだ君への気持ちを認めてないところがあってさ。やっぱ年下だし。しかも５つ」</p>
<p>「……そうだったんですか★」</p>
<p>今は違うとはいえ、そう言われると少しショックだ。<br />
返事に遅れたせいか、お姉さんに気づかれてしまう。</p>
<p>「君って、意外と表情……じゃないな、感情表現豊かだよね」</p>
<p>「そういうお姉さんは、よく気づきますね★」</p>
<p>「そりゃ～ね～……」</p>
<p>はっきりと言わなくても、お姉さんがその後に続けたい言葉がなんなのか、今のボクにはすぐに分かった。いつかのボクと同じだからだ。<br />
分かったけど、やっぱり言葉として、声として聞きたい。</p>
<p>「それで、新刊の話は？それと、あの時の約束★」</p>
<p>お姉さんはぎくっとして、視線をあちこちに泳がせた。<br />
なんだろう。てっきり仕事が一段楽したから呼ばれたものだと思っていたけど。<br />
それに、新刊は取りやめになった話を元にしつつ新しいものにしたから、無事に出せたとも聞いていたので、特に気になっていた。</p>
<p>「あ～、それなんだけど。やっぱなし、じゃだめ？」</p>
<p>「ええー★」</p>
<p>「いや、言うよ！うん、ちゃんと言う！でも……今日じゃなくていい？」</p>
<p>「そりゃないですよ、約束したじゃないですか★」</p>
<p>お姉さんの言葉も聞きたいし、新刊だって読みたいのに。<br />
でもお姉さんは眉をひそめて、やっぱり視線を合わせてくれない。</p>
<p>「自分でやったことなんだけど、恥ずかしくなってきて……」</p>
<p>「え？」</p>
<p>「ああ～、じゃあ、こうしよう！」</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>そうしてお姉さんから出された課題は、自力でお姉さんの新刊を探せ、というものだった。<br />
タイトルも内容も教えてはくれなかったけど、お姉さんの名前を探せばすぐに見つかるのに、どうしてお姉さんは、そんな課題をボクに出したのだろう。<br />
本屋さんでしばらくうろついてから、理解した。<br />
結果をいうと、お姉さんの本は見つかった。ただし児童書ではなく、絵本だった。いくら児童書のコーナーを探しても見つからなかったわけだ。<br />
お姉さんはボクを試したらしい。本当にお姉さんの本が好きなら、見つけられるはずだと。<br />
ちょっと意地悪だな、と思いながら、ボクは絵本を手に取った。さすがに、絵本というのは買いづらかったけど、お姉さんにちゃんと見つけたという報告をしたいから買った。<br />
家に帰って、その絵本をひらいてみた。タイトルは「白色絵本」。<br />
絵を描いている人はお姉さんじゃないけど、お姉さんの柔らかい文章と、とても似合っている。<br />
内容は、仲のいい男の子と女の子が、いくらかいてもページがなくならないという、白い魔法の絵本をきっかけに結ばれるという、お姉さんらしい温かな話だった。<br />
でも、なんだろう。どこかで読んだ覚えがある話だった。いや、読んだんじゃない。<br />
見た。<br />
この女の子と、男の子のやり取りは、どこかで見ている。<br />
不思議に思いながら読み進める。すると、物語の最後に、こう書いてあった。</p>
<p>「お話は、これでおしまいです。あとの白いページはみなさんの自由に、たくさんのことをかいてください。でも、この絵本は普通の絵本ですから、いつかページがなくなります。」</p>
<p>ボクは、なんとなく、その白いページをめくっていた。<br />
お話を読んだ後だったからかもしれない。<br />
数ページめくった、その時。</p>
<p>ボクは絵本を置いて、アパートに向かって走り出していた。<br />
未登録名前さんが待ってる、あの古いアパートへ。</p>
<div style="height:200px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>この本を、一番大好きな君へ贈ります。<br />
