平行線と境界線
たまたま封印を解いたのがクルークだったからって。 これはあんまりだと思うんだ。「どうした?」私の眼前で嫌らしい笑みを浮かべるクルーク……じゃなく、クルークを乗っ取った別のなにか。「女というのは、こうされるのが好きなんだろう…
ぷよぷよ短編あやしいクルーク
いつかの朝日で会いましょう
「は?」 かの、厳粛と恐れられ威風堂々を体で表してきたような男、真田弦一郎の、これまでにただの一度も聞いたことのない声に幸村は思わず目を丸くした。「は、って……の誕生日に何あげたのって聞いたんだよ」 完全に足を止めてしまった真田の様子を見て…
テニス短編真田弦一郎
あの日の陰よ安らかに
「バカッ」 1階への階段を降り切ろうというところで女子とすれ違う。その子は片手で顔を覆いながら、ものすごい勢いで駆け上がっていった。後に残されたのは甘い香水の香りと、「……やっぱ仁王か」「プリ」 階段の横、倉庫みたいになってるスペースで壁に…
テニス短編仁王雅治
少女漫画のインサイド
---前回のつづき 何がどうしてこうなった。ひたすらタオルや飲み物を配り歩き、進行を確認しながらふと思う。 やたら長い車がうちの前に止まったのがつい数時間前の朝。その中からまごうことなき跡部様のお姿が参上し、呆然とする私に眉をひそめて「メー…
テニス短編跡部景吾
少女漫画のアウトサイド
「ないわー」 思わず口にした瞬間、ガチャッと生徒会室のドアが開き、入ってきたのは我らが王様、跡部景吾様だった。「……何がねえんだよ。アーン?」 案の定誤解した跡部様は、思い切り私を睨みつけた。美人が怖い顔すると迫力倍増だから勘弁してほしい。…
テニス短編跡部景吾
ヘビに微笑まれたカエル
「……何やってんだ」「あ、海堂君」 背後からかかるドスの効いた声に振り返ると、ランニングウェアを着た海堂君が怪訝そうに立っていた。 海堂君とは家も近所で学校も同じなので(さすがにクラスは違うけど)、会えば挨拶するくらいの仲だ。逆を言えばそれ…
テニス短編海堂薫
風を受ける羽
今日は朝からついていなかった。目覚ましが鳴らなかったおかげで電車を逃し、学校についたら遅刻で叱られ、階段を登っている途中で転んで膝を擦りむき、友達とは些細なことで喧嘩をし、帰り際には運悪く先生に頼まれごとをしてこの時間まで居残りだ。ざっと…
テニス短編向日岳人
アブソリュートゼロ
「仁王君、あのさ」帰り道、不意に立ち止まった。その瞬間に俺は、ああまたかと思った。長くて三ヶ月、短くて一日。そのいずれも、今まで付き合ってきた女はこんな風に立ち止まって別れ話を切り出してきた。付き合ってなお女遊びをやめず、ろくに構いもしない…
テニス短編※,仁王雅治
天然下克上
「あっ日吉君いたー。跡部君がこれ渡してってー」 昼休み、購買から戻る途中に何ともイラつく話し方で呼び止められた。わざと一拍置いて振り返る。水瀬透子先輩がニコニコしながらプリントを差し出していた。内心で舌打ちしながら受け取る。「……なんでいつ…
テニス短編日吉若
ラブロマンスにしてみよう
「あああ~~なんでなの~~~~」 机に突っ伏して足をばたつかせる私は、先程三回目の失恋を遂げたばかりである。「しゃあないやん。振られたもんは」 そんな私を見向きもせず涼しい顔で本を読むのは、クラスメイトで一年からの友達である忍足侑士。長い付…
テニス短編忍足侑士
出会いの数だけ
出会いの数だけ サウスアイランドで最も大きな浮遊大陸に存在する大都市、セントラルシティ。大統領官邸を有するこの街は商業を中心として栄えており、大陸の広さを利用した航空貿易も盛んで、日々多くの獣人たちが行き交っている。 そんなたくさんの人や物…
Planet Breeze
暗雲、迫る
暗雲、迫る あれからおよそ一か月が経ち、は少しずつこの生活に慣れたようだった。元々頭が良いためか言葉や知識の飲み込みも早く、好奇心の強さもあってソニックたちとのコミュニケーションも増えた。記憶が戻る気配はまだないが、テイルスの分析ではリラッ…
Planet Breeze