ドジな子

がちゃん。

派手な音を立てて、壷が割れてしまった。

「未登録名前はドジだなー」

「う、うるさいな」

あわてて屈み、破片を拾おうとすると、リンクに制されてしまった。
危ないから、とわたしをのけてさっさと破片を拾い集めてしまう。
もう、子供みたいな扱いして!

「昔からそうだったよな。よく転んだりして」

「い、今はもうちょっと落ち着いてるって」

「ふーん?そう?」

「信じてないでしょ……」

「だって現に今」

「ううう」

そうなのだ。
わたしは昔っから、そそっかしい。
もうクセみたいなもので、一向に治る気配がない。
何か失敗するたびにリンクに手助けされて、それはそれは恥ずかしかった。
大人になったら治ると思ってたんだけどな……。

「もっとオトナーな人になりたい」

ぽつりと呟く。

「どんな?」

「ゼルダ姫みたいな上品な人とか。あ、マロンみたいなしっかり者でもいいな。そうしたら……」

言いかけて、はっと口をつぐむ。

「なに?言いかけてやめるなんて気になる」

「え、えっと」

そうしたら、リンクとつりあうのに。
なんて口が裂けても言えないよ。
リンクは器用だから、わたしみたいな女の子、好きになってくれない……と思うから。
家事もろくにこなせないようじゃ、リンクだって呆れちゃうよ。

「いや、その。ドジがなおらないと、お嫁にいけないじゃない。そそっかしいお嫁さんなんて欲しがる人いないし」

嘘は、言ってない。
本当のことも言ってないけど。
すると、リンクは破片を拾う手を止めた。

「僕がもらうよ」

「え」

今、今なんて?
わたしは耳を疑った。けど、リンクは立ち上がって、まっすぐわたしを見て。

「未登録名前がそそっかしくてもドジでも。僕が、お嫁さんにする」

卒倒しそうになった。

「というより、他の誰にもあげないかな。あげる気ないし」

「そ、そ、それって」

「僕は、未登録名前のことが好きだよ」

未登録名前は?と聞かれて、わたしは、少しあたふたして、でも、すごく嬉しくて。
顔を真っ赤にしながら、頷いたのだった。