抱きしめてくれて、ありがとう。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>伝える想い</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e4%bc%9d%e3%81%88%e3%82%8b%e6%83%b3%e3%81%84/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:14:43 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[「締め切り間に合った～！」という、お姉さんの元気のいい声を聞いてから、どのくらい経っただろうか。 そろそろ出版したって話が出てきてもいいと思うんだけど、お姉さんから一向にその話が聞けない。 それどころか、お姉さんは段々と...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e4%bc%9d%e3%81%88%e3%82%8b%e6%83%b3%e3%81%84/" title="続きを読む伝える想い">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>「締め切り間に合った～！」という、お姉さんの元気のいい声を聞いてから、どのくらい経っただろうか。<br />
そろそろ出版したって話が出てきてもいいと思うんだけど、お姉さんから一向にその話が聞けない。<br />
それどころか、お姉さんは段々と元気をなくしていった。<br />
声をかけてもどこか上の空で、笑っていても、力がなかった。<br />
病気かなにかかと心配したけど、それは違うから大丈夫、としか答えてくれない。<br />
そして、お姉さんを町でみかけなくなって、二日ほど。<br />
ボクやりんごちゃんの親も心配していたので、ボクが様子を見てくる、と買って出て、こうしてアパートを訪ねた。</p>
<p>チャイムを鳴らしても、お姉さんの声は聞こえない。<br />
ダメ元で、ドアノブに手をかけてみた。開かなければ、アパートの管理人さんに話をしてみようとも思った。<br />
ところが、ドアノブは、何の引っかかりもなく回った。</p>
<p>「……お姉さん？」</p>
<p>そっとドアを開けて、中を覗きこんだ。<br />
お姉さんは、いた。うすぐらい部屋で、膝を抱えていた。<br />
周りには、原稿用紙がくしゃくしゃになって散らばっていた。<br />
いつもの、元気のいいお姉さんはどこにもいない。<br />
そんな姿を見て平静でいられるわけがなかった。</p>
<p>「お姉さん」</p>
<p>申し訳ないと思いつつ部屋にあがり、お姉さんの肩をそっとゆすった。<br />
散らばった原稿用紙は、踏まないように片手で脇へやった。</p>
<p>「……まぐろ、くん」</p>
<p>顔はあげなかったけど、お姉さんは泣いていた。</p>
<p>「一体、なにがあったんですか？みんな心配してます」</p>
<p>お姉さんは、何度かしゃくりあげて、小さな声で言った。</p>
<p>「あの、ね。私の本。なくなっちゃった」</p>
<p>「え……？」</p>
<p>「私が出版する前に、大手の、作家さんの本が出て。その内容、似てるから、って……私のが」</p>
<p>だから出版をとりやめた。<br />
ボクでさえショックを受けたというのだから、お姉さんへの衝撃は計り知れない。<br />
現にこうして、お姉さんは。</p>
<p>「いつも、ならね。よくあること、だって、思えるんだ。でも、あの話、は、この町に戻ってきて、初めての、話だったから」</p>
<p>「思い出、ですか？」</p>
<p>お姉さんは頷いて、そして、顔をあげた。<br />
涙で、顔をゆがませて。</p>
<p>「でも、全部なくなっちゃった。あんなに出したかった本なのに。私、やっぱりだめだ。だめなんだよ……」</p>
<p>もう見ているだけなんて出来なかった。<br />
ボクは、未登録名前さんをぎゅっと抱きしめる。</p>
<p>「まぐろ、くん？」</p>
<p>「未登録名前さんは、だめなんかじゃない」</p>
<p>年上だとか、名前だとか。<br />
そんなもの全てどうでもよかった。<br />
ただ、未登録名前さんに伝えたかった。<br />
どんな形でもいい。とにかく伝えなければと。</p>
