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きみとみたゆめ

「あーくそっ!あといっこ鍵がみつからん!」あたしはゲームボーイから顔をあげて叫んだ。ちくしょー、ここ開ければあとはボスだけなんだけどな。地図にもう宝箱の印がないとこを見ると、うえから降ってくる系なんだろうか。厄介だな……。「うう、今日はもう…

何よりも深く

ダークは私にやさしくない。一応、私たちは想いが通じ合った仲なんだけど、それも私が好きって言っただけで、返事はもらってない。頷いただけ。あれ、それって私が勝手に思い込んでるだけなのかな。本当は別に私のことなんて好きでもなんでもなくて、浮かれて…

空からしあわせ

※スカウォまだやってない。ゼルダの口調がわからんので想像。リンクとゼルダとわたしは、幼馴染。子供の頃はよく3人で遊んだりしたけど、今はわたしだけ離れてる。なんでかって?それはとても難しい問題で。わたしはリンクのことが好きなんだけど、でもリン…

寂夜

明かりを消す。窓から差し込む月の光だけが、わたしの部屋をてらした。冷たい布団に潜り込み、体をぎゅっと丸める。「おやすみなさい」返ってくる言葉は、ないけれど。今はいない同居人に向けて。彼、リンクは、今どうしてるだろうか。月明かりの下で、眠って…

ドジな子

がちゃん。派手な音を立てて、壷が割れてしまった。「はドジだなー」「う、うるさいな」あわてて屈み、破片を拾おうとすると、リンクに制されてしまった。危ないから、とわたしをのけてさっさと破片を拾い集めてしまう。もう、子供みたいな扱いして!「昔から…

もっと見せてよ

「……?」「ん、なにリンク?」わたしは料理する手を止めないまま、返事をした。「髪の毛。上げてるから驚いたよ」「ああ、ちょっと邪魔になってきたからね。で、何か用事?ごめん今ちょっと手が離せないんだ」「そっか。じゃあ後でいいよ」……とは言ったも…

離れてやらない

「ねーリンク。いい加減離れてよー」「んー……」さっきからこうして、リンクがわたしの背中にひっついたまま離れようとしない。「ね、もうそろそろご飯作らないといけないから」「後でいいだろ」「リンクー……」何を言っても、動く気配がない。わたしは困り…

審神者たちの物語り

おや、こんなところまで見に来てくれるのかい?ありがとう。それじゃ、とっておきの情報を教えよう。
でも、ほんとうにとっておきだからね。簡単に教えるわけにはいかないな。

合言葉は「あの桜の花言葉をローマ字で」頼むよ。

桜の八日

 主の行き先は分かっていた。確証があったわけではないが、彼女が行くとしたらそこしか考えられない。まるで何かに導かれるように、おれの足は止まらず走り続ける。幾度も辿った道。ある時は気晴らしだと、またある時は皆と祭りだと。主とともに紡いだ思い出…

山茶花の二十六日

山茶花の二十六日 地面を舞う枯れ葉の数も減り、風景から色が失われて行きつつある時分。迫る年末に向けて本丸はにわかに忙しさを増していた。普段の出陣や遠征に加え、本丸内の大掃除や、年末年始は閉まる万屋街へ必需品の買い出し等、やることは山積みだ。…

石蕗の十一日

石蕗の十一日 ついに、と言うべきか。 ようやく、と言うべきか。 私は端末が受信した一通のメールを前に、深々と溜め息をついた。 このことは本丸を引き継ぐことになった時から再三言われていたことだし、日々を過ごしていても私の頭から離れることはなか…

向日葵の三十日

向日葵の三十日 梅雨が明け、蝉の鳴き声が賑やかになる季節となった。懸念されていた暑さは湿気がなくなると意外にそうでもなく、扇風機を回していれば客間でも十分過ごせることが分かった。よく考えれば現代のコンクリートジャングルとは違いこれだけの木々…