「いてっ」
その声で振り返ると、指先を見つめて顔をしかめる未登録名前ちゃん。
ボクには彼女がなにをしているのかがすぐ分かった。
「ダメだよ、ささくれ引っ張っちゃ★」
とがめるように、ボクは未登録名前ちゃんの手を取った。親指の爪の付け根が、血で痛々しいことになっている。
「でもほっといたらほっといたで、なにかに引っかかって気になるんだよね」
「引っかかったとしても、血まではでないでしょ★はい、絆創膏」
「おおーさすがまぐろくん。せんきゅー」
彼女の悪い癖にすっかり慣れてしまったボクは、常に応急品を持ち歩くようになっていた。
「……ねえ★」
「なにー?」
絆創膏を貼った親指を見つめる未登録名前ちゃん。その手には、人差し指にもう一つ絆創膏が貼ってある。昨日あげたものだ。
未登録名前ちゃんは、絆創膏を持ち歩かない。
彼女の癖が、どういう意味を持っているのか、ボクはいつの間にか気づいていた。
「あんまり、傷、ひどくしちゃダメ……だよ★」
「わかってるよ」
手からボクに視線を移した未登録名前ちゃんは屈託無く笑った。