それから

それから

ここは、とある国のとある町。
小さな港がひとつあるだけの、何の変哲もない町。

だけどここには、わたしの幸せがぎゅって詰まってる。

「ただいまー未登録名前」

「おかえり、リンク!」

リンクは、あー疲れた、とか言いながら、ソファーにどさっと座った。

「今日の夕飯は?」

「今日はね、オムライスとかぼちゃのスープだよ」

「やった、未登録名前のオムライス大好き!」

献立を聞いて顔を輝かせるなんて、リンクは時々子供っぽいなと心の中で苦笑する。
まあ、仕方がないことだと思うけどね。あんな旅をしていたら。

「かぼちゃの値段、少しオマケしてもらったんだ。それで――」

「え、もしかして通り入ってすぐの青果店?」

「そうだけど?」

リンクはなぜかむすっとした表情になって、ソファに座りなおした。

「どうしたの急に」

「……あそこの息子、未登録名前のこと可愛いって言ってた」

それは、もしや。

「未登録名前は俺のなのに」

わたしはこらえきれなくなって、噴出してしまった。

「なっなんで笑うんだよ!俺は真剣に」

「だって、それってやきもちでしょ?」

笑いすぎて出てきた涙をぬぐいながら指摘すると、リンクはうっと唸って、ばつが悪そうに視線をそらした。
本当のことを言われると目を合わせない。昔から、変わってないな。
わたしはリンクに近づいて、

「大丈夫。わたしはリンクしか見てないよ」

「……本当に?」

「本当に」

「なら、いいけどさ」

まだ少し不満そうにしている。
もう、いつまでも子供なんだから。
わたしはリンクの膝の上に座って、ぎゅっと抱きしめた。

「っ未登録名前!」

「今も昔も未来も。わたしにはリンクしかいないよ」

しばらく慌てていたリンクだけど、やがて、わたしの背中に優しい腕がまわった。

「……俺も、未登録名前だけだよ」

今しばらく、このあたたかな抱擁に身をゆだねていたいと思っていた。