「うわああー終わったああぁぁ……」
力なく叫ぶなり、ノートパソコンを閉じた彼女は机の上に倒れこむ。
「おいおい、頑張りすぎだって。そんなに期日ギリギリな作業だったのか?」
数日前から机にかじりついて、今だって終わったのは日付が変わる直前だ。そんなになるまで手をつけなかったのか、それとも急に言われたことなのか。
どっちにしろ、ここしばらくほっとかれてたオレとしちゃあ面白くないし、くたくたになった彼女を見てるのも気分がよくない。
すると彼女は机に伏したまま、顔だけこちらに向けた。
「んー……期日はまあ、来週なんだけど」
「なんだ。まだ時間あったじゃないか」
それならこんなに急ぐことなかったじゃないか。そう思ったら顔に出ていたらしく、クスクスと笑われた。気恥ずかしさにそっぽを向いて口を尖らせてしまう。
「だってさ、明日だよ」
「なにがだよ」
「ソニックのバースデーだよ」
「え、……ああ!」
言われてカレンダーを見ると、確かに今日は6月22日だ。すっかり忘れてた……というか、彼女が忙しそうにしてたもんだから気を取られてたというか。
「楽しいことの前に面倒なことは全部終わらせておきたくてさ。あと、明日はみーんな集まるからそのつもりでね」
「……聞いてないぜ」
「うん、言ってない」
彼女を見れば、イタズラが成功した子供みたいな顔をしてる。
嬉しいような悔しいような、でもやっぱり楽しくなって、オレは彼女をぎゅっと抱きしめる。
「Thank you」
「こちらこそ、いつもありがとう。あ……日付変わった」
ハッピーバースデー。
今年もキミと過ごせる日を祝って。