ラン
「本日のニュースです。昨夜、全世界指名手配中のドクター・エッグマンが建設したサーカスパークを取り壊したヒーロー、マイルス・パウアー氏の……」
朝。ウェストポリスが復旧するまで政府から支給されたアパートでトーストをかじっていると、テレビからそんなニュースが流れ込んできた。
ドクター・エッグマンといえば世界各地で悪さしている大悪党だけど、今回はあの黒いヤツらと関係あるのだろうか。映像ではいかにも関係なさそうな遊園地みたいな場所が映っているけど。それにしてもすごいなぁ、あのキツネ君。まだ8歳だってのに自分で飛行機飛ばしてたりエッグマンと戦ったりだとか。元いた国でも話は聞いてたけど実際こうして見ると凄すぎてまるで現実味がないや。現実味といえば、そもそもウェストポリスが壊滅したのだってまるで夢の中みたいに信じられ――ああいや、それはないな。うん。だって痛かったしっていうか、あのハリネズミから受けた仕打ちをはらすまでは夢であってたまるか!!だってあの後全然鼻血止まらなくて、病院行ったら軟骨骨折しかけてたって言われたんだからね!病院代くらい請求したってバチはあたらんはずだ。
……とはいっても、名前も住んでる場所も分からない相手を、どうやって探せばいいのやら仕事はしばらく休みだからちょこちょこ街には出ているものの、あっちこっちが封鎖されてたり店もやってないしで全然動き回れな――
「――こちらが遺跡発見時の映像です」
ぼうっと見ていた映像に。
私はある影を見つけた。
黒い影。
あれは、ゼッタイ、間違いない。
「あのときのハリネズミ……!!」
映し出されていたのは、最近発見された遺跡に黒の集団が襲撃している様子。GUNと交戦中とのアナウンスがされている。
私がやることは一つしかない。小さなサイフと携帯だけをひっつかんで上着に押し込み、車――はなかったんだった。電車……も動いてない。ああもうこーなったら自転車でいいわ!幸い行けない距離じゃないし!
とにかく、待ってろハリネズミーー!!