どうやら始まらない - 2/3

やっぱり始まらない

 きっかり30分後、本当に呼び鈴が鳴ってインターフォンを覗いたら、ハロウィン用のゴーストフェイスが立って某レンタルショップのバッグに収まったDVDを見せていた。なんと律儀な、と思いながらドアを開けてやるとゴーストフェイスは「マジでポテチあるじゃん!真面目だなー」とか言うから案外私たちは似ているのかもしれない。
 そしてソファに並んでハロウィン上映会が始まる。私には、映画を見るときは集中したいから喋りたくないというこだわりがあるのだが、ゴーストフェイスもそうらしく、時々ポテチをつまむ音がする以外には終始無言だった。
 エンドロールが流れる頃、私はようやく息をつく。

「ハアァァァ……ハロウィン面白かった……」

「だろ?リメイク版しかなかったのがちょっと残念だけど」

「十分、十分。めちゃくちゃ面白いわこれ。マイケル人気も頷けるし、作りが丁寧だし、何より怖い」

「そうそう、作りが丁寧なのいいよな。細かいとこまでちゃんと気を配ってあって」

「そうなんだよねー、ぼやけた背景にチラッとマイケルが映る時とか、うわって思うもん。血の表現も容赦なくていいなぁ」

「その辺気になるなら、メイキングも見る?収録されてたよ」

「見る見る!舞台裏とか見るの好き」

「分かるわー、こんな風に作ってんのかって知った上で2回目見たくなるよな」

「そうそう分かる!いやぁズルイ作りしてるな~~……ってか、君とこんな趣味合うとは思わなかったわ。さっきから分かるしか言ってないわ」

「そういや俺もだったわ」

「ね。なんかいいな、こういうの」

「え」

「君さ……ああ名前面倒だからゴスフェでいい?」

「え、ああ、うん」

「ゴスフェさ、今度一緒に映画見に行こうよ。面白そうなのやってんだよね」

「い、いいけど……それって」

「よかったーペアチケットだと割引になんのよあの映画館!一緒に行ける人いなくて困ってたんだ!その点ゴスフェなら安心」

「……そうかい」

「え?どうしたの」

「なんでもねーよちくしょう!」

「早くメイキング再生しよー」

「分かってるっての!あーもー!」

 何故か涙声なゴスフェだったが、私はそれよりも映像が気になったので放置した。でも再生が始まると、ゴスフェは時々コメントしつつテンションを上げていったので、やっぱりゴスフェと映画を見るのは面白いな、と思った。