<p>「ボク、未登録名前さんの本、全部持ってるんだ。最初にもらった本を読んで、好きになったから」</p>
<p>「え……」</p>
<p>「大好きなんだ。未登録名前さんの本。ボクが一番、未登録名前さんの本が大好きだって言いたいくらい。……それで」</p>
<p>抱きしめる腕に、力がこもる。<br />
もう、ほんとうに、感じていたわだかまり全て、どうでもよくなっていた。</p>
<p>「それで、未登録名前さんのことが好きになった。あんな素敵な世界を持ってる未登録名前さんのことが、本当に大好きなんだ。今は、ボクはなにもできない子供だけど、いつか、いつかきっとあなたのことを支えられるくらいになるから！」</p>
<p>「まぐろくん……」</p>
<p>「だから……」</p>
<p>「ふ、ふふ」</p>
<p>未登録名前さんは、いつの間にか泣き止んでいて。<br />
笑った。</p>
<p>「未登録名前、さん？」</p>
<p>「あはは、まぐろくん。それすごいね。すごいこと言ったね～」</p>
<p>「え、いや★」</p>
<p>泣き止んでくれたのは嬉しいけど、そういう風に流されるとは。<br />
流されると、今の自分の状況がものすごく恥ずかしいことに気づいて、慌ててお姉さんから離れようとする。<br />
でも、お姉さんがボクの背中に手を回した。</p>
<p>「ありがとう、まぐろくん。君の気持ち、たくさん伝わったよ」</p>
<p>「お、お姉さ」</p>
<p>「え～さっき名前で呼んでくれたのに、今更戻るの？」</p>
<p>「それは、勢いで★」</p>
<p>「ふ～ん、まあいいけど。で、私がそこにこだわる理由、知りたくないの？」</p>
<p>そういえば、そうだ。<br />
抱きしめかえされて頭がいっぱいになって、気にも留めなかった。<br />
お姉さんはボクからちょっと離れて顔を見せる。<br />
目は赤いままだったけど、いつものお姉さんらしい、元気な笑顔があった。</p>
<p>「あのねえ君。いくら歳が離れてるからって、男の子一人を誘ったりすると思う？」</p>
<p>「え、あ」</p>
<p>少しずつ思考が正常に戻る。<br />
じゃあ、やっぱりあの時、お姉さんは照れていたんだ。<br />
りんごちゃんとボクをたきつけるようなことを言っていたのも、本気でそう思ってたわけじゃなく？</p>
<p>「まぐろくんも相当にぶいね。おかげで大変な思いをしたよ」</p>
<p>「申し訳ない……★」</p>
<p>「いいけどね～」</p>
<p>お姉さんは、またボクを抱きしめる。</p>
<p>「でも、その返事、もうちょっとだけ待っててもらっていいかな」</p>
<p>「どうして、です？」</p>
<p>お姉さんの気持ちも、十分すぎるくらい伝わっているのに。<br />
まだボクに、足りないものがあるから？<br />
不安に思ったとき、お姉さんがこつんと頭をたたいてきた。</p>
<p>「これ、不安そうな声だすんじゃない。今は、見ての通り仕事でごたついてるからさ。それがぜ～んぶ終わってから、ちゃんと言いたいんだ」</p>
<p>お姉さんがそう言うなら。</p>
<p>「分かりました★」</p>
<p>「ばかたれ」</p>
<p>また、頭を叩かれた。</p>
<p>「そこは『分かった』でしょ」</p>
<p>「……いきなりは無理ですよ★」</p>
<p>「小さい頃はタメ口きいてたくせに～」</p>
<p>「そりゃ小さいからですよ★」</p>
<p>「いずれなおせ～」</p>
<p>「善処します★」</p>
<p>「なまいき～いつからそんな生意気になっちゃったのよ～お姉さん悲しい～」</p>
<p>そうは言いながら、お姉さんは楽しそうだった。<br />
本音を言うなら、ボクだって敬語はやめたいし下の名前で呼びたい。<br />
でもお姉さん自身が、仕事に一区切りつけてから、と言ったから、ボクもそうすることにした。</p>
<p>「仕方ないな～、ちゃちゃっと片付けてしまうか～」</p>
<p>「そうしてください★」</p>
<p>「じゃ、もうちょっとだけ、こうさせて」</p>
<p>「……はい★」</p>
<div style="height:50px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>今はまだ頼りないかもしれないけど。<br />
