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カボチャの警鐘

 ぎりぎり、と頭が痛む。割れそうなほどの痛みに息を吐くとマスクの内側が熱くなった。テレビから流れてくる町の浮かれた様子も、もう僕の耳には届かない。 体を動かせば寝そべったソファが悲鳴を上げた。まるで人の喉をきゅうと締め上げるときみたい。人の…

二月の丘

 その女の子の瞳は、黒色をしていた。 小さなころ、ママにもらった宝石ずかんでみたことがある。黒い水晶だ。真っ黒だけど、つややかで、なめらかな色をした水晶。ママが教えてくれたよ、水晶は、この湖の名前なのよって。ほかにも、水晶にはたくさん色があ…

安定フラグ回収

--だいぶメタい、会話文のみ「ねえ!!!!俺のドラマ見た!?!?」「うるっさいな何時だと思ってんの!!アパート暮らしなめんなよ!!!」「んなことよりドラマ見たかって!!ネット配信されてるやつ!!!」「見たけどそれがなにか!?」「えっマジ?て…

一発殴るじゃ済まされない

 おなじみのボイラー室に、フレディさんの姿はなかった。おかしいな、いつもだったら、よく来たなぁ#name1#って大げさに手を広げてくるのに。そして私が、来るもなにもフレディさんが呼ぶんでしょうって言って、そうだったかなと笑う彼を見ているのに…

きみを頼るはなし

 きみだけが頼りなんだ。 言葉を発していなくても、マイケルが言っていることはわたしには分かる。それだけ一緒の時間を過ごしてきた仲だから。 だけど、いくらマイケルの頼みでもきけないものはある。それが、マイケルが大事にしてる妹のことならなおさら…

おかしたりない

「フレディさんは、なんでもできるのね!」 色とりどりのお菓子を出してやれば、はキラキラ輝く瞳で俺を見上げた。テーブルの上にはキャンディやチョコレートやクッキーで埋め尽くされている。 テーブルに寄りかかった俺は、の頭を撫でてやった。さらさらの…

レイン・コール

 まっくらい夜の中にざあざあと降る雨を、ぼんやりと見上げていた。冷たいという感覚ももはやなく、ぬかるんだ地面に足を投げ出しながらコンクリートの硬い壁に背中を預けていた。「しくったなぁー」 豪雨にかき消えてしまうくらいの声で、わたしは独りごち…

純情可憐殺戮障害

 はぁ、ひっ、は、は、 走る男の息は乱れに乱れ、目はぎらぎらと血走りながら涙をこぼす。満月は鬱蒼とした木々に隠れてしまい、眼前の闇を照らすものは何もない。こうなってしまえば頼れるのは音だけだ。けたたましいモーター音と、大きな男の足音から遠ざ…

呼吸と同義

--マイケル一人称 の背中はとても小さい。腰に腕を回して、僕が少し力を入れれば、ぱきりと折れてしまいそうだ。背中だけじゃなく、手も小さいし首だって細い。の体は、なにもかもが僕とは違う。「……マイケル」 腕の中のが、おずおずといった調子で名前…

どうやら始まらない

「ハロー、ホラー映画は好きかい?」 深夜0時を過ぎたころ、鳴った電話を取れば開口一番謎の質問を投げられた。この声は男性のものだろうか、機械でも使っているのかしゃがれたようなノイズが走って判別つかないが、どちらにせよ完全にイタズラ電話だ。これ…

この気持ちに名前を付ける

「……っぐ、」 喉を掴まれ息が止まる。そのまま壁に押し付けられて足が浮いた。懇願するように腕を叩くも、相手――シェイプはほんの少し首を傾げるだけで、全く気に留めていないようだった。 今日のシェイプの動きは執拗そのものだった。他のサバイバーに…