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	<title>Planet Breeze &#8211; 揺れる</title>
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	<title>Planet Breeze &#8211; 揺れる</title>
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		<title>出会いの数だけ</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:59:20 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[出会いの数だけ 　サウスアイランドで最も大きな浮遊大陸に存在する大都市、セントラルシティ。大統領官邸を有するこの街は商業を中心として栄えており、大陸の広さを利用した航空貿易も盛んで、日々多くの獣人たちが行き交っている。 ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e5%87%ba%e4%bc%9a%e3%81%84%e3%81%ae%e6%95%b0%e3%81%a0%e3%81%91/" title="続きを読む出会いの数だけ">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>出会いの数だけ</h1>
</div>
<p>　サウスアイランドで最も大きな浮遊大陸に存在する大都市、セントラルシティ。大統領官邸を有するこの街は商業を中心として栄えており、大陸の広さを利用した航空貿易も盛んで、日々多くの獣人たちが行き交っている。<br />
　そんなたくさんの人や物を初めて見る未登録名前は、好奇心の強さもあって目を輝かせていた。</p>
<p>「未登録名前！俺たちから離れすぎるなよ」</p>
<p>「あ！ごめんなさい！」</p>
<p>　足を止めているとナックルズの声が飛んび、未登録名前は慌てて走る。その様子を見ていたソニックとテイルスは、初めあれだけ未登録名前を厄介者扱いしていたのに、と顔を見合わせて笑っていた。</p>
<p>　今日ここにやってきたのは、未登録名前の身の回り品を買い足すためでもあったが、一番の理由は未登録名前にこの世界のことをもっと知ってもらうためであった。言葉を理解できるようになってきたこともあり、未登録名前にとってはいい刺激になるだろうと皆で相談して決めた。<br />
　気掛かりがあるとすれば政府の動きだが、仮に未登録名前の存在が露見していたとしても街中で手荒な真似はしないだろう、とはソニックの言だ。<br />
　一番気をつけねばならないのは未登録名前が人間であることを悟られないようにすることなので、未登録名前には猫のような耳のついた帽子を被せている。未登録名前は不思議そうにしていたが、似合っているからと三人が言えば、照れ臭そうに笑っていた。<br />
　最初に向かったのは仕立て屋だった。赤い屋根の小ぢんまりとした店で、ショーウインドウには様々な模様の布地やそれを元にしたらしい女性用のワンピースが飾られている。未登録名前はそれらをまじまじと眺めてから、ソニックが開けてくれた扉をおそるおそるくぐった。<br />
　中は、たくさんの生地や裁縫道具、トルソーなどが雑多に置かれている。中央には大きなテーブルがあり、そこでは大きな猫の耳を生やし長い尻尾を揺らした、壮年の女性がミシンを動かしていた。女性はソニックたちに気づくと、ミシンを止めて嬉しそうに駆けよった。</p>
<p>「やあいらっしゃい！今日はどんなご用？……あら、そっちの女の子は？」</p>
<p>「こ、こんにちは。未登録名前といいます」</p>
<p>　未登録名前は、自分の発音がおかしくないかと気をつけながら、練習していた言葉を告げる。女性は、うんうんと何度も頷いてからソニックたちを見た。</p>
<p>「なるほどね。この未登録名前ちゃんが、あんたたちが隠してた子ってわけかい」</p>
<p>「べっべつにボクら、隠してたわけじゃ」</p>
<p>「はは、分かってるよ。なんかワケがあるんだろ？でなきゃいきなり押しかけて、女の子に必要なものを代わりに買ってきて欲しいーだなんて言わないだろうしさ」</p>
<p>　そこで、未登録名前ははたと気がついた。自分の服などは全てソニックたちがくれたものだ。それを、男であるソニックたちがどうやって買ったのかまで考えたことがなかった。</p>
<p>「あの、みんな、ありがとうございます！わたし、気づかなくて、」</p>
<p>　勢い良く頭を下げると、やがて大きな笑い声とともに優しい感触が頭に降ってきた。</p>
<p>「そんなの気にしなくていいんだよ。困った時はお互い様さ」</p>
<p>　そのまま大きく頭を撫でられ、顔をあげると、女性はにこりと笑っていた。女性の柔らかい表情にほっと息をつき、笑顔を返した。<br />
　女性はフェイと名乗った。仕立て屋のフェイおばさんと慕われており、ソニックたちとも長い付き合いなのだという。とはいっても、彼らはこのサウスアイランドでは有名人であり、特にソニックはその性格から多くの人々と顔見知りなのだという。それを聞いた未登録名前は、記憶のない自分を助けてくれた三人なら、多くの人に好かれるのは深く理解できた。</p>
<p>「……に、しても」</p>
<p>　フェイは未登録名前にずいと詰め寄り、頭から足までじいっと見つめた。未登録名前は驚いて不安げな顔を浮かべたが、フェイは目を合わせてニコリと笑う。</p>
<p>「こーんな可愛い女の子だって分かってたなら、もっといい服を仕立ててあげたのに。おいで！あんたにもっと似合う服用意してあげるから、採寸させてちょうだい」</p>
<p>「え、と。あの」</p>
<p>　言葉の意味が分かる、というのは心臓に悪いということを学んだ。今までそんな風に言われたことがなかったためにどうしていいか分からず、ソニックたちに視線を投げる。</p>
<p>「Wow! いいじゃないか！」</p>
<p>「行ってきなよ！待ってるから」</p>
<p>「ま、元々そのつもりで来たんだしな」</p>
<p>　三人に後押しされ、未登録名前は顔中に熱が集まってしまう。それを見たフェイはまた笑い、未登録名前の手を引いて奥の部屋に連れて行った。</p>
<p>「あんた、本当ワケありなんだねぇ」</p>
<p>　カーテンで仕切られた小部屋にて、採寸しながらフェイがしみじみと呟いた。未登録名前は意味を上手く理解できずに押し黙ってしまうと、気まずいと受け取ったフェイが慌てて手を振る。</p>
<p>「ああ、ゴメンね。ワケを聞きたいんじゃないのよ。ただあんた、なんていうか……ちょっと雰囲気が違うじゃない？だから、あの子らも放って置けないんでしょうけど」</p>
<p>「わたし、」</p>
<p>「いいのよ。あの子らには何度もこの街を助けてもらってるんだ、たまにはあたしらが助けてやらなきゃ。未登録名前ちゃんだっけ？あんたもいい子だし、ね」</p>
<p>　未登録名前は、目の奥がじわりと滲む感覚を覚え、思わず被ったままの帽子を掴んで俯いた。フェイは驚いた様子を見せたが、すぐに柔らかく微笑んで背中を撫でてくれた。暖かい体温は、未登録名前の心に深く染み渡った。</p>
<div style="height:50px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　採寸を終えると、あとは仕上がるまで数日かかるということで四人は店を出た。昼を回っていたのでレストランに入ろうと表通りを歩く。外食が初めての未登録名前は、気をつけることはないかと聞いたほうがいいだろうか、と考えるあまりに三人から少し遅れてしまう。慌てて追いかけようと小走りになったところで、</p>
