この気持ちに名前を付ける

「……っぐ、」

 喉を掴まれ息が止まる。そのまま壁に押し付けられて足が浮いた。懇願するように腕を叩くも、相手――シェイプはほんの少し首を傾げるだけで、全く気に留めていないようだった。
 今日のシェイプの動きは執拗そのものだった。他のサバイバーには目もくれず、私がどれだけ逃げ隠れしても追うことをやめなかった。おかげで通電はできたものの、私だけはシェイプから逃げることができずに足跡や息、またはエンティティの手助けを得てか、とにかく私だけを狙い続けていたのだ。
 私の何が逆鱗に触れたのかは分からない。ただ、これからされるであろうメメントに、目を固く閉じて耐えるしかなかった。
 シェイプの息遣いが間近に聞こえる。私を凝視しているのが感じ取れる。早く、早く終わって。お願い。そんな祈りが永遠にも感じられるころ、やっと、腹部に衝撃と痛みが走った。喉の奥から熱いものが溢れる。口の端から流れ出ていくのを感じ、薄らぐ意識のはざまでシェイプが動いたのが分かった。
 シェイプは、マスクをずりあげると、露わになった口で私の頬に口付けた。

「、……!!」

 べろ、と溢れた血が舐めとられる。優しく、丁寧に、何度も舌が行き来する。それから手を離し、立てない私を支えるように手を腰に回した。マスクをまた元に戻すと、その奥で揺らぐ瞳が私を凝視している。まるで、こんなの、

「な、んで」

 やっと口にした言葉に、シェイプはただ目を細めて、ゆっくりと背中をさすっていた。

(きっとこれが、愛してるってことなんだ!)