文章

お化けがこわい!

※会話のみ「ねーちょっと聞いてよ、こないだ怖いことがあったのよ」「なんだよ」「夜に一人でさ……」「待った。やっぱり聞かねえ」「えーなんでよ?あ、もしかして怖い話苦手?お化けとかそういうの」「べっべつに苦手じゃねえし!」「ムキになるあたりが怪…

Water Garden

「きみって旅人なの?」通りを歩いていたら、頭上から声が降ってきた。女の人の声だった。細くてきれいな声をしてて、一瞬聞きほれたけど、あわてて声の主を探した。すぐにその人は見つかった。そばの家の開け放した出窓から、ひじをついてこちらを見ていた。…

雨に遊ばれて

城下町に買い出しに行こうと思い平原を歩いていたとき、急に雨に降られた。家を出たときは天気がよかったから傘は持っていなかった。仕方ないから、手近な木のしたで雨宿りすることにした。ざああ……雨足はどんどん強くなる。これじゃいつ帰れるか分からない…

憧憬する世界

この間から、ここ雲の上と地上とが繋がったらしい。リンクっていう男の子がカケラあわせをしたから、埋れていた秘密の道が開放されたようだ。雲の上でしか暮らしたことなかったから、地上がどんな世界なのか見てみたい。どんな世界なのかな。風の噂でしか聞い…

夜に溶けたふたり

その日は、とてもきれいな夜でした。満天の星は宝石箱をひっくり返したみたいにきらきらきらと輝いて、夜空の、黒いビロードをしいたような闇にぽつぽつぽつと浮かんでいました。風は幾分吹いていて、ハイリア湖の湖面をさらさらなでます。その音がまた、鈴の…

FOLLOW YOUR DREAMS

その子と会ったのは、村からほど近い森の中だった。わたしは川に水を汲みにきていて、その子は顔を洗っていた。緑色の帽子と服を着ていて、まるで森の一部のようになじんでいて。木々の間から差し込む太陽の光が、その子の金髪をてらして、きらきら輝いていた…

人形たちの永い午睡

うだるような夏の暑さとは裏腹に、その日はしとしとと雨が降っていて、涼しい日だった。仕事もないので、わたしはソファに横になりウトウトしていた。ここのところずっと暑かったから、夜寝付けなかったんだ。今日は久しぶりにゆっくり寝られそう。もうちょっ…

ワンルームサバイバル

城下町の家賃というのはとても高い。だからわたしのように、女性ひとりが一つの部屋を借りているというのは珍しい。「だから一緒に暮らそうって言ってるのに」「その話は何度も断ってるはずなんだけど?リンク」わたしは隣のリンクに睨みをきかせる。テルマさ…

ふたりのかえりみち

へとへとになるくらい暑かった日中とはうってかわって、午後は涼しい風が吹いていた。空が真っ赤に染まって、雲が紫色にたなびいていてとてもきれい。その中を、わたしとリンクは並んで歩いていた。「涼しくなってよかったな」「そうだね」会話はあまりないけ…

うさぎにご用心

「あのさ、闇の世界に行ったリンクは、うさぎになったのよね」「そうだけど、それがどうかした?」「闇の世界は己の心を映した世界なのよね?」「うん」「ということはつまり、リンクは縄張り意識が強くて性欲が強いってことね!」「ブハッ!!なんでそうなる…

青い空に

青空のような人。それが、最初の印象。その人は城下町を走りまわっていて、いつも忙しそうにしていた。背中に立派な剣と盾を背負っていたから、旅人なんだってすぐ気が付いた。時折立ち止まって、町の人に話を聞いては笑顔を振りまく。端正な顔をしているから…

言葉の意味を知るより先に

「ちょっとリンク、休むときはわたしの家に泊まってって言ったじゃない。なんでマリンの家行くのよ」「だって、女の子一人の家に泊まるなんて」「いいじゃない別に。わたしたち恋人同士なんだし」「そうだけど……でもなあ」「でも何よ。なにか問題あるわけ?…