<p>「誰かっ！！捕まえてぇっ！！」</p>
<p>　背後から女性の叫び声が上がった。何事か確認する前に、誰かによって突き飛ばされ、思い切り転んだ。</p>
<p>「未登録名前！！」</p>
<p>　気がついたソニックが未登録名前を抱き起こし、ずれた帽子を目深に押し込む。周囲は混乱により騒然となった。ソニックは未登録名前の手を引いてなんとか人混みを掻き分ける。<br />
　テイルスと合流できると、どうやら引ったくり犯が逃げる際未登録名前を突き飛ばしたとのことだ。</p>
<p>「待ちやがれっ！」</p>
<p>　やや離れたところでナックルズの声がする。どうやら犯人を追っているようだ。続くにもこの人だかりでは、ソニックの俊足も活かせない。かと言って、未登録名前を転ばせた犯人をみすみす逃すのも気が収まらない。自然に未登録名前の手を強く握ると、未登録名前は小さく悲鳴を上げた。そんなに強く握ってしまったかと未登録名前を振り向けば、彼女は何でもないというふうに手を振っている。ソニックは、繋いでいた手を解いて未登録名前の手を開かせる。<br />
　無数の擦り傷。<br />
　かっと全身の血が熱くなる。</p>
<p>　パァン！</p>
<p>　切り裂くように何かの破裂音がした。同時に人々のざわめきも止む。三人が慌てて音の出所に向かうと、人垣が途切れる場所に出た。<br />
　ひらけた場所の中央に、引ったくりであるらしい犬の男が地面に伏している。その側にナックルズがおり、向かい合う形で見知らぬ男が数人立っていた。<br />
　テイルスは、ソニックに耳打ちをする。</p>
<p>「（あの人たち、政府の人だ。腕章がある）」</p>
<p>　男たちをよく見ると、紅地に白のラインと政府のエンブレムが刺繍された腕章を付けている。先頭に立っていた黒いカラスの男が犯人に静かに歩み寄り、倒れた男を見下ろした。カラスの目は右が赤く左が黄色と、珍しい色をしていた。</p>
<p>「白昼堂々と街中で犯罪とは、なめられたものですね。その意気だけは買って差し上げます。後は署でお話を聞きましょうか」</p>
<p>　カラスが合図すると、控えていた兵が犯人を抱えて連行していく。カラスの男はそれらを見届けてから、ナックルズに向き直った。</p>
<p>「ご協力、感謝致します。さすがはトレジャーハンターとして名高いナックルズさんですね」</p>
<p>「……知ってるのか」</p>
<p>「ええ。数々の遺跡から歴史的発見を見出したというご高名はかねがね。……それから、」</p>
<p>　カラスはちらとナックルズの背後、ソニックたち視線を向ける。</p>
<p>「ソニックさん、テイルスさん。あなた方のお名前も、よく存じ上げておりますよ」</p>
<p>「そりゃどうも」</p>
<p>　ソニックは肩をすくめる。</p>
<p>「けど、こっちはアンタの名前を知らないんだがな」</p>
<p>「ああ、これは失礼。わたくし、政府の環境文化省の総務をまとめております、アッシュ・ザ・クロウと申します」</p>
<p>「へえ……文化省にしちゃ、ずいぶん物騒な装備を持ってるんだな」</p>
<p>「はは、総務といえど要はただの雑用でですからね。こういった荒事に遭遇することも多いので、ある程度の装備は認可されております。……ああ、それと」</p>
<p>　アッシュは未登録名前に向け、ニコリと笑う。</p>
<p>「先程転んでしまわれたようですが、大丈夫でしたか？」</p>
<p>「えっ、あ、はい。だいじょぶです。ありがとうございます」</p>
<p>「それは何より。では、わたくしはこれで」</p>
<p>　恭しく一礼すると、アッシュはソニックたちに背を向け去っていく。静かだった街も少しずつざわめきを増やし、やがて人の垣根が崩れていった。</p>
<p>「……なんっか、気に入らないな」</p>
<p>　ソニックは顔をしかめ、腕を組む。その様子にテイルスは首を傾げた。</p>
<p>「そうかなぁ、丁寧な人だと思うけど」</p>
<p>「丁寧、ね……」</p>
<p>「あいつ、ヤバそうだな」</p>
<p>　戻ってきたナックルズもまた険しい顔つきでいる。</p>
<p>「お前らは見てないだろうが、あいつの部下……躊躇いなく撃ちやがったんだぜ」</p>
<p>　あの時響いた破裂音は、銃声だった。しかも、犯罪者とはいえ一般市民である相手に一寸の躊躇もなく、的確に足を撃ち抜いたという。<br />
　環境文化省総務のアッシュ・ザ・クロウ。気がかりである省に名を連ねる者。まだ不明な点も多いが、危険人物であることに変わりはない。</p>
<p>「わたしは」</p>
<p>　沈黙していた一同に、未登録名前の声が差し込んだ。</p>
<p>「わたしは、あのひと、悪いひとには、みえなかった」</p>
<p>　その言葉には、三人とも同じように目を丸くする。それを見た未登録名前は少し恥ずかしそうにして、それから再び言葉を探すように唸っていた。<br />
　ふ、っと息をついたソニックが、未登録名前の手を優しく取った。</p>
<p>「ま、今ここで考えてても仕方ない。フェイんトコで手当てさせてもらったら、ひとまず帰ろうぜ」</p>
<p>「そうだね」</p>
<p>「って、未登録名前お前ケガしてたのか！？なんでもっと早く教えねえんだ！」</p>
<p>「んな暇なかっただろ」</p>
<p>「あはは、わたしならだいじょぶだよ」</p>
<p>「お前はいっつもそう言って無理すんだろ！」</p>
<p>「もー、怪我してるんだから早く行こうよ！」</p>
<p>　テイルスに押される形でその場を後にする。その前に、ソニックは一瞬だけ背後を振り返り、不敵な笑みを浮かべたのだった。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>暗雲、迫る</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:54:28 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[暗雲、迫る 　あれからおよそ一か月が経ち、は少しずつこの生活に慣れたようだった。元々頭が良いためか言葉や知識の飲み込みも早く、好奇心の強さもあってソニックたちとのコミュニケーションも増えた。記憶が戻る気配はまだないが、テ...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e6%9a%97%e9%9b%b2%e3%80%81%e8%bf%ab%e3%82%8b/" title="続きを読む暗雲、迫る">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>暗雲、迫る</h1>
</div>
<p>　あれからおよそ一か月が経ち、未登録名前は少しずつこの生活に慣れたようだった。元々頭が良いためか言葉や知識の飲み込みも早く、好奇心の強さもあってソニックたちとのコミュニケーションも増えた。記憶が戻る気配はまだないが、テイルスの分析ではリラックスした状態が続けばふとした拍子に戻ることもあるだろう、とのことだ。<br />
　それより気掛かりなのが、政府のことだった。今の所なんの動きも見せていないが、各地の遺跡調査は相変わらず熱心に続いている。こちらの発掘報告が虚偽のものだとこれからも疑われないとは限らない。ソニックは「バレたらその時はその時」などとうそぶいていたが、用心深いナックルズは注意をより深くはらう必要があるとし、暇を見つけては周辺の見回りを行なっていた。<br />
　近くの遺跡を一巡りし異常がないことを確認して家に戻ると、ソニックと留守番をしているはずの未登録名前が一人でいた。</p>
<p>「ナックルズ、おかえりなさい」</p>
<p>「ああ。ソニックはどうした？」</p>
<p>「外にいった」</p>
<p>「ちったぁジッとしてられねぇのかアイツは……」</p>
