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始まりは些細

「ねえリンク」 「な、なに?」テーブルに頬杖ついて、じいっと僕のことを見つめていたが突然口を開いたものだから、僕は少したじろいだ。彼女の癖なのだが今だに慣れない。というのは、彼女はなんと他の世界(ニホン、っていったかな)からやって来たら…

生まれなかったうさぎ

「やあ、また会ったねりんく」 「やあ」「こうしてまたきみと会えるなんて、夢にも思わなかったよ」「ぼくもそう思うよ」「さて、どうしてきみはここにきたんだい?」「きみに言いたいことがあって」「なあに?」「ごめんね、って、言いたかった」「それは、…

それから

それからここは、とある国のとある町。小さな港がひとつあるだけの、何の変哲もない町。だけどここには、わたしの幸せがぎゅって詰まってる。「ただいまー」「おかえり、リンク!」リンクは、あー疲れた、とか言いながら、ソファーにどさっと座った。「今日の…

「またね」

「またね」「え、もういないって……」宿屋に行くと、リンクくんがもう町を出て行ったことを知った。おかみさんも困った顔をしてため息をついている。「夜は危険だからって、言ったんだけどねえ。どうしても行かなきゃいけない理由ができたんだって、なんだか…

嘘と本当

嘘と本当日が少し傾いて、影が少しだけ長くなったころ。すっかりおなじみになった公園に、リンクくんがいる。わたしは嬉しくなって彼に駆け寄った。「こんにちは!リンクくん」「。こんにちは」にこりと微笑むリンクくんは、寂しそうじゃなかった。やっぱり誰…

気持ちの名前

気持ちの名前この気持ちはなんだろう。リンクくんといるのは、とても楽しいはずなのに。でも、苦しくもあるんだ。どうしてかなあ。あの「きれいな」顔を見ると、胸がぎゅうっとするんだ。「ねえ、お母さん。リンクくんって、不思議なんだよ」お夕飯を待ってい…

君の音色

君の音色今日はおうちの用事で、リンクくんのところに行けなかった。でもせめて挨拶はしたくて、夕方、宿屋のほうに行ってみた。けれどリンクくんはいなかった。わたしはがっかりしながら、家に――――どこからか、笛の音色が聞こえる。聞いたことない曲。誰…

悲しみと未来

悲しみと未来その翌日、お昼になるとわたしは宿屋に向かった。リンクくんと約束したから。明日また会おうって。……違和感の正体は、まだわからないけれど。でも会いたい。会いたいって気持ちが、すごく強くて。わたしはいてもたってもいられなかった。宿屋に…

始めの日

始めの日まだ幼い男の子が、一人で町の宿屋に泊まっている。という話を聞いて、わたしは好奇心からその男の子を訪ねることにした。ハイラル王国から来たらしくて、馬を使ってここまできたとか。随分遠くからきたんだなあ。わたしはわくわくしていた。わたしは…

劇場版Dead by Daylight -月下の遺訓-

 どんなに大きな満月であろうと、その森の霧を晴らすことはできなかった。深く横たわる霧は夜風に乗って生き物のように周辺を彷徨い、蠢くように地面を撫でる。 はあ、ひ、はっ、 その中に、人間の息遣いが混じる。荒く不規則、足音は重く、森の隙間を走り…

なのかめ

次の日も、は出てこなかった。家を訪ねる気にはなれず、悶々としたまま仕事をして、そのまま家に帰った。今日は、七日目。明日の朝には村を発たなければならない。そのために、普段の服から勇者の服へ着替えて、しまっていた剣もだした。けれど。このままでい…

むいかめ

朝からの姿を見なかった。いつもなら雑貨屋を手伝ったり畑をいじったりしているのに。聞くと、村の人たちもを見ていないという。もしかして、やっぱりどこか怪我をしていて、後になって響いてきたんだろうか。心配になって、仕事を終えてからの家を訪ねた。ノ…