流行りのものは嫌いだ。流行り廃りで一喜一憂するなどは、確固たる自分を持たない奴らでしかありえないからだ。そういう奴らに限って古いものを蔑ろにする。過去の出来事から学ぶことをしない、故に人間は愚かな存在なのだ。
「それじゃ困るのよ」
「……何が困るというのだ」
「それじゃどこにも行けないわ」
「私がか?そんな必要はない。私には本があればいい。どこかに行く必要など」
「違う、違う」
彼女は私の鼻先に指を突きつけ、
「あのお店が流行ってるよ、こんな服が流行ってるよ、最近この音楽が……とか、そんな話をあなたとしたいのよ。そんなんじゃ、私がおばあさんになったら暇で暇でしょうがないわ」
なんて、いとも容易く、『未来』の話をするのだ。