<p>　未登録名前のそばを離れるのは未だ危険がある、そう判断しているナックルズにとっては、ソニックに行動には少しばかり呆れた。テイルスがいれば話は違ったが、今日は街へ買い出しに行ってまだ戻らない。<br />
　テーブルの上には読んでいたらしい絵本が積まれていた。言葉の勉強のためにとテイルスが自宅から持ってきたものだ。</p>
<p>「ねえ、ナックルズ。これ、ねこ？」</p>
<p>　不意に未登録名前が、ナックルズに絵本を広げて指差した。その絵本は、不思議な宝石を持つ猫の王女が冒険するストーリーで、開かれたページにはその王女が悪者と対峙するシーンが描かれている。<br />
　そういえば種族の話はしたことがなかった。未登録名前が人間であるから、無意識に避けていたのかもしれない。</p>
<p>「ああ、猫だ」</p>
<p>「ナックルズは？」</p>
<p>「俺？俺はハリモグラだ」</p>
<p>「ソニックと、テイルスは？」</p>
<p>「あいつらは、ハリネズミと、キツネ……」</p>
<p>　言いながら、内心で冷や汗をかいてった。この流れでは未登録名前が自分の種族を尋ねてくるのではないか。もしそうなれば、一体どんな返事をすればいいのかなど思い浮かぶはずもない。ソニックともテイルスとも、一度もその話になったことはない。ナックルズ一人で答えるにはあまりに荷が大きい。<br />
　なぜこの時にソニックがいないのか恨めしさまで覚え始めていると、未登録名前は小首を傾げた。</p>
<p>「テイルス……しっぽ2こ？」</p>
<p>　ナックルズは胸を撫で下ろし、そして未登録名前に向き直る。</p>
<p>「……そうだな。けど、あんまり言ってやるなよ？テイルスの尻尾は特別なんだ」</p>
<p>　昔、テイルスは尻尾が二本あることからいじめられていた。テイルスという名も彼の尻尾を揶揄し付けられたあだ名であり、本名はマイルス・パウアーという。だが、ソニックと出会い、走る姿に勇気づけられてからはそのあだ名を自分から名乗るまでに成長した経緯がある。<br />
　ナックルズの言葉に、未登録名前はふるふると首を振り、目を輝かせてこう言った。</p>
<p>「ううん。テイルスのしっぽ、かっこいい！」</p>
<p>「……ああ、その通りだな」</p>
<p>　本当に、杞憂だったらしい。ナックルズが未登録名前に笑いかけていると、外がにわかに騒がしくなる。音からしてトルネードが戻ってきたようだ。未登録名前もそれに気づいたようで、嬉しそうに玄関を開ける。</p>
<p>「テイルスおかえりなさい！」</p>
<p>「ただいま。変わりなかった？」</p>
<p>「あのね、あのね！テイルスのしっぽはかっこいい！」</p>
<p>「えぇ！いきなりどうしたの」</p>
<p>　戸惑ってはいるが、照れた様子を隠しきれていない。そのやり取りにナックルズは苦笑した。<br />
　ついで、テイルスにソニックを見たかと尋ねると、テイルスは部屋の中を見渡してから状況を飲み込み、見ていないと答えた。時間はもうすぐ夕方を過ぎる、ナックルズはため息をひとつこぼして、ソニックを探しに行くと家を出た。</p>
<p>　流石にそこまで遠くへは行かないだろうと踏み近辺を飛んでいると、大きく隆起した岩場にその影を見つける。</p>
<p>「ソニック！なにやってんだよこんなトコで」</p>
<p>「ん、ああナックルズか」</p>
<p>　ソニックがいたのは、天の大地に空いた大穴、闇の大地への入り口が望める岩場だった。惑星フリーダムで尤も荒れた場所であり、穴付近は雷雲が立ち込め、強風も吹いているため生身で近づくことはできず、磁場も発生しているので乗り物も寄せ付けない。何より闇の大地は大昔の戦争による大気汚染が進んでいるので、立ち入ることは政府によって禁じられている。<br />
　この場所の歴史が話題に挙がる度、「人間の愚かしさ」が取り沙汰される。我々獣人はそんな無駄な争いをしない、そんな協定が各国の間で組まれているほどだ。</p>
<p>「時々、思うんだよ」</p>
<p>　その大穴を見つめながら、ソニックは言う。</p>
<p>「闇の大地、昔人間がいたっていう大地は、入り口ですらこんな状態だ。なのにその人間だっていう未登録名前は、あんなに無邪気で、いい子でさ。もしかしたら、オレたちはとんでもない勘違いをしてるんじゃないかって」</p>
<p>「……なにが、言いたいんだよ」</p>
<p>　ソニックは顔をしかめ、</p>
<p>「政府の動きが怪しいんだ。テイルスも気づいてる」</p>
<p>「な、まさかバレたのか！？」</p>
<p>「そこまでは分からないな。だけど、ここ数日……嫌な予感がする。気のせいならいいんだけどな」</p>
<p>　こういう時、ソニックの勘が外れるのを、ナックルズは見た覚えがない。</p>
<p>「とにかく、注意すればいいってことだよな。なるたけ未登録名前から目を離さないよう――ってお前！言ってるそばからほっぽり出してんじゃねえよ！」</p>
<p>「Sorry! でもオレにだってちゃーんと考えがあるんだぜ？」</p>
<p>「ほお、どんなだよ」</p>
<p>「どうせ理解できないだろ？」</p>
<p>「こんの……！あっくそ、待ちやがれ！」</p>
<p>　走り出したソニックを追って、ナックルズは岩場から飛び立つ。結局家へ帰り着いてもソニックが考えとやらを教えることはなかったが、政府の動きは胸に留め置くことにした。<br />
　目の前で、無邪気に笑う少女が悲しむのを見たくはないから。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>託した思い</title>
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		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:51:54 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[託した思い 　ソニックとテイルスは、普段はサウスアイランドの外れにある小島に二人で暮らしている。とはいえソニックは常に惑星を駆け回っているので、家というよりは拠点という扱いだ。その拠点は、見た目はただの自然溢れる小島だが...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e8%a8%97%e3%81%97%e3%81%9f%e6%80%9d%e3%81%84/" title="続きを読む託した思い">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>託した思い</h1>
</div>
<p>　ソニックとテイルスは、普段はサウスアイランドの外れにある小島に二人で暮らしている。とはいえソニックは常に惑星を駆け回っているので、家というよりは拠点という扱いだ。その拠点は、見た目はただの自然溢れる小島だが、島の中央にそびえる山をまるごとくり抜いて作った、テイルスの自慢の研究施設が存在する。<br />
　今日この島にやって来たのは、未登録名前の身体検査をするためだった。長い間コールドスリープ状態だったために体にどんな影響が出ているか、そろそろ詳しく調べる必要があった。それともう一つ重要なのが、未登録名前が真に純粋な人間なのか、ということだった。もし人間でなければ未登録名前を隠す必要はなくなり、堂々と外を歩けるようにもなる。だが検査の結果は、未登録名前が人間であるという事実を確固たるものにするだけであった。<br />
　やはり、未登録名前についてはもう少し慎重になるべきだ。ここがサウスアイランドの外れとはいえ、外に連れ出すのは危険だったかもしれない。テイルスは工房に備え付けられた情報処理端末を前に、小さくため息をついた。</p>
<p>「どうだ、テイルス」</p>
