いつつめ

呆然と崩れた家とリンクを見ていたけど、わたしははっと気がついた。
地面に、血痕。

「リンク!怪我してる!」

わたしはリンクに駆け寄った。
見ると左前足に引っかき傷ができていて、血がでていた。
きっと壁に体当たりしたときだ。
ミドナが呆れたように、

「あーあ。リンク一人なら穴掘って外に出られたんだがなー」

「そんな……」

でも、確かにミドナの言うとおりだ。
わたしがいなければ、リンクはもっと安全に出られたはず。
わたしのために穴を作って、わたしのために怪我をした。

「ごめん、ごめんねリンク」

わたしはリンクの首に腕を回して、抱きしめた。ちょっと泣きそうだった。
リンクはわたしの頬に「大丈夫だよ」って言ってくれるみたいに優しくすりよった。

「あっちに井戸があるから、そこで傷を洗おう」

恐らく火傷もしてるだろうから、まずは冷やさなくちゃ。

井戸まで行って、水をくんでリンクの傷にそっとかける。
リンクは痛そうに目を閉じて、耐えてるみたいだった。
その表情を見ると、やっぱり罪悪感がこみ上げてきた。
最初村にきたときも、そうだった。
うろたえるばかりで何も出来なくて、迷惑しかかけていなくて。
自分がとても情けない。
わたしは両手で顔を覆って、泣き始めた。

「おいおい、なにも泣くことないだろ」

ミドナは少し驚いていた。

「だっ……て……」

けれど一度流れ出すと止まらない。
嗚咽を漏らしながら、わたしはその場にしゃがみこむ。

「くうん」

リンクが小さく鳴いて、心配そうにわたしを見ていた。
体をすりつけて、慰めようとしてるみたい。

「ありがとう、ごめんね」

わたしは顔をあげて、リンクの顔を手で包む。そして、

ちゅっ

その鼻先にキスした。

「っおい!」

「どしたのミドナ」

「そいつ……いや、なんでもない」

どうしてミドナが慌てるんだろう。
リンクも下向いちゃうし。
あれ、わたし変なことした?動物にキスってよくあることだと思うけど、この世界じゃ違うのかな。
ちょっとだけ恥ずかしくなったので、わたしは「包帯とってくる」と言い残して教会に走った。