すずらん中学校に通う佐々木まぐろくんなる男子は、まっことよく分からない性格をしている。
まず、何を考えているのか分からない。というのは、彼は前髪で目を覆っているから表情が読みにくいってのと、常におどけたような、語尾に「★」がつきそうな喋り方をするものだから、発言の真意が掴めない。
「なぁ~に難しい顔、してるんだい★」
その渦中の人物に、ひょい、と顔を覗き込まれる。いや、これは覗いていると言えるのか?
とにかく。まぐろくんが私の席にやってきた。さっきからじっと見てたからだと思うが。
「ちょっと思考の海に呑まれているんだよ。ちなみに灯台は見えない」
「座礁しちゃう?」
「君のおかげでね」
「それはそれは、そーりー★」
絶対思ってないだろその言い方。
と思ったが、まぐろくんは私の席から離れていく。
去り際に捨て台詞を残して。
「前々から思ってたけど、未登録名前ちゃんって、たまによく分からない、よね★」
それはこちらの台詞である。
ため息をついたとき、私は気がついた。
先ほどの言葉に彼の感情があらわれていることに。