<p>　そこへ、ナックルズの声がかかる。ナックルズは外で採ってきたらしい果物をテイルスに投げて寄越した。テイルスは礼を言いながら受け取り、ふと足りない人数に気づく。視線を巡らせたテイルスの意図を汲んだナックルズは、ああと声をあげた。</p>
<p>「ソニックのヤツは、未登録名前を連れて走ってくるってよ」</p>
<p>「え、大丈夫かな」</p>
<p>「さすがに加減くらいわかんだろ」</p>
<p>　まるで、何を当たり前のことを聞いているんだという口ぶりに、テイルスは気取られないように笑った。普段はぶっきらぼうで衝突することも多いが、誰よりも仲間のことを考えているのは、ナックルズに違いなかった。</p>
<p>「んで、未登録名前のほうはどうなんだよ。何か新しい手がかりは？」</p>
<p>「うーん……今の所はなにも……」</p>
<p>　血液、脈拍、脳波から心電図まで調べたものの、人間であるという以外は一般的な特徴しか見当たらない。むしろ、テイルスたち獣人と近い体の作りをしていることに驚きだ。どうやら、遺跡であれだけ厳重な守りが施されていたのだから未登録名前自身に特別な力があるのでは、というテイルスの読みは外れたようだった。<br />
　逆に、あの装置は厳重ではないのだろうか。だとすれば同じような状態で他の人間が眠っている可能性も考えられる。</p>
<p>「そいつはないな」</p>
<p>　ひと通り話を聞き終えたナックルズは、果物をかじりながら言う。</p>
<p>「言ったろ、プリズムグラスは滅多に出るもんじゃねえ。それを鍵にして動く機械なんざ、厳重以外のなにもんでもねえよ」</p>
<p>「そう、だよね……」</p>
<p>　探せば、どこかの遺跡に未登録名前の仲間がいるのかもしれない。抱いた思いは、幻想に留まった。<br />
　何とはなしに、例のネックレスを掲げる。見た目はただのガラスにも関わらず、人間の叡智が詰まった鍵。それに守られ、一人眠っていた未登録名前。彼女の秘密が明かされるのは、まだ先になるだろうか。</p>
<p>「……なあ。ソレ調べたのか？」</p>
<p>「ああ、そういえば詳しくは調べてなかったかも。だけど、プリズムグラスってことは確定でしょ？」</p>
<p>「ちょっと貸せ」</p>
<p>　その声音から只ならぬ気配を感じ、テイルスはネックレスを手渡した。ナックルズは持参のルーペで、ネックレスのガラス部分……ではなく、フレーム部分をじっと観察する。そして。</p>
<p>「……これ、ただの錆じゃねえぞ」</p>
<p>「え？」</p>
<p>「血だ」</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　砂浜を駆けていると、未登録名前が息を切らせて立ち止まった。</p>
<p>「ソニック、まって、はやい」</p>
<p>「っと、飛ばし過ぎたか。ごめんな」</p>
<p>「ううん、いっぱい、たのしい！でも、ちょっと休む」</p>
<p>「そうだな、休憩するか」</p>
<p>　砂浜に敷いていたレジャーシートに並んで座ると、未登録名前がほうと息をついた。疲れの色はあるものの、晴れやかな表情をしている。こんなに明るく笑う子だったのか、とソニックはその横顔に小さく笑った。</p>
<p>「なあ未登録名前。ここの暮らしには慣れたか？」</p>
<p>「くらし、くらし……」</p>
<p>「あー、困ってることとか、ないか？」</p>
<p>　未登録名前は思い切り首を振った。</p>
<p>「ソニック、テイルス、ナックルズ。みんなやさしい！だから、こまるは、ない。……でも、」</p>
<p>　笑顔が、少しだけ曇った。</p>
<p>「わたし、おもいだす、ない。ありがとうしたい、できない。……かなしい」</p>
<p>　未登録名前の記憶はまだ戻らない。それを憂いているのはソニックたちだけではない。当の本人が一番、辛いはずだ。</p>
<p>「焦ることはないぜ。スピードは人によって違うんだ。未登録名前は未登録名前のスピードで、やっていけばいいさ」</p>
<p>　未登録名前は、目を瞬かせたかと思うと、</p>
<p>「……ありがと！」</p>
<p>　満面の笑みでそう言うと、もっと遊んでくる！と海に向かって走り出す。海に足をつけた未登録名前がばしゃばしゃと水を跳ね上げ、屈託無く笑う。ナックルズの家付近に川はあっても海はないので珍しいのだろう。午後になって強まった日差しを受けて、海はきらきらと輝きを増していた。水が苦手なソニックは浜辺でそれらを眺めながら、未登録名前に帽子を持ってきてやるべきだったかなとすっかり親のような心地でいた。</p>
<p>「ソニック」</p>
<p>　ぴくりと耳が動いた。振り返ればそこに、物憂げな面差しのテイルスとナックルズ。声をかけられた時からなんとなく、嫌な予感はしていた。<br />
　テイルスは、ソニックに詳しい分析結果を説明し始めた。<br />
　このネックレスには血液が付着していたことが分かった。時代でいえば人間戦争の終わり頃。それは未登録名前が眠った時代と一致する。加えて、このプリズムグラスは光だけでは動かず、人間の血液を流し込むことで動く仕組みであることが分かった。しかもただの血液ではなく、特定の遺伝子情報を読み取ることで起動する仕組みである。特定の遺伝子がなにを指すかまでは血液の状態が悪いために読み取ることはできなかったが、おそらくは血縁関係にある者同士の血ではないだろうか。これらを総合すると、未登録名前と親しい者があの機械を作り、戦争が終わるまで眠らせることにした後、瀕死の重傷を負ったためネックレスに血を流し込み、あとは光に透かすだけで起動できるようにして息絶えた、と推察した。<br />
　話を終えると、テイルスはしゅんと尻尾落とした。</p>
<p>「ボク、未登録名前に何か秘密があるから眠らせたんだと思ってた。だけど……未登録名前の家族は、平和な世界を願って、未来に託したのかもしれない」</p>
<p>　女の子ひとりを隠すには、と、ソニックは自身の言葉を思い出す。機械が大掛かりだったために先入観が働いていたが、未登録名前が生きていた時代は戦争の時代。未登録名前の家族が技術者で、あの設備も最初から所持していたという可能性もあった。それならば、未登録名前に秘密がなくてもあそこで眠っていた理由は十分である。しかし、現代は平和ながらも獣人の世界。人間であるというだけで、未登録名前は政府から隠さねばならないほど特別な存在になってしまった。</p>
<p>「テイルスー！ナックルズー！」</p>
<p>　二人がやってきたことに気づいた未登録名前は、屈託のない笑みを浮かべながら大きく手を振った。二人は一瞬顔を見合わせたが、ソニックはすぐに手を振り返した。</p>
<p>「未登録名前！みんな集まったし遊ぼうぜ！」</p>
<p>「お、おい」</p>
<p>　戸惑うナックルズに、ソニックは親指を立ててみせ、</p>
<p>「Easy, Easy! 考えたってしょうがないぜ！オレは、未登録名前ともっと仲良くなりたいしな」</p>
<p>　仲良くなりたい。それは未登録名前が言った言葉だった。未登録名前がソニックたちと仲良くなりたいと言うように、ソニックたちもまた、同じ気持ちでいた。人間だからだとか、可哀想だからということではなく、未登録名前というひとりの女の子として。</p>
<p>「なにしてあそぶ！？」</p>
<p>　太陽に負けないくらい顔を輝かせ、未登録名前はソニックたちに駆け寄った。</p>
<p>「って未登録名前！服濡れてるよ！はしゃぎ過ぎ！」</p>
<p>「んーだいじょぶ！」</p>
<p>「じゃねーだろ！女なんだから気を使え！」</p>
<p>「ナックルズしんぱいしょー？」</p>
<p>「どこで覚えたんだ、ンな言葉……」</p>
<p>「あっそれオレ」</p>
<p>「変なこと教えんな！」</p>
<p>「あはは！みんな、なかよし！」</p>
