アクション
「……何故、ここにいる」
そう言ったのは、目玉ではなく。
私の前でしかめっ面をしているシャドウだった。
「それこそ私が聞きたいんだけど……」
「帰れ。即刻帰れ」
「帰れるもんならとっくに帰ってるわ!」
こいつ状況見えてないのか!どっからどー見ても捕まってるでしょうに!
そんなやり取りをしていると、目玉……シャドウがブラックドゥームって言ったからそういう名前なんだろう、そいつがまたくつくつ笑った。
「シャドウ……余程気にかかるらしいな」
気にかかる?何が?そう尋ねようとしたが、シャドウがいきなりブラックドゥームに向かって蹴りを入れたので呑み込んだ。なんという速さ。影というか残像というか、そんなようなものが一瞬チラついただけで全く見えなかった。
その時私は遺跡で見た光景を思い出した。軍も、黒い奴らも、等しく破壊し尽くされた光景。そうか、あれはシャドウが。
「気にかかる?何の話だ。僕はこいつのことなど知らん」
初対面じゃないっつーのに……というツッコミを心に押し留め、蹴られたブラックドゥームを見る。と、そこには影も形もない。
「まあいい」
声は、すぐ後ろで。
「っ!?」
「知らぬというなら、この女を今すぐ殺すだけだ」
瞬間、掴んでいた格子がぐにゃりと変形して私の腕に絡みついた。慌てて振りほどこうにも全くビクともしない……っていうか、やっぱこの檻生き物そのものかー!?
「シャドウ!!」
伸びた触手が私の首に絡む寸前、誰かの叫び声がした。呼ばれたシャドウも、ブラックドゥームでさえも、声の主を見やった。つられて私もそちらを見れば、見知った青いハリネズミ、ソニックと……何故かGUNのエンブレム入りの機械兵器が並んでいるではないか。
ソニックは檻に入った私を見つけると一瞬驚いた顔をして、
「……シャドウ!!何故そいつらの味方をする!」
おもいっきり勘違いした。
「い、いやっこれにはワケがあって……っていうかシャドウじゃなくてあのね!」
一生懸命訂正するなか、シャドウはつかつかとソニックに歩み寄った。
「何故?……ソニック、僕は貴様が気に食わないだけだ!」
ンなバカな!
頭を抱えたくなったが腕はまだ捕らわれたままなので、とりあえず地団駄踏んでソニックにツッコミを期待したのだが、
「そいつは分かりやすくていいねえ。……じゃあやるか!!」
「私の立場は!?」
叫びも虚しく、二人は体を丸めてその場で交戦を始める。GUNの機体もそれにならってシャドウを追い始めたのだった。本当に、私の立場とは一体……。
呆然としていたせいで、私は、背後の目玉が楽しげに歪むのに、気づかなかった。