ひとつめ

――どういうことだ?トワイライトにいて魂化しないなんて……。

――ワウ……。

――まあいい。とりあえず起こしてやるか。

誰が、誰を起こすって?
はっきりしない頭で考えたとき、大きく体が揺さぶられた。

「おい起きろよ」

「うーん」

頭が痛い……わたし、なにしてたんだっけ……?
とにかく、状況を把握しなきゃ。

「ってえええええ!?」

おっ狼!狼がいるうううう!なんでカカリコ村に狼が!
しかも、背中になにか乗ってる!飼い主、飼い主なの!?
わたしは大きく後ずさり、その場でしりもちをついてしまった。
しかし狼はわたしに近づいてきて――

「いやあああ!食べないでええ!わたしきっとおいしくないよおお!」

「誰が食うかよ」

「へっ」

背中に乗ってる、人……でいいのかな。人型だけど、子供より小さくて全身が黒い。その人が答えた。
呼応するように、狼もわたしの前まで来るとお座りの状態になって、しっぽを振っている。
た、食べる気はない、のかな……。
恐る恐る手を伸ばし、頭を撫でてみる。
噛み付く気配は全くなく、むしろ気持ちよさそうに目を閉じている。

「か、かわいい」

思わず口に出していた。
すると背中の人が呆れたように、

「さっきまで怖がってたくせに、変なヤツだな」

「よく言われる」

「自覚あんのかよ……」

まあともかく。この人たちが危害を加えることはないみたいだから、ひとまず安心していいのかな。
それより、

「あの、あなたたちはどうしてここに?」

「どうして、って……まあ旅しててここまで来たわけだが。それよりもあんたに聞きたいことがある」

「なに?答えられることなら」

「なんで『魂』になってないんだ?」

え?どういうことそれ。
魂って、あの魂?輪廻転生とかっていうアレ?
そんなオカルトめいたことが……いやこの世界ではあるんだった。
いやでも人間が魂になるところを見たことは、この世界でもなかった。
この人たちはどういう意図でそういう質問を……。

「そうだ、レナード牧師ならわかるかも」

「誰だソイツ」

「この村をまとめてる人だよ。ついてきて!」

わたしは立ち上がって、レナードさんの教会へ案内しようとした。
背中の人はなぜかため息をついてから、後に続いた。

「そういえば、まだ名乗ってなかったね。わたし未登録名前」

「ワタシはミドナ。こいつはリンクだ」

「ガウ!」

名前を呼ばれて返事するなんて、賢いんだなあ。

「二人はどういう関係?」

冷静になると、飼い主と飼い狼という関係は、なんだかおかしく思えた。

「ただ利害が一致してるだけさ」

「ふうん」
なにか事情があるみたい。
とりあえず、わたしはリンクによろしくね、と鼻先を撫でてやる。くすぐったそうにしていた。
かわいいなあ。犬みたい。
するとミドナがリンクに向かって、

「オマエ、女相手だから照れてるのか?ククッ」

「ガウウッ!」

「狼でも照れるってことあるの?」

「いやコイツは……」

「?」

「まあ、あるんだろうな。ククッ」

なんか引っかかるけど、まあいいか。

そうこうしているうちに教会にたどり着いたので、わたしはドアを開けた。
そして、絶句した。