ハイウェイ・ダイブ

ハイウェイ
ダイブ

 まるで映画か漫画のようだ。いやきっとそうに違いない。そうでなければ現実にこんなことが起こるわけがない。
 崩れ落ちたハイウェイの鉄骨にぶら下がるような事態が!
 そもそも、あの空から降ってきた黒い奴らはなんなんだ。いきなりウェストポリス中を破壊してまわって、おかげで出先だった私は避難が遅れてごらんの有様。車も大破、絶賛炎上中だ。……そういえばこの場合、保険降りるよね?私のせいじゃないし?降りなきゃあの黒い奴らに請求するぞ?ってそんなことはどうでもいい。

「……手が痺れてきた」

 ああ私、こんなところで終わっちゃうのか。引っ越してきたばかりで、楽しい一人暮らしの始まり始まりだったはずなのに、間抜けにも逃げ遅れて誰にも知られず地面と一体化……想像しただけで気持ち悪っ!
 ああもう誰か!誰かいないの!?誰でもいいから助け――

「え」

 本当に、突然だった。
 私の体は宙に浮き、誰かと視線がかち合った。
 黒い。でも、あの黒い奴らとは少し違う。私より少し背の低い、黒いハリネズミが、私の腕を片手で引き上げていたのだ。

「え、あ、ありがぶっふぇ!!!!」

 そしてそのままハイウェイに顔面ダイブ。
 クラクラする頭を持ち上げると、もうそこに黒いハリネズミの姿はなかった。
 痛いとか助かったとか、ここからどうやって降りようとか、色々考えることはあるけど、とりあえず今一番言いたいのは。

「あのハリネズミ、なんとしても探し出して……絶対に文句言ってやる!!!!」

 鼻血を抑えながら絶叫した。