そばにいることはできるから。<br />
これからいくらでも、未登録名前さんが泣いても大丈夫なように。<br />
ボクも、もっと強くなる。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>僅かな一歩</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e5%83%85%e3%81%8b%e3%81%aa%e4%b8%80%e6%ad%a9/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:12:39 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[今日は回り道をして帰ることにした。 昨日のことをまだ引きずっているなんて情けないことだけど、こんなモヤモヤを抱えたまま、お姉さんに会えない。 こういうところが、まだ子供なんだろうな。あの男の人とお姉さんとは、何も無いって...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e5%83%85%e3%81%8b%e3%81%aa%e4%b8%80%e6%ad%a9/" title="続きを読む僅かな一歩">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>今日は回り道をして帰ることにした。<br />
昨日のことをまだ引きずっているなんて情けないことだけど、こんなモヤモヤを抱えたまま、お姉さんに会えない。<br />
こういうところが、まだ子供なんだろうな。あの男の人とお姉さんとは、何も無いって分かっているのに。<br />
お姉さんを名前で呼べるその距離が、どうしても、妬ましいと思ってしまう。</p>
<p>「おーい、まぐろくーん！」</p>
<p>「あ、りんごちゃん★」</p>
<p>振り返ると、りんごちゃんが走り寄ってきた。</p>
<p>「後姿が見えたから声かけたけど、珍しいね。まぐろくんがこっちの道通るなんて」</p>
<p>ぎくっとした。</p>
<p>「なんとなーく、ね★」</p>
<p>「ふーん。……なんかあった？」</p>
<p>やっぱり分かっちゃうか。</p>
<p>「……りんごちゃんには、隠しごとできない、ね★」</p>
<p>「ま、幼馴染だし」</p>
<p>でも、りんごちゃんになら話しても大丈夫だと思い、ボクは昨日あったことをそのまま話した。ボクの感情含めて。<br />
あんまり自分のことを話すのは得意ではないから、時々つっかえることもあったけど、りんごちゃんは静かに聴いてくれていた。</p>
<p>「そっか、それはフクザツだ……」</p>
<p>話し終えると、りんごちゃんは神妙な面持ちであごに手をやった。</p>
<p>「しかも、お姉さんはまだ、ボクらのこと誤解してるんだ★」</p>
<p>「それだよ、それ」</p>
<p>りんごちゃんはビシっと指を立てる。</p>
<p>「お姉さんが誤解してるから、いつまでも気づいてもらえないわけでしょ？まずは、まぐろくんが本気ってところをみせなくちゃ！」</p>
<p>「と、言われてもー……★」</p>
<p>本気、って、なにをどうすればいいのやら。</p>
<p>「ここはひとつ、思い切って」</p>
<p>「思い切って？」</p>
<p>「押し倒してみるとか」</p>
<p>「りんごちゃん！」</p>
<p>咎めるように言うと、りんごちゃんは朗らかに笑った。</p>
<p>「まあ、それは冗談としてだよ」</p>
<p>面白がってるだけじゃないのかな、と思ったけど、話がややこしくなりそうだったので黙っておくことにした。</p>
<p>「このままだと、まぐろくんが危惧していることが、現実になりかねないよ？」</p>
<p>危惧。<br />
それは、あの人がお姉さんと。<br />
それだけは。</p>
<p>「だったら、まぐろくん！ここは男にならないと！」</p>
<p>「……りんごちゃん、さっきから発言がアヤシイよ★」</p>
<p>さすがにツッコミをいれざるをえなかった。<br />
と、そこへ。</p>
<p>「お～い！まぐろくんにりんごちゃ～ん！」</p>
