不透明のおばけ
いつものように入念な計画を経て、狙いの家に住む人間を殺した。理由は大したものじゃない。ただ目について、それで殺しやすそうだったから。それだけだ。 身寄りのない中年の夫婦だったので殺すのは簡単だった。だが直前に予想外の反撃をくらい、腕に深い…
DbD短編ゴーストフェイス
よみがえるゆうれい
「これで12回めなんだよ」 エンティティの足が振り下ろされる瞬間に、は僕に笑いかけた。そのときは、僕にはが何を指しているのか分からなかった。 上司を殺して、エンティティに言われるがまま霧の森の殺人鬼になって、僕はやっと安心できた。ほどよく殺…
DbD短編レイス
焼け付いた瞳
思えば、マイケル・マイヤーズという男の声を、私は一度も聞いたことがなかった。 マイヤーズ家とは隣近所だったことから、彼の姿を見かけることは多かった。だが彼は、同い年の子どもたちが遊んでいても決して輪に入らず、また声を出しているところも見た…
恐怖映画短編マイケル
水を切る岸辺
13日の金曜日。 それはジェイソンが、最もママの声が聞こえる日なんだという。 だから、ジェイソンはこの日が来ると、朝から一人でどこかへ行ってしまう。普段は自分から出かけるなんてほとんどなくて、いつも、このお家でわたしと一緒にご飯を食べたり…
恐怖映画短編ジェイソン,フレディ
できれば夢なんかじゃなくて
ぼた、ぼた。 吐いた血が床に滴り落ちる。それでも私は、足を引きずり壁を伝いながら必死に歩いた。 ボイラー室は、薄暗かった。煙こそ漂っているが機械が動いている様子はなく、むせ返るような暑さも目を焼く炎も全く感じられない。音もなく、自分の足音…
恐怖映画短編フレディ
執着の的ということ
「やあ、」 儀式のない時間。何気なく訪れたコールドウィンドファームの丘の上で寝そべっていると、不意に覗き込んできたその顔に目を見張る。顔、というより、ふざけたマスク、が正しい。「……付けてたの?お得意の付け回し?」 体を起こして嫌味たっぷり…
DbD短編ゴーストフェイス
ファンタジック・シネマ
女の子が笑っている。サテンのリボンを付けた白いワンピースの女の子が、くるくる踊っては楽しげに笑っている。まだ小さな女の子は時々つかえて、そのたび照れくさそうにはにかんでいた。不意に女の子が振り返ると、こちらに向かって駆け出した。画面が切り…
恐怖映画短編フレディ
連戦連敗、継続中
ひゅん、と空を切った爪がエンティティに阻まれる。その向こうで、こちらを振り返りながら走るの姿を見送っていると、周辺の霧がまるで波のように引いていき、バダム幼稚園はいつもの静けさを取り戻した。 園内に戻り、椅子に腰掛けるとテーブルに足を投げ…
DbD短編ナイトメア
停滞の帳
ため息をつく。作業部屋にこもった熱気が汗を走らせ、仮面の内側に伝い落ちた。 どうにも手が進まない。煮詰まったみたいだ。 僕は蝋細工からナイフを離して机に置くと、裏口からこっそり外に出た。こういうときは、気分を少し変えてみよう。 すっかり夜…
恐怖映画短編ヴィンセント・シンクレア
万象の奇夜
自らの命を試し、そして死ななかったことは私の価値観を変えるに充分な事象であった。そして深く理解した。命はこの世で最も強く、そしてこの世で最も尊ぶべきものでなければならないと。 それらを簡単に捨ててしまう愚かな人間は、今一度学び、そして知る…
恐怖映画短編ジグソウ
ピンヒールと少女
長いピンヒールが似合うねと言われた。 足がきれいだからよく映えるだろう、そう言ったのは付き合いたての恋人だった。何かのきっかけでそういう話になって、そしてそのまま近くの靴屋に入った。色とりどり、形もさまざまな靴たち。今まで選ばなかったもの…
ソニック短編ソニック
真夏の驟雨も悪くない
お店から外に出ると雲行きがあやしく、今にも降り出しそうな気配をみせていた。急いで帰ろうと走り出したところでぽつりぽつりと降り出してしまったので、仕方なく近くの軒先を借りることにした。シャッターが閉まっていたので少し申し訳ない気持ちになりな…
ソニック短編シャドウ