<p>　仲良し。その言葉に、三人は脳裏にかつての景色を映しながら、砂浜に楽しげな足音を響かせるのだった。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>君の音</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e5%90%9b%e3%81%ae%e9%9f%b3/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:47:39 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[君の音 　数日して家が出来上がると、の勉強会が始まった。主としてナックルズがの言葉を翻訳しつつ、テイルスが自宅から持ってきた古い絵本などを読ませているが、ナックルズも人間の言葉全てを知るわけではないため、日常会話をする程...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e5%90%9b%e3%81%ae%e9%9f%b3/" title="続きを読む君の音">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>君の音</h1>
</div>
<p>　数日して家が出来上がると、未登録名前の勉強会が始まった。主としてナックルズが未登録名前の言葉を翻訳しつつ、テイルスが自宅から持ってきた古い絵本などを読ませているが、ナックルズも人間の言葉全てを知るわけではないため、日常会話をする程度に至るまでまだ当分かかりそうだった。<br />
　合間に自分たちや未登録名前の日用品の買い出しをするが、異性の物をソニックたちが買うには目立ちすぎるので、サウスアイランドの知人女性に頼むことにしていた。知人は訝ってはいるものの、これまでに何度もこの街を助けてくれたから、と詮索はせずにいてくれた。<br />
　夕方になり、買い出しを終えたソニックとテイルスがナックルズの家に戻ると、まだ続いていたらしい勉強の声が聞こえてくる。</p>
<p>「ああ、そこはそうじゃねえって。さっきも言ったろ。発音が……」</p>
<p>　未登録名前の表情を伺うと、すっかり眉を下げてシュンとしていた。それでも、本を握りしめる手は緩まずに、必死で文字を追っている。<br />
　勉強を始めてから、二人はずっとこの調子だった。もともとナックルズは性格が荒く、反対に未登録名前は控えめである。また、未登録名前は自分から提案したことだからと弱音は一度も言わないでいた。<br />
　いたたまれなくなったテイルスは、思わず口を挟んでしまう。</p>
<p>「ナックルズ、もう少し言い方変えられないの？未登録名前はよく努力してるよ」</p>
<p>　するとナックルズは大きくため息をついた。</p>
<p>「あのな、教えるほうの身にもなれって。自分で勉強するよりめちゃくちゃ大変なんだぞ」</p>
<p>「それは分かるけど……そんなに強く言われたって、覚えるものも覚えられないよ」</p>
<p>「じゃあお前が代わりに教えるってか」</p>
<p>「ボクは、……」</p>
<p>「無理だろ？お前だってまだ覚えきれてねえんだ、自分に出来ねえことを人に言うなよ！」</p>
<p>「そんなつもりで言ったんじゃないよ！結局、自分が教えるのめんどうなだけじゃないか！」</p>
<p>「んだと！？」</p>
<p>　その時。<br />
　未登録名前が急に立ち上がり、弱々しい声で確かに言った。</p>
<p>「ごめん、なさい」</p>
<p>　そうして足早に自分の部屋へと向かうのを、三人はただ呆然と見送っていた。<br />
　その夜、未登録名前は夕飯の時間になっても戻ってくることはなかった。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　夜更けになり、ソニックが未登録名前の分の夕食を持って部屋を訪ねると、未登録名前の声が聞こえた。一音ずつ、ゆっくりと、時々つかえながらもこちらの言葉を声に出している。<br />
　ソニックは、部屋のドアを静かに叩く。</p>
<p>「未登録名前。オレだ」</p>
<p>　しばし間があって、それからドアがゆっくりと開いた。未登録名前は肩をすぼめて、遠慮がちにこちらを見ている。</p>
<p>「ホラ。なにも食わないでいるのはよくないぜ」</p>
<p>　食事の乗ったプレートを未登録名前に差し出すと、彼女はうつむき、ぽたりと地面に何かを落とした。涙だった。<br />
　部屋に入り、ソニックはソファに未登録名前を座らせる。その他にはまだベッドとテーブル、小さなクローゼットがあるだけの部屋だが、未登録名前がどこからか摘んできたらしい花が一輪、窓際に飾られていた。</p>
<p>「未登録名前」</p>
<p>　声をかけても、未登録名前は俯いたまま動かない。時折小さな肩を震わせて、ぱたぱたと涙を流すのみだった。ソニックは、未登録名前が泣いているのを見るのは二度目だったなと思いながら、未登録名前の前にしゃがんで視線を合わせる。</p>
<p>「未登録名前が頑張ってるのは、ナックルズだってよく分かってる。だから、力が入り過ぎてあんな言い方になっちまうんだよな」</p>
<p>　意味が通じないのは分かっている。だが今この時に必要なのは何なのか、充分に分かっていた。</p>
<p>「テイルスも心配性だからな。まあ、最初に未登録名前を見つけたのもあいつだから、その気持ちはよく分かるぜ」</p>
<p>　遺跡の地下、テイルスがペンライトを向けた先。未登録名前が身体を丸めて、寂しそうに眠っていた姿を思い出す。</p>
<p>「もちろんオレも。未登録名前のことは心配だし力になりたい。けどそれ以上に、未登録名前が何を考えてるのか知りたいんだ」</p>
<p>　ソニックは、未登録名前の手に触れた。はっとした未登録名前はソニックを見つめる。その表情はあの時と同じ。ここで未登録名前が目覚めたあの時と。</p>
<p>「未登録名前は、どうしたい？」</p>
<p>　この言葉は、未登録名前にも理解できたようだった。</p>
<p>「わ、たし、は」</p>
<p>　たどたどしく声を震わせながら、一生懸命に言葉にしようとする未登録名前を、ソニックはじっと見守っていた。</p>
<p>トントン</p>
<p>　そこへ、部屋の戸を叩く音と何者かの声が二つ。</p>
<p>『未登録名前、俺だ。起きてるか？』</p>
<p>『ボク　謝りたい。君に』</p>
<p>　それは人間が使う言葉だった。けれどもソニックには二人が何を言っているのか理解でき、未登録名前と顔を見合わせて思い切り笑った。<br />
　その笑い声で気付いた二人が、慌ててドアを開けてきた。</p>
<p>「おま、ソニック！いたのかよ！？」</p>
<p>「まーな。お前らがケンカしてるせいで未登録名前がかわいそうだったからなー」</p>
<p>「え、ええっと……本当ごめん」</p>
<p>「それを言う相手はオレじゃないだろ？」</p>
<p>　視線が未登録名前に注がれる。未登録名前は三人の顔を一つ一つ確かめるように見てから、大きな声でこう言った。</p>
<p>「わたし、いっぱい、いっぱい、なかよくしたい。ここ、いたい！」</p>
<p>　その後は、ごめんね、ありがとうの言葉と、明るい笑い声が部屋中に響き渡ったった。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
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		<item>