<p>この声は。</p>
<p>「未登録名前お姉さん」</p>
<p>硬直するボクの代わりに、りんごちゃんが答える。<br />
お姉さんは肩で大きく息をついて、</p>
<p>「いや～、まぐろくんに昨日のお礼ついでにお鍋返しに家行ったら、まだ学校ですって言われちゃって！時計よく見たらまだ学校の時間だったね～まいったまいった！」</p>
<p>「お姉さんのそういうところ、昔っからですよね」</p>
<p>「う～ん、一人暮らし始めて、少しはよくなったと思ったんだけどな～」</p>
<p>りんごちゃんとお姉さんが笑っていても、ボクは愛想笑いしかできなかった。<br />
ホントは、会いたくなかった。いや、でも、やっぱり会いたかった。<br />
どっちだろう、分からないや。</p>
<p>「そうそう、それでだよまぐろくん」</p>
<p>お姉さんに呼ばれて、はっとする。<br />
少し驚いたのが気づかれないといいけど。</p>
<p>「やっと前回の分の原稿料入ったからさ～、美味しいもんでも食べにいこうよ！ああ、ご両親の許可は得ているから心配なく！」</p>
<p>えっと、これは。<br />
喜んでいい、ことなの、かな。<br />
でも、どうしよう。<br />
すっごく嬉しい。</p>
<p>「あ、りんごちゃんもどう？」</p>
<p>「わたしは、今日はちょっと。親に呼ばれてるもので」</p>
<p>「そっか～そりゃ残念」</p>
<p>りんごちゃんが横目でボクを見た。<br />
（今がチャンスだよ）とでも言いたげな表情だった。<br />
お姉さんに向き直ったりんごちゃんは、</p>
<p>「元々まぐろくんへのお礼ですし。どうぞお二人で」</p>
<p>「そう？じゃあ、りんごちゃんにはまた別の形で」</p>
<p>「ありがとうございます。では、わたしはこの辺で！」</p>
<p>お姉さんにお辞儀をすると、足早に去っていった。<br />
ああ、本当にありがとう。気を利かせてくれたのはすぐ分かったよ。</p>
<p>「なんか私、邪魔しちゃったかな～」</p>
<p>明後日の方向の心配に、ボクは思わず噴出してしまった。</p>
<p>「え、なに、どしたの？」</p>
<p>「いえ、べつに★りんごちゃんのことは、気にしないでください★」</p>
<p>さっきまでのモヤモヤが、きれいさっぱりどこかへ行ってしまった。<br />
やっぱりお姉さんのことは好きだし、いつだって会いたい。</p>
<p>「まぐろくんがそう言うなら……まあいいか」</p>
<p>お姉さんは気を取り直したらしく、いつもの笑顔をボクに向けた。</p>
<p>「あのさ、私がよく行くケーキ屋さんがあるんだけど、どうかな？あ、まぐろくん甘いもの平気だっけ？」</p>
<p>「平気、というか普通に好きですよ★」</p>
<p>「そっか～！じゃ行こう！ちょっと歩くけど大丈夫かな」</p>
<p>「むしろ、お姉さんのほうが心配です★さっき全力疾走してたんで★」</p>
<p>「それもそうだ～」</p>
<p>あはは、と笑いながら、お姉さんとボクは並んで歩き出す。<br />
ふと、気がついた。<br />
お姉さんとボクの肩、同じくらいの高さだ。<br />
昔は、ボクがお姉さんのことを見上げていたのに。<br />
今では身長も同じくらいで。<br />
少しは、お姉さんに、近づけているのかな。<br />
思わず、ボクは、お姉さんの手を握ろうと手を伸ばして。<br />
そして、引っ込めた。</p>
<p>ゴメンネ、りんごちゃん。せっかく用意してくれたのに。<br />
ボクはまだ、あと一歩が踏み出せないみたいだ。</p>
<p>「ねえ、まぐろくん」</p>
<p>「なんです、か★」</p>
<p>まさか手を握ろうとしたのがばれて？</p>
<p>「まぐろくんは～、どういうケーキが好きなのかな～？」</p>
<p>無用の心配だったか。<br />
ボクはまた、小さく笑った。</p>
<p>「そーですね、割となんでも★」</p>
<p>「それは困るんだよ～なんか選んでよ～」</p>
<p>「じゃあ、お姉さんが選んでください★」</p>
<p>「え～私が～？」</p>
<p>これは言える雰囲気だと思った。<br />
まだ一歩踏み出せないけど、ほんのちょっとなら、歩み寄れるかなって。<br />
