「ここは……気配はするが、姿が見えないな」
ある家に入ったとき、ミドナが辺りを見回しながら言った。
リンクもしきりに視線を動かしている。
わたしはもとより姿はおろか気配も感じないので、どうしようもない。
それでもなんとかしてあげたいなと思って、あちこち見て回る。
すると暖炉があるのに気がついた。
「ねえ、暖炉に火をつけていぶりだせないかな」
「そいつはいいな」
リンクも頷いたので、さっそく暖炉に火をつけるわたし。
しかし、
「きゃあ!?」
「なんだ!」
爆発に似た音とともに、暖炉が火を噴いて、あっという間に家が燃え上がった。
一体どうして、なんて考えている暇はなかった。
わたしは急いで家から出ようと玄関に向かったが、火の手はすぐに扉をなめる。
どうしよう、これじゃ出られない!
他に出口は、と悠長に探している暇もない。家の梁が、ミシミシと音を立て始めた。
「お先に失礼するぜ。お前らも早く出て来いよな」
「ミドナ!?」
ミドナはそういい残すと、しゅるんと影になって家の隙間から出て行ってしまった。
なんて薄情な。リンクを助けたって言ってたけど、きっとこんな感じだったに違いない。
なんて感心してる場合じゃない。天井はいまにも崩れそうだ!
「ガウ!」
戸惑っていると、リンクがいきなり走り出した。どうしたの、という間もなく、もろくなっていた壁に体当たりして、穴を開けた。
そしてこちらを振り返りひと咆え、ついてこいと言ってるみたいだった。
わたしは考えるまでもなく、その穴に飛び込んだ。
外に出た瞬間に、ガラガラと家が音を立てて崩れた。
――ここ、空き家だったからいいけど。誰もいなくてほんとうによかった。
「間一髪だったなー」
ミドナがククッと笑って浮いている。
「ひどいよ!先に行っちゃうなんて」
「あの状況でどうやってお前らを連れ出せたっていうんだよ」
まあ、確かにそうだけど。
ミドナには不思議な力があるからいいけど、わたしとリンクはそうはいかない。
不満はいっぱいあるけど、まあ飲み込んでおこう。
燃え尽きた家の残骸から、光の雫が現れる。やっぱりきれいだなあ。
リンクがそれに触れると、器に光が収まった。