		<title>今の自分にできること</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e4%bb%8a%e3%81%ae%e8%87%aa%e5%88%86%e3%81%ab%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:46:40 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[今の自分にできること 　翌日の朝―― 　テイルスが台所でお湯を沸かしていると、背後から声がかかった。振り向くと、がこちらを伺うように顔をのぞかせている。分からないとは思いつつもおはようと挨拶をすると、は窓の外を指差して首...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e4%bb%8a%e3%81%ae%e8%87%aa%e5%88%86%e3%81%ab%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8/" title="続きを読む今の自分にできること">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>今の自分にできること</h1>
</div>
<p>　翌日の朝――<br />
　テイルスが台所でお湯を沸かしていると、背後から声がかかった。振り向くと、未登録名前がこちらを伺うように顔をのぞかせている。分からないとは思いつつもおはようと挨拶をすると、未登録名前は窓の外を指差して首をかしげた。外からは、何かを削る音や叩く音、荒っぽい声などが絶え間なく聞こえている。</p>
<p>「あれね、ナックルズとソニックが、君のために家を作ってるんだ。言い出したのはソニックなんだけど、ボクらもしばらくここに泊まるし、女の子は部屋を分けたほうがいいだろうって」</p>
<p>「……？」</p>
<p>「うーん、やっぱり分からないか」</p>
<p>　疑問符が消えない未登録名前に、テイルスは苦笑する。<br />
　言葉が通じないというのは、やはり不便である。かと言って、声をかけないということはしたくない。意味が通じなくとも大事なことは伝えられると、ソニックを見て学んだばかりだ。</p>
<p>「とりあえず、ごはんにしよっか」</p>
<p>　テイルスがパンが入ったカゴを見せ食べるジェスチャーをすると、未登録名前は嬉しそうな顔をしてうんうんと頷いた。500年も前になると食の違いは危惧するところだが、パンは知っている食べ物であるらしい。<br />
　外で作業をしていたソニックとナックルズを呼び、4人で食卓を囲む。食事は当番制で用意することに決まったので、今日はテイルスが、目玉焼きやサラダ、コーンスープを作った。未登録名前は初め緊張していたが、ソニックの「美味しいか？」の言葉で表情を和らげた。ナックルズに言葉の意味を教えられると、嬉しそうに「おいしい」と繰り返していた。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　午後になり、ソニックとテイルスは再調査のため未登録名前が眠っていた遺跡に訪れた。人間の言語を解読できるナックルズを呼ぶべきところではあるが、未登録名前を一人にしてはおけないことを考えると、言葉が分かる彼に未登録名前を任せるほうが良いだろう。<br />
　まず未登録名前が眠っていた部屋を調べると、部屋全体が特殊な加工によって地中レーダー等では容易に発見できないようになっていることが分かった。この遺跡が民家であるという先入観も手伝い長い間気づかれなかったのだろう。だが、未登録名前が眠っていた機械は彼女が目覚めたときに壊れてしまったらしく、詳しいことは分からなかった。推察を交えると、滅多に出土しないというプリズムグラスを鍵とし、外から開ける構造になっていることから、未登録名前は何者かによってコールドスリープを施されたとうかがえる。遺跡の建設年数を考慮すれば、未登録名前が眠ったのは人間たちの戦争の最中である。とするなら、近しい人間が未登録名前を戦争から守るために眠らせた、と考えるのが妥当だろう。</p>
<p>「コールドスリープや部屋の特殊加工は現在にもある技術だけど、どれも一般的じゃない。ただの民家に使うには……」</p>
<p>　持参の板型情報処理端末から顔をあげ、テイルスが唸る。ソニックも同意だというように肩をすくめた。</p>
<p>「女の子一人を隠すためだけにしちゃあ、大掛かりすぎるな。プリズムグラスだって、人間の技術でも貴重なもんだっていうし」</p>
<p>「こうなると、未登録名前自身になにか秘密があるのかも。記憶が戻れば分かるかもしれないけど……」</p>
<p>「でも記憶が戻るってことは、」</p>
<p>「分かってる。酷なことだって」</p>
<p>　記憶が戻れば、家族、友だち、住んでいた場所はどこだと尋ねるだろう。未登録名前が知る景色と今ある景色はまるで別世界だと言うだろう。そうなれば、言わざるを得ない。<br />
　人間は全て、500年前に絶滅した、と。<br />
　――テイルスの脳裏に、今朝の笑顔が浮かぶ。記憶が曖昧で知らないものに囲まれて不安でないはずがないのに、彼女は「おいしい」という音を言語にしてみせたのだ。</p>
<p>「ボク、人間の言葉を勉強しようと思う」</p>
<p>「未登録名前の記憶を探るため、か？」</p>
<p>「ううん。記憶が戻って未登録名前が辛くなっても、支えてあげられるようになりたいんだ」</p>
<p>　ソニックは目を見張ってから、ふっと笑みをこぼす。テイルスは、孤独というものを知っている。だからこそ出た言葉であることを、ソニックもまた知っていた。<br />
　隠し部屋への入り口を見つからないよう再び塞ぐと、二人は遺跡を後にしナックルズの家へと戻る。ソニックは自身の足で、テイルスはトルネードで来ていたためテイルスがやや遅れてやってくると、着陸の音を聞きつけてか玄関が開いた。現れたのは、未登録名前だった。</p>
<p>「テイルス、おかえり、なさい！」</p>
<p>　屈託ない笑顔でそう言った。驚いて口をぽかんと開けていると、後ろで見ていたソニックが声を上げて笑った。</p>
<p>「未登録名前のやつ、自分から言葉を教えてくれってナックルズに頼んだらしいぜ」</p>
<p>　考えていることは、どうやら同じだったらしい。<br />
　テイルスは頬をかきながら、嬉しそうに返事をする。</p>
<p>「未登録名前。ただいま」</p>
<p>　外は夕暮れ。星がまたたき始める。静かな夜に向かうなか、賑やかな笑い声が空に溶け込んでいった。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">370</post-id>	</item>
		<item>
		<title>人間の女の子</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e4%ba%ba%e9%96%93%e3%81%ae%e5%a5%b3%e3%81%ae%e5%ad%90/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:44:12 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[人間の女の子 　遺跡から引き上げたのち、少女をベッドに寝かせると、テイルスは発掘した首飾りと起動した機械の因果関係を専門家に尋ねた。それによると、首飾りにはめ込まれたガラスはただのガラスではなく、人間の遺跡からまれに出土...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e4%ba%ba%e9%96%93%e3%81%ae%e5%a5%b3%e3%81%ae%e5%ad%90/" title="続きを読む人間の女の子">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>人間の女の子</h1>
</div>