冗談交じりにボクは言った。</p>
<p>「お姉さんが選んでくれたのなら、全部好き、です★」</p>
<p>すると、意外なことが起こった。</p>
<p>「……まぐろくんさぁ」</p>
<p>お姉さんは、あからさまに目をそらして頬をかき。</p>
<p>「そういうセリフは、彼女とかに使いなさいよね」</p>
<p>もしかしてお姉さん。<br />
照れてる？<br />
その真偽を確かめる間もなく、お姉さんは大きな声で「な～にたべよっかな～」と話題をそらした。</p>
<p>もし、お姉さんがほんとうに照れているのだとしたら。<br />
ちょっとは意識してもらえたのかな。<br />
そうだったら……嬉しいな。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<title>名前と距離</title>
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		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:11:01 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[お姉さんが、締め切りが近くてご飯を食べる暇も無い、と言っていたので、ボクは夕飯を多めに作って、差し入れに行くことにした。 ちょうど鯖が安く仕入れられたので、味噌煮にして鍋ごと持っていく。 確かお姉さんは、魚料理では煮魚が...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e5%90%8d%e5%89%8d%e3%81%a8%e8%b7%9d%e9%9b%a2/" title="続きを読む名前と距離">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>お姉さんが、締め切りが近くてご飯を食べる暇も無い、と言っていたので、ボクは夕飯を多めに作って、差し入れに行くことにした。<br />
ちょうど鯖が安く仕入れられたので、味噌煮にして鍋ごと持っていく。<br />
確かお姉さんは、魚料理では煮魚が好きって言っていたから、きっと喜んでくれるだろう。<br />
アパートを下から見上げて、お姉さんの部屋に明かりがついているのを確認してから、階段を登った。すると、段々と声が聞こえてきた。<br />
お姉さんの声。と、男の人の声。<br />
階段を登りきってドアの前に立っても、チャイムを鳴らすのに数秒、迷った。<br />
だけど会いたい気持ちのほうが勝ったようで、ボクは鍋を抱えなおしてチャイムを押す。<br />
はーい、というお姉さんの声がして、ドアが開いた。</p>
<p>「あ、まぐろくん！こんばんは～」</p>
<p>「こんばんは★」</p>
<p>ちらっと中を覗くと、スーツを着た若い男性が座っている。<br />
目が合うと、男性はにこやかに会釈をした。</p>
<p>「やあ、佐々木君。こんばんは」</p>
<p>「……こんばんは★」</p>
<p>彼は、お姉さんの担当編集の人だ。<br />
お姉さんを訪ねるうちに何度か会ってはいるけど、ボクは、どうしてもこの人が好きになれないでいた。<br />
それはおそらく、とても子供っぽくて情けない感情からくるもの。<br />
自分で分かっている。これは嫉妬だと。</p>
<p>「お姉さん、よかったらこれ、どうぞ★」</p>
<p>今はその気持ちを片隅においやって、お姉さんに鍋を差し出した。</p>
<p>「わ、もしかして差し入れ？いつもありがとう、まぐろくん！助かる！」</p>
<p>お姉さんは嬉しそうに鍋を受け取ってくれた。その笑顔が、今のボクにとっては救いだった。</p>
<p>「ねえ、よかったらちょっとあがってかない？お茶くらい出すよ」</p>
<p>「遠慮しときます。お仕事の話、してるみたいですし★」</p>
<p>半分本当で、半分は嘘。<br />
本当の部分は、できるだけあの人といたくないから。</p>
<p>「じゃあ、また今度お礼させてね」</p>
<p>「ほどほどに、期待しときます★」</p>
<p>「いっぱいしといてよ～」</p>
<p>「はいはい★それじゃ、ボクはこれで★」</p>
