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閑話・リンクがきた

「あれ?」いつものように丘に行くと、ダークと一緒に知らない人が座っていた。「こんにちは」「こ、こんにちは」挨拶して、ぎょっとした。ダークと同じ顔してる。まるで色違いみたいだ。その人は、緑色の服を着ていて、髪は金髪、目の色は青だった。もしかし…

まものとにんげんのこい

「ん、今日は早いな」「うん。ちょっとやることがあってね」わたしはいつもよ少し早く、丘に来た。ダークはちょっと嬉しそう……に見えたけど、気のせいかもしれない。「今日は森できのこを採ってくるから」「一人でか?」「そうだけど」「駄目だ!」ダークが…

ねがいごと

今日は、アイツが来なかった。いつもなら昼前に来て弁当を持ってくるはずなのに、夕方を過ぎても姿を見せなかった。いや、そもそもこんなところに毎日来るほうが異常なのであって、別に俺が気にするようなことではないのだ。そう。大したことじゃない。……な…

おかえし

いつものように丘に登ると、そこにダークの姿はなかった。どこかに出かけているんだろうか。珍しいな、とわたしは思った。お弁当、作ってきたんだけどな。今日はお弁当箱におかずをいっぱいつめて、自家製のパンをつけて。卵焼きも甘くして、張り切った。でも…

おべんとう

その日、わたしは緊張していた。なぜかと言うと、初めてダークにお弁当を作ってきたからだ。いつも話相手になってくれるから、そのお礼のつもりで。魔物とはいえ食事くらいするだろうと思ったんだけど……よく考えたらダークが食べてるとこ見たことない。大丈…

にちじょう

「やっほーダーク……あれ」いつもの丘にいくと、ダークは眠っていた。起こすのもかわいそうなので、起きるのを待つことにした。魔物でも眠ることがあるのか、と感心しながら隣に座る。改めて見ても、かっこいいなぁ。これで人間だったら、きっともてただろう…

であい

いつの日からか。彼はそこにいた。小さな丘の上にある大きな木の下で、たったひとりでそこにいた。その姿が、どこか寂しそうに見えたので、わたしは彼のもとに足を運ぶようになっていた。「きたよ、ダーク」「……よくもまぁ飽きねえな」わたしは寝そべってい…

恋人のいない夜

カチ コチ カチ コチいくら待っても、あいつが帰ってくる気配はない。太陽は既に山際、薄紫の空が濃紺へ変わる時間になるというのに。一体どこをほっつき歩いてるんだ。俺がこんなに心配してるっていう――いや、心配なんかしてない。ただちょっと……そう…

ムーンライト・シング

夜、ふと目を覚ましたら、カーテンの隙間から光が漏れていた。あまりにそれがまぶしいものだったので、こんな夜更けに外でなにかあるのだろうかと不思議に思いながら、カーテンを開けた。そして、息を呑んだ。それは月の光だった。でもただの光じゃない。満月…

夢より現実

めぐる「え、あ、あれ?」わたしはポケットの中を一生懸命探った。けれど期待した、あるはずの手ごたえはない。手さげかばんのほうに入れたのかも、とかばんの中を探したけれど、やっぱり目的のものはなかった。うそ、どこかで落とした?あんな大事なものを?…

DEIR PAIDER

じゃあ、お話をしよう。ここじゃない、どこか遠い国のお話。昨日のことだったかもしれないし、はるか昔のことかもしれない。そう、とても曖昧なんだ。まるで夢のなかのようにね。でもそこは重要じゃない。大切なのは、ここからさ。一人の少年がいた。馬を一匹…

わたしが人魚になった日

「きみ、そこで何してるの?」振り向いた先には、金髪碧眼の少年が立っていた。わたしは視線を海に戻してから答えた。「海を見ているの」「それだけ?」「それだけ」他になにをしているように見えるというのだろう。少年はわたしの隣に当然のように座って、同…