<p>　遺跡から引き上げたのち、少女をベッドに寝かせると、テイルスは発掘した首飾りと起動した機械の因果関係を専門家に尋ねた。それによると、首飾りにはめ込まれたガラスはただのガラスではなく、人間の遺跡からまれに出土する特殊なガラスであるという。通称を「プリズムグラス」といい、内部や表面に微細な加工を施すことで光や熱によって起動する電子回路だが、現在ではロストテクノロジーのひとつであり、その存在は発掘に携わる者のごく一部に知られるのみであるらしい。<br />
　ソニックが首飾りを光に透かしたことで、床――一部がエレベーターになっていたが経年劣化で壊れてしまった――が起動したものと思われる。そんな特殊な機械によって守られていた人間の少女。彼女の謎は深まるばかりであった。</p>
<p>「だいたいの事情は分かった」</p>
<p>　それまで大人しく聞いていた赤いハリモグラは、声を張り上げた。</p>
<p>「それで！なんで当然のようにウチに集まってんだよ！！！」</p>
<p>「ごめんねナックルズ。この子を休ませるのに、ボクらの家までじゃ遠いし」</p>
<p>「病人をトルネードに乗せるわけにゃいかねえしなぁ」</p>
<p>「いっつも厄介事ばっかり持ち込みやがってお前らは……」</p>
<p>「あはは……でも助かったよ。プリズムグラスのことも教えてもらえたし」</p>
<p>「ふん。俺くらいになりゃ知ってて当然だぜ」</p>
<p>　彼はトレジャーハンターを生業としているハリモグラ、名をナックルズ・ザ・エキドゥナという。ソニックたちとは長い付き合いであるが、一人や静寂を好む性格であるため、自分から危険に飛び込むソニックとは度々衝突している。しかし真面目で面倒見のいい性格でもあるがゆえに、今回の出来事も本気で怒っているわけではないことをソニックは熟知していた。<br />
　ナックルズの家は、先ほどの遺跡から1kmほど離れた場所にあるロッジ風の建物である。各地の遺跡を巡るために丁度いいと彼が一人で建てたものだ。</p>
<p>「んで？どうするんだよソイツ」</p>
<p>　ベッドに横たわる少女を一瞥し、二人に問いかける。ややあってテイルスが口を開いた。</p>
<p>「えっと……まずはこの子の健康状態を見て……」</p>
<p>「そうじゃねえ。このままここに置いとく気か？」</p>
<p>「このまま、って……ナックルズは、この子を放っておく気？この世界のこと、なにも知らないんだよ！？」</p>
<p>「だからって、ずっと隠してだっておけねえだろ！遺跡は全部政府が管理してんだ、そりゃ申請するか免許があれば誰でも調査はできるがな、見つけたもんは報告しなけりゃ犯罪だろうが！」</p>
<p>「そんなの分かってるよ！だけど、政府は人間の遺跡とか技術を解析するのに必死なんだ！そんなところに正直に報告なんかしたら、一生研究所暮らしだよ！そんなのかわいそうすぎるよ！」</p>
<p>「ここにだってずっとは置けねえよ！一生俺らが面倒みられるワケじゃねえんだぞ！」</p>
<p>「じゃあ見捨てるっていうの！？」</p>
<p>「そこまで言ってねえ！現実的じゃねえって言ってんだよ俺は！」</p>
<p>「おいお前らいい加減に――」<br />
　<br />
「ァ、」</p>
<p>　そのとき、三人の誰でもない声がした。口論をやめた二人が視線を向けると、少女が体を起こしてこちらを見ていた。少女は何度か目を瞬かせたあと、ほろりと涙をこぼした。それを皮切りに、少女は声もなくうつむいて、布団にいくつもシミを作る。<br />
　テイルスとナックルズが慌てている間に、ソニックは少女の手を両手で包んだ。</p>
<p>「大丈夫だ」</p>
<p>　ただ一言そう言って、少女の顔を覗き込んだ。少女は驚いて目を見張っていたが、ソニックの表情を見て涙するのをやめた。<br />
　言葉は、伝わらないと分かっていた。言葉の意味より、もっと大切なものが伝わればそれでよかった。</p>
<p>「arergawt……」</p>
<p> 少女がかすかに笑ったのを見てから、ソニックは二人を振り返る。</p>
<p>「なあ。まずはこの子に世界のことを知ってもらおう。その上で、この子自身に決めてもらう。自分がどうしたいかを」</p>
<p>「ボクは異論ないよ。女の子を放っておくなんてできないし」</p>
<p>「まあ……考えなしよりはマシだな」</p>
<p>　ナックルズは頭をかきながら、少女の前まで歩み寄る。少女はびくりと肩を震わせたので、ナックルズは膝を落として目線を合わせ、</p>
<p>『悪かったな、怖がらせて。……俺の言ってること、分かるか？』</p>
<p>『あ、……分かる。私の言葉、分かる？』</p>
<p>『少しだけな』</p>
<p>「な、ナックルズ！言葉分かるの！？なんで！？」</p>
<p>「だーー騒ぐなテイルス！また脅かす気か！」</p>
<p>「あっごめん……」</p>
<p>　どっちかというとナックルズの声の大きさに驚いていたような、という言葉をソニックは飲み込んだ。<br />
　ナックルズは職業上人間の遺跡を周ることも多く、その過程で人間が使っていた言語も多少なら理解できるようになったという。ただし、発音については遺跡に残されたわずかな映像記録を元にしているので正しいかは不明であったが、少女の発する言葉を聞いて確信に至った。<br />
　ナックルズの通訳を交えると、少女は記憶が曖昧らしく、ここで目覚めた以前のことはほとんど思い出せないらしい。それはかえってありがたいことだとソニックは思った。人間が絶滅しているなど、ショックが大きすぎることは今は伝えないほうがいいだろう。代わりに、少女は道端で倒れていたのでソニックがここまで運んだ、というように話した。すると少女はごめんなさいと言った後にソニックに向かって深くお辞儀をした。記憶が安定するまではここに居ていい、とも伝えると、慌てたようにまたお辞儀をした。丁寧で、謙虚な子であるらしい。<br />
　ある程度話がまとまってから、ソニックはあることを思い出した。</p>
<p>「そうだ。まだ名前を教えてもらってないぜ」</p>
<p>『……？』</p>
<p>『名前を教えてくれってさ』</p>
<p>　小首を傾げる少女にナックルズが通訳すると、少女はあっという顔をして、ゆっくりと発音してみせる。</p>
<p>「未登録名前」</p>
<p>「未登録名前？」</p>
<p>　ソニックが指差すと、少女、未登録名前は大きく頷いた。</p>
<p>「オレはソニック！こっちが、テイルス、ナックルズ」</p>
<p>　一人一人指差しながら教えると、未登録名前はあーと声を出しながら、同じように指差していき、</p>
<p>「ソニック、テイルス、ナックルズ、？」</p>
<p>「Good!」</p>
<p>「よろしくね、未登録名前！」</p>
<p>「……よろしくな」</p>
<p>　笑顔で言ってやると、未登録名前も笑って頷いた。</p>
]]></content:encoded>
					
		
		
		<post-id xmlns="com-wordpress:feed-additions:1">368</post-id>	</item>
		<item>
		<title>惑星・フリーダム</title>
		<link>https://swingswing.echo.jp/works/%e6%83%91%e6%98%9f%e3%83%bb%e3%83%95%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%80%e3%83%a0/</link>
		
		<dc:creator><![CDATA[ngr]]></dc:creator>