<p>「うん、ほんとにありがとね～」</p>
<p>ばたん、とドアを閉めると、中からまた声がする。<br />
「未登録名前君、さっきの話の続きだけど、」とかいう声。<br />
ボクは階段を下りながら、片隅においやっていたはずの気持ちが噴出してきたのを感じた。<br />
未登録名前君、だってさ。ボクは、下の名前で呼んだことないのにな。<br />
昔から、お姉さんはお姉さんだったから、今でもなんとなくそう呼んでいるけど、本当はボクだって名前で呼びたい。<br />
未登録名前さん。<br />
心の中ならいくらでも呼べる。<br />
いつか声に出して言えるだろうか。<br />
その声は、未登録名前さんに届くんだろうか。</p>
<p>（お姉さん、かあ）</p>
<p>もしボクが、もっと大人で、もっと違う形で出会ってたら……未登録名前さんも、ボクのことちゃんと見てくれたかな。<br />
一人の男として。<br />
ないものをねだっても仕方ないけど、でも願わずにはいられない。<br />
そういう距離なんだ。ボクと、お姉さん、は。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<title>憧れの向こう</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 18 Jan 2023 11:09:37 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[すずらん商店街のわき道を通り、一つ目の角を曲がったところ。 そこには古いアパートがあって、小さいころから仲良くしてもらってる、お姉さんが住んでいる。 年は５つほど上で、名前はさん。今は児童書の作家をしている。ぜ～んぜん売...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e6%86%a7%e3%82%8c%e3%81%ae%e5%90%91%e3%81%93%e3%81%86/" title="続きを読む憧れの向こう">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<p>すずらん商店街のわき道を通り、一つ目の角を曲がったところ。<br />
そこには古いアパートがあって、小さいころから仲良くしてもらってる、お姉さんが住んでいる。<br />
年は５つほど上で、名前は未登録苗字未登録名前さん。今は児童書の作家をしている。ぜ～んぜん売れないけど、というのは本人の談。<br />
ボクとりんごちゃんは、小学校低学年くらいまで、たくさん遊んでもらった記憶がある。<br />
お姉さんは本が好きで、特に絵本や児童書が好きだった。ボクやりんごちゃんに貸してくれたり、読み聞かせてくれたりもした。ボクも、お姉さんの聞かせてくれる本がすごく好きだった。<br />
それから、古い遊びもよく知ってた。お手玉とかあやとり、ベーゴマやメンコなんかも知っていた。古い遊びが面白い、と思えるようになったきっかけだ。<br />
けれど、お姉さんが小学校を卒業するころ、両親の仕事の都合で、お姉さんは引っ越すことになった。ボクは随分泣いたのを覚えている。その頃は、まあ……泣き虫だったんだよね。</p>
<p>でもまた、お姉さんは戻ってきてくれた。一人暮らしができるようになったからと、この町を選んでくれたんだ。<br />
久しぶりに会ったお姉さんは、すごくきれいになってた。そりゃ、もう緊張っていうか、どぎまぎしたよ。昔と違って大人びた笑顔で「おっきくなったねえ」なんて、頭を撫でられたら。子ども扱いされるのは、さすがにちょっと、あれだけど。</p>
<p>そういうわけでボクは、学校からの帰りは、そのアパートの前を通るのだった。</p>
<div style="height:50px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>「あ～まぐろくん。今帰り～？」</p>
<p>頭上から声が降ってきた。<br />
見上げると、お姉さんが窓から手を振っていた。</p>
<p>「そうですよ★お姉さんは、またまた執筆、滞り中？」</p>
<p>アパートはそんなに高くないので、少し張れば十分、声が届く。<br />
