きみを頼るはなし

 きみだけが頼りなんだ。

 言葉を発していなくても、マイケルが言っていることはわたしには分かる。それだけ一緒の時間を過ごしてきた仲だから。
 だけど、いくらマイケルの頼みでもきけないものはある。それが、マイケルが大事にしてる妹のことならなおさら。ローリーの誕生日プレゼントを、私づてに渡して欲しいなんて。
 ローリーとは結構親しくて、彼女のことは好きだし、マイケルがどれだけ妹を思っているかも知っている。とはいえ、一人の女の子のことを考えてるマイケルは、やっぱりいやだなぁとも思ってしまう。

「ごめんね。わたしじゃ、できないよ」

 そんなぐちゃぐちゃな気持ちを悟られたくなくて、マイケルのほうを見ないようにして答えた。落ちた視線がマイケルの大きな靴に向く。ぴくりとも動かない。呆れたかな。悲しんだかな。それとも、……きらいに、なったかな。
 いやな気持ちはシミになり、どんどん悪いほうに広がっていく。じわじわ、じわじわ、わたしの心がどす黒いなにかで覆われだすころ、マイケルの足がすっと動いた。

「わ、あ」

 視界がぜんぶ、青色で埋まる。体は優しく包み込まれて、大好きな匂いでいっぱいになった。
 固まっていると、わたしの背中に回っていた腕がゆっくりと持ち上がり、わたしの頭のてっぺんから髪を、なぞるようにふわふわ撫でた。

 きみが一番なのは変わらないから。

 手のひらから確かに伝わる言葉に、わたしはなんだか目の奥が熱くなって、マイケルの胸に押し付けた。
 涙と一緒に黒いものが出ていくと、わたしはすっかり、ローリーにどうやって渡そうか考え始めていた。

診断メーカーより:「お前だけが頼りなんだよ!」