		<pubDate>Mon, 16 Jan 2023 08:42:33 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[惑星・フリーダム 　一筋の青い風が駆け抜ける。草原を駆け、川を滑り、森を抜けて岩山の頂上まで登ったとき、風は足をようやく止める。風の名は、ソニック・ザ・ヘッジホッグ。音速で走る青いハリネズミである。彼はその俊足と、自由な...  <a class="excerpt-read-more" href="https://swingswing.echo.jp/works/%e6%83%91%e6%98%9f%e3%83%bb%e3%83%95%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%80%e3%83%a0/" title="続きを読む惑星・フリーダム">続きを読む</a>]]></description>
										<content:encoded><![CDATA[<div class="planet-title">
<h1>惑星・フリーダム</h1>
</div>
<p>　一筋の青い風が駆け抜ける。草原を駆け、川を滑り、森を抜けて岩山の頂上まで登ったとき、風は足をようやく止める。風の名は、ソニック・ザ・ヘッジホッグ。音速で走る青いハリネズミである。彼はその俊足と、自由な冒険心をもってこの惑星フリーダムを常に旅してまわっている。<br />
　不意に、ソニックは体を丸めて岩山を転がり降り地面につくとまた駆け出した。向かった先は、小さな機械遺跡。その傍らには、一隻の赤い複葉機があった。</p>
<div style="height:100px" aria-hidden="true" class="wp-block-spacer"></div>
<p>　惑星フリーダムには、かつて人間がいた。人間たちは今よりも遥かに発達した文明を築いていたが、500年ほど前に起きた人間同士の大きな戦争を最後とし、今ではソニックたちのような獣人と、人間の混血がわずかばかり残るのみである。その爪痕として、フリーダムには人間たちが残した遺跡が点在している。惑星を浮遊する「天の大地」にはあまり大きな遺跡は残っていないが、惑星の内側にある「闇の大地」と呼ばれた地域では多く残っているというが、戦争の余波で大気汚染が進み、踏み入れるのは容易ではない。なので、学者が人間の文明を調べるときなどは、ここ天の大地に残されたごく少数の遺跡を調べている。<br />
　ソニックが降り立ったこの遺跡は、政府の調査機関の発表で人間の住居用だったことが分かっている。確かに外観はレンガを積み上げた、現代にもあるような一軒家で、中にあった機械設備なども生活のためであるものが多く、歴史的価値は乏しいとみえる。だから政府はこの遺跡の調査をすっかり放ってしまっているのだが、ソニックの相棒である二本の尻尾をもつ小狐、テイルスはこの遺跡に興味があるらしい。旅に出る前にもずいぶんと調べていたことをソニックは思い返していた。<br />
　いくつかの壊れた扉をくぐると、小さな部屋に行き当たった。壁にはモニターが埋め込まれており、その下には操作盤が設置されている。その横で、ゴーグルをつけて忙しなく機械を操作している子狐がいた。</p>
<p>「テイルス」</p>
<p>　ソニックが呼びかけると、テイルスはくるりとこちらを振り向いた。</p>
<p>「ソニック！帰ってたんだ」</p>
<p>「ついさっきな。テイルスは、まだこの遺跡を調べてたのか」</p>
<p>「うん。この遺跡には、まだ何かあるような気がしてさ」</p>
<p>　テイルスは、弱冠8歳にしてIQ300以上の頭脳をもつ天才的な科学者である。彼の発明品は世界中に知られており、特許も数多く取得している。そんな彼がこの遺跡にこだわる以上、まだ解明されていない謎があるのだろう。政府の発表よりも、ソニックは相棒のカンを信じている。だからこそ、もともとは自分の所有であった複葉機「トルネード」をテイルスにあずけていた。<br />
　とはいえ、技術者でないソニックがテイルスの手伝いをするわけにも行かないため、ソニックは床に並べられた発掘品を眺めることにした。発掘品は、食器のようであったり、風化した本であったり、用途不明の機械であったりと形は様々であるが、生活用品であることがうかがえる。とすると、やはりこの遺跡は大昔の住居だったのだろう。ただの住居にまだ謎があるとするなら、一体どこに隠されているのだろうか。</p>
<p>「……？」</p>
<p>　発掘品の一つに、キラリと光るものがあった。そっと持ち上げて土を払うと、それは小さな首飾りだった。金属は赤錆びているものの、飾り部分にはめ込まれたなにかの鉱石は光をうけて反射している。</p>
<p>「ああ、それただのガラスだよ」</p>
<p>　作業を再開していたテイルスは、手を止めてゴーグルを押し上げた。</p>
<p>「そうなのか？キレイなのにな」</p>
<p>「錆びちゃって、ちょっと勿体無いけどね」</p>
<p>　ソニックは、何とはなしに首飾りを掲げる。遺跡の屋根が落ちた部分から入り込む太陽光が、ガラスを透かして一層きらきらと光った。<br />
　その時だった。<br />
　がくん、とソニックが立っていた床が抜けた。</p>
<p>「うわっ！？」</p>
<p>「ソニック！」</p>
<p>　テイルスが慌てて手を伸ばすが落下速度のほうが早かった。そのままソニックは床下へ転落、突然のことで態勢も整わず思い切り背中を打つ。幸いなことに高さが2mもなかったようで、大きな怪我はせずにすんだ。</p>
<p>「大丈夫？」</p>
<p>　ヘリテイルで飛んできたテイルスが、心配そうにソニックを起こした。</p>
<p>「Oops&#8230; 背中打っただけだ。しっかしなんなんだ一体……」</p>
<p>「足元にこんな空間があったなんて全然分からなかったよ。地中レーダーも使ってたはずなのに……ねえ、あれ！」</p>
<p>　テイルスがペンライトをかざすと、前方に機械が見えた。ガラスの円筒を横倒しにしたような形をしており、わずかな光を放っていることからまだ動いている事がわかる。テイルスとソニックは顔を見合わせ頷くと、ゆっくりその機械に近づいた。機械を覗き込んで、言葉を失う。<br />
　知識としてしか知らない生き物。人間が、機械の中で胎児のように体を丸めて眠っていた。<br />
　フリーダムの人間は大昔の戦争で全て滅んでしまっているが、獣人たちの中には人間の血を受け継ぐ者もいる。そういう者でも耳の形が違ったり尻尾が生えていたり、どこかしらに獣人の要素があるが、ここに眠っている者はそのどれとも違っていた。<br />
　純血。これが本当なら、500年ぶりのこととなる。</p>
<p>「そ、ソニック……」</p>
<p>　どうしよう、と言いたげなテイルスの表情を見て、ソニックも唸ってしまう。未だ頭の整理がついていないために、どうすればいいかなどは浮かんでこない。<br />
　この発見を政府に報告するのか？それとも黙っていた方がいいのか？そもそも、この中の人間は生きているのか？様々な思慮が浮かんでは消える。思わず機械の表面に手が触れた。<br />
　その瞬間に、ぱっと機械の表面を光が走った。光は幾何学模様を描きながら機械全体を走り抜け、終えるとすべての光を失った。そして、ゴウンという重々しい音とともに、円筒の上半分がスライドし、開いた。<br />
　人間が、起き上がる。ソニックたちの基準で同じだとするなら、14,5の少女であった。</p>
<p>「otoesn docoe ？」</p>
<p>　一言だけ、少女はそう言うと、ふらりと倒れ込んでしまう。テイルスが慌てて少女の手を取ると、脈はあるので気を失っただけらしかった。</p>
<p>「ずっと眠っていたから、急に動いたせいだと思う……ねえ、ソニック。この子」</p>
<p>「……とにかく、場所を移そう。ここじゃどうにもならない。テイルス、先に行って引き上げてくれ」</p>
<p>「わ、わかった！」</p>
<p>　テイルスが上階へ飛んだのを見送って、ソニックは少女をそうっと抱き上げる。眠り続ける少女は、初めて見た人間にも関わらず、自分たちとなにも変わらない気がしていた――</p>
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