お姉さんは振っていた手を頭にやって、気まずそうにした。</p>
<p>「痛いとこつくね君は……休憩中と言ってくれたまえよ～」</p>
<p>「そーんなこと言って、いつも、窓全開で空を見てるじゃないですか★」</p>
<p>「まいったな～。ほんとよく見てるよね、まぐろくんは」</p>
<p>少しどきっとした。<br />
ボクがお姉さんを見てる理由。<br />
なんて答えようか迷っているうち、お姉さんが話題を変えた。</p>
<p>「あ、そういえば――ちょい待ち、今そっち行くわ」</p>
<p>「え、いいですよ★仕事中なんでしょう？」</p>
<p>「休憩中つったでしょ～」</p>
<p>一瞬お姉さんの声が遠くなり、鉄階段を下りる音がして、お姉さんがやってきた。</p>
<p>「そんで、りんごちゃんは？また物理部でりすくんと怪しげな実験？」</p>
<p>「ええ★」</p>
<p>少しだけ、胸が高鳴っていた。近くで見るお姉さんは、やっぱりきれいだ。<br />
当の本人は頑なに否定するけど。</p>
<p>「ねえ。まぐろくんは、なんか部活やったりしないの？」</p>
<p>「特に興味のわくものがないもんで★」</p>
<p>そうしたらお姉さんと話す時間がなくなるから、という本音はしまっておく。</p>
<p>「あんだけ色々できるのに、勿体無いなあ。……ところでさ」</p>
<p>「はい？」</p>
<p>「りんごちゃんとは、どうなのよ」</p>
<p>「どう、って？」</p>
<p>「も～、少しは進展したのかって聞いてるの～」</p>
<p>お姉さんはさも嬉しそうに楽しそうに笑っていた。<br />
当然、ボクは慌てる。</p>
<p>「だから、何度も言いますけど、ボクとりんごちゃんは、なぁんにもないんですって★」</p>
<p>「照れ隠しはいいんだよまぐろくん。いつでも協力するからさ～」</p>
<p>「結構、です★」</p>
<p>少々言い方がキツくなってしまうのは仕方が無い。<br />
だってボクは……。</p>
<p>「それより、そろそろ仕事、再開しなくていいんですか？」</p>
<p>「ぬあ～せっかく忘れてたのに」</p>
<p>「ダメですよ、忘れちゃ★」</p>
<p>「わかりましたよ～。じゃ、まぐろくんも頑張ってくれよ～」</p>
<p>そう言ってお姉さんはひらひら手を振りながら、アパートに戻っていった。<br />
お姉さんは、りんごちゃんとの仲を、という意味で言ったんだろうけど、ボクにとってはそっちじゃなく。</p>
<p>お姉さんとの仲を、頑張りたい。</p>
<p>最初は、ただの憧れだった。<br />
優しくて、明るくて、ボクの知らないことをたくさん知っていて、教えてくれるお姉さんが、大好きだった。<br />
その時はまだ小さかったから、お姉さんに恋してるから好きなんだって思いこんでたけど、お姉さんが引っ越したあと、気づいたんだ。あれは、単なる憧れだったんだって。<br />
確かにお姉さんと別れて悲しかったんだけど、時が経つにつれ、少しずつ、その気持ちも薄らいでいったから。寂しいことに変わりはなかったけど、一緒にいたときほど強く思うことは、なくなっていった。<br />
でも、今は違う。確信を持って言える。<br />
お姉さんが戻ってきたとき、出版した本を一冊もらった。憧れのお姉さんが書いた本だからって理由で、その時は読んだ。<br />
でも、いつの間にかお話そのものに惹かれていった。ありがちな内容かもしれない、でも、優しくて、どこか切なくて、心が温かくなる、そんなお話に。<br />
ボクはお姉さんに内緒で、こっそり本を集めた。数はそんなになかったけど、どれも本当に面白かった。<br />
そんなお話を書けるお姉さんに、いつしかボクは憧れじゃない、恋をした。<br />
お姉さんの世界がもっと知りたい。どんなことを考えて、どんなものを感じ取っているのか。とても、知りたくなった。</p>
<p>最初はただの憧れだった。けど、今は恋してる。<br />
それは揺ぎ無い、確かな想いとして、ボクの心の真ん中にあるんだ。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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