ホワイト・メモリー

ホワイト
メモリー

 かくして戦いの火蓋は切って落とされたわけで。私の目の前にあるでかいホールで、シャドウ、ソニック、そしてGUNが三つ巴となって激しい戦闘を繰り広げている。正直シャドウとソニックはまるで見えないが、振動や衝撃音でなんとなく位置を把握できる。……できたところで意味はないけど。
 完全に私アウトオブ蚊帳だよなぁ……もう帰っていいんじゃないか?ここまできたらシャドウに文句だとか病院代とかバカバカしくなってきたぞ?などとボケーっとそれらを眺めていたら、

ずぶ

「!?」

 足元が、埋まった。悲鳴を上げる暇もなく檻がどんどん狭くなる。
 飲み込まれる。
 気づいたときにはもう遅い。私は檻……いや、ブラックドゥームの一部となった。

 ――未登録名前!!

 最後に、誰かが私を呼ぶ声を、聞いた気がした。

 ――女の子がいる。金髪で、青い服を着た、優しそうな女の子。その子は、宇宙船のような場所から窓の外を眺めている。

「きれいな星」

 女の子が涼やかな声で言った。視線の先には、青くて丸い大きな惑星が見える。

「いつか、あそこへ行って、私の好きなひとたちと暮らすのが夢なのよ」

 夢。女の子の言う夢は、きっともう叶うことはないのだろう。

「私の好きなひとたち。みんな優しいから、私だけじゃなく、世界を守ろうと頑張ってる。……自分の世界は、顧みずに」

 女の子の視線が動く。真っ直ぐに前を向いて、そして柔らかく微笑んだ。
 ……誰に?そこに誰か、いる?

「あなたは彼の世界のひとつ。あなたは知らないかもしれない、でも、確かにそうなっているの。だから、どうか手を差し出して。あなたが求めるもののためにも」

 そう言って、女の子は手を差し伸べた。

「きっかけは、ちょっと変わってるかもしれないけれど。お話の始まりがみんなドラマチックだとは限らないのよね」

 それは確かにそう思う、と言いかけて、はたと気付いた。
 「私」は今、どこにいる。何をしたい。何を望んでる。
 私は、何のために、ここに来た?

「……ありがと。あやうく見失うとこだった」

 私は女の子の手を、ぎゅっと握った。暖かくて柔らかで、安心する心地よさに目を閉じる。

「私、行くね。私がしたいことのために」

 瞬間、まるで突風が吹いたように身体が引っ張られ、荒れ狂う嵐の中を舞うような感覚を覚えた。あまりの衝撃で目を開けられないが、手にはまだ暖かな感触がある。決して離してはいけない、そんな風に思って強く握ると、そのまま強く腕を引かれる。そして、辺りに閃光が満ちた。