「なんだかすごいことが起こってるなあ」
わたしはテレビを見ながら独りごちた。
他人事のように言っているが、実際他人事なのでその程度の感想しか出てこない。
テレビのニュースで大々的に報じられるほど、その出来事が遠いものに感じるものだ。
でも、音速で走るハリネズミなんて、現実に存在するんだ。ちょっと見てみたいかも。
まあ無理だろうけどね。そのハリネズミさん、一つところに留まってないみたいだし。
わたしはテレビを消して、上着を羽織ってカバンを持つ。
今日も今日とて、平和で何もない日が始まるのであった。
玄関から出た瞬間、強烈な風に煽られた。
「あ――」
持っていたカバンが風にさらわれ、宙を舞う。
手を伸ばそうとしたら、目の前を何かが横切って。
「Hey! 悪ぃな、吹き飛ばしちまって」
青い、ハリネズミが。
わたしのカバンを差し出していた。
(何もないはずだった日が、何かある日に変わり始めた)
あの時はただただビックリしたよ。
今も時々言うけれど、彼は決まってこういうの。
「オレは、一目見